外国人YouTuberの在留資格問題は、決して特殊な話ではない
日本に長年暮らしてきたロシア人YouTuberが、在留資格「経営・管理」の不許可を受け、YouTube活動を無期限休止すると報じられました。
報道によれば、本人は日本でSNSマーケティング会社を設立し、経営管理ビザの取得を目指していたものの、不許可となり、30日間の出国準備期間が指定されたとのことです。
この件について、個別の不許可理由は公表資料だけではわかりません。
したがって、「なぜ不許可になったのか」を断定することはできません。
ただ、行政書士として見ると、この報道には、いまの外国人実務で非常に重要な論点がいくつも含まれています。
それは、外国人インフルエンサーやYouTuberが日本で活動する場合、在留資格の選び方がとても難しいということです。
「会社を作ったから経営管理ビザ」では足りない

まず押さえておきたいのは、在留資格「経営・管理」は、単に会社を設立しただけで認められるものではないという点です。
出入国在留管理庁は、令和7年10月16日施行の改正として、経営・管理の基準を大きく見直しています。
主な内容として、会社等における1人以上の常勤職員の雇用、3,000万円以上の資本金等、日本語能力、経営管理または事業に必要な分野の学位・職歴などが示されています。
さらに、事業計画についても、具体性、合理性、実現可能性が問われます。
入管庁のガイドラインでは、事業計画書について、経営に関する専門的知識を有する者による確認を義務付ける内容も示されています。
ここが実務上の大きなポイントです。
経営管理ビザは、「自分で仕事をするためのビザ」ではありません。あくまで、日本で事業を経営し、または管理する活動のための在留資格です。
YouTuber本人が動画に出演し、撮影し、編集し、発信し、その収益を得る。これが中心である場合、入管審査では「経営者としての活動」なのか、「本人の芸能・制作・発信活動」なのかが問題になります。
もちろん、YouTube事業だから経営管理が絶対に無理、という意味ではありません。法人として広告運用、SNSマーケティング、制作受託、マネジメント、人材雇用、継続的な売上計画があり、本人が経営者として事業全体を管理する構造であれば、検討の余地はあります。
しかし、実態として「本人の個人活動を会社化しただけ」と見られると、経営管理としては弱くなります。
YouTuber活動は、在留資格上どこに位置づけるべきか

今回の報道では、本人が次に「興行ビザ」を検討しているとされています。報道ベースの情報であり、実際の申請内容はわかりませんが、方向性としては理解できます。
出入国在留管理庁は、在留資格「興行」について、演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動、またはその他の芸能活動を対象としています。
また、興行の基準3号では、商品または事業の宣伝に係る活動、放送番組や映画の製作に係る活動なども対象として示されています。
ここから考えると、モデル、タレント、インフルエンサーとして、企業案件、イベント出演、番組出演、広告宣伝、映像制作に関わる活動が中心であれば、「興行」で整理できる可能性はあります。
ただし、YouTube活動すべてが当然に興行になるわけではありません。
たとえば、自分のチャンネルで日常動画を投稿し、広告収益を得る活動は、従来型の興行、芸能活動、報道、制作、経営のどれに当てはめるのかが簡単ではありません。入管法の在留資格は、現代のSNS職業を前提に細かく設計されているわけではないため、実務上どう説明するかが非常に重要になります。
「収益化しなければ大丈夫」とも言い切れない

報道では、YouTube活動を休止する理由として、在留資格のない状態で動画投稿を続けることが、許可なく仕事をしていると見なされる可能性がある、という判断が紹介されています。
この判断は、実務感覚としてかなり慎重ですが、理解できます。
入管庁の外国人向け資料でも、自分の在留資格の範囲外の仕事をして収入または報酬を得ようとする場合には、資格外活動許可が必要であると説明されています。
問題は、SNS活動の場合、「投稿すること」自体と「収益を得ること」が必ずしも同じタイミングではない点です。
過去に撮影した動画が後から収益を生むこともあります。広告収益を止めていても、企業案件への誘導、ファンコミュニティ、将来の仕事につながる宣伝効果がある場合もあります。
もちろん、非収益の近況報告まで直ちに就労活動と評価されるかは、個別事情によります。
しかし、在留資格が不安定な局面では、本人や代理人が慎重に判断するのは自然です。
30日間の出国準備期間は、かなり厳しい局面

報道では、正式に不許可となり、30日間の出国準備期間が指定されたとされています。
ここも誤解されやすいところです。
不許可になった後でも、理論上は再申請を検討する余地があります。しかし、30日という期間は非常に短く、その間に新しい在留資格の立証資料を整え、申請し、結果を得るのは簡単ではありません。
特に、経営管理から興行へ切り替える場合、申請の組み立てはかなり変わります。会社の事業計画を中心に説明するのか、出演契約、報酬、活動内容、受入機関、イベントや制作案件を中心に説明するのか。立証の軸が違います。
「とりあえず別のビザで出せばよい」という話ではありません。
学歴がないから就職できない、という説明にも注意が必要

報道では、本人が「学歴がないから会社に勤めることはできない」と説明したとされています。
ここは、少し丁寧に整理する必要があります。
日本の就労系在留資格では、たしかに学歴や職歴が重要になる場面があります。たとえば「技術・人文知識・国際業務」では、従事する業務と関連する学歴や一定の実務経験が問題になります。
ただ、「学歴がない=日本で一切働けない」とまでは言えません。在留資格の種類によっては、職歴、技能、活動内容、契約形態、受入機関の体制などで判断されるものもあります。
今回のように、長年日本で活動してきたインフルエンサーの場合、学歴だけではなく、活動実績、契約関係、収益構造、受入先、活動の公益性・継続性などをどう制度に当てはめるかが重要になります。
この件から見える実務上の教訓

この報道で一番伝えたいのは、「人気がある」「長く日本にいる」「日本が好き」という事情だけでは、在留資格は安定しないということです。
これは冷たい話に聞こえるかもしれません。
ただ、入管審査は、感情や知名度ではなく、在留資格該当性、基準適合性、活動の継続性、収入・納税・社会保険、提出資料の整合性などで判断されます。
そして、SNSやYouTubeのような新しい働き方は、制度の枠組みとズレが生じやすい分野です。
外国人本人にとっては、「自分は真面目に活動しているだけ」でも、入管実務では「その活動はどの在留資格に該当するのか」「収益はどこから発生しているのか」「誰との契約に基づく活動なのか」「日本にいなければならない活動なのか」が問われます。
ここを曖昧にしたまま会社設立やクラウドファンディングを進めてしまうと、後から取り返しがつかないリスクが出ます。
行政書士としての見方

今回の件について、個別案件の適否を外部から評価することはできません。
不許可理由、提出資料、過去の在留状況、納税状況、収益構造、会社の実体、申請時期、審査中の補足対応などがわからないからです。
ただ、一般論としては、外国人インフルエンサーの在留資格設計では、最初に次の点を整理すべきです。
本人が行う活動は、経営なのか、芸能活動なのか、制作活動なのか、広告宣伝活動なのか。
収益は、広告収益なのか、企業案件なのか、出演料なのか、業務委託報酬なのか。
契約の相手方は、日本法人なのか、海外法人なのか、プラットフォームなのか。
日本に在留して行う必要性を、どのように説明するのか。
会社を作る場合、本人の個人活動と法人事業をどう分けるのか。
この整理をせずに、「とにかく会社を作る」「とにかく興行で出す」という進め方をすると、在留資格の選択そのものが不安定になります。
在留資格申請は、制度に自分を無理に合わせる作業ではありません。実際の活動を正確に分解し、その活動に最も近い在留資格を探す作業です。ここを間違えると、どれだけ日本への思いが強くても、審査上は届かないことがあります。
- 記事末尾の整理
【結論】
外国人YouTuberやインフルエンサーの在留資格は、経営管理、興行、技術・人文知識・国際業務などのどれかに単純に当てはめられるものではありません。特に経営管理は、会社設立や資本金だけでなく、事業の実体、経営者としての活動、事業計画の合理性、雇用・資金・経歴などが問われます。個人の発信活動を法人化しただけでは、審査上弱くなる可能性があります。
【根拠】
在留資格「経営・管理」については、令和7年10月16日施行の改正により、常勤職員の雇用、3,000万円以上の資本金等、日本語能力、経歴要件などが示されています。
事業計画についても、具体性、合理性、実現可能性の確認が求められています。
在留資格「興行」は、演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動やその他の芸能活動を対象とし、商品・事業の宣伝活動や放送番組・映画制作に係る活動も一定の場合に対象となります。
在留資格の範囲外で収入・報酬を得る活動を行う場合には、資格外活動許可が必要とされています。
【注意点・例外】
今回の個別案件について、不許可理由は公表資料だけでは確認できません。したがって、本人の申請がなぜ認められなかったかは断定できません。
YouTubeやSNS活動についても、収益化の有無、企業案件の有無、契約相手、活動場所、投稿内容、法人事業との関係によって判断が変わります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
また、報道記事では「経理管理ビザ」と表記されている箇所がありますが、制度上の正式名称は「経営・管理」です。
【出典】
一次情報
出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
出入国在留管理庁「在留資格『興行』」
出入国在留管理庁「在留資格『興行』(基準3号)」
出入国在留管理庁監修資料「在留資格の範囲外の仕事と資格外活動許可」に関する説明資料
参考情報
ユーチュラ「15年日本で暮らすロシア人YouTuber・あしや、経営管理ビザの不許可でYouTube活動を無期限休止」2026年5月5日
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