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TOP > コラム > 茨城県で始まった不法就労通報報奨金制度|企業が確認すべき在留資格管理

茨城県で始まった不法就労通報報奨金制度|企業が確認すべき在留資格管理

2026.05.13
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茨城県で「不法就労通報報奨金制度」が始まった

茨城県で、不法就労を助長している疑いのある事業者等に関する情報を受け付け、一定の場合に報奨金を支払う制度が始まりました。

茨城県の公式ページでは、この制度について「不法就労を助長している疑いのある事業者等に関する有益な情報」を受け付けるものと説明されています。

通報対象は、外国人本人ではなく、不法就労者を雇用する事業者や、不法就労をあっせんするブローカーなど、不法就労助長罪に違反している疑いのある事業者等に限定されています。

報奨金は、通報の結果、事業者等の不法就労助長罪での逮捕につながったものなど、特に有益な情報に対して原則1万円が支払われる仕組みです。ただし、不法就労助長罪以外の罪状で摘発された場合や、摘発されても逮捕に至らなかった場合は対象外とされています。

毎日新聞の報道によれば、茨城県は2026年5月11日にこの制度を開始し、自治体独自の導入としては全国初とされています。

報道では、県弁護士会や市民団体から「外国人差別につながる」とする反対意見が出ていることも紹介されています。報道内容は参考情報として扱う必要がありますが、制度が社会的な議論を呼んでいることは間違いありません。

不法就労対策そのものは必要である

まず確認しておきたいのは、不法就労対策そのものは必要だということです。

出入国在留管理庁が公表した令和7年の入管法違反事件に関する資料では、退去強制手続等を執った外国人のうち、不法就労事実が認められた者は1万3,435人とされています。

就労場所別では茨城県が3,518人で最多とされています。

また、茨城県自身も、令和6年の県内の外国人不法就労者数が3,452人で全国最多であり、そのうち農業分野が2,596人、全体の75%を占めていたと説明しています。そのうえで、外国人適正雇用推進室を設置し、警察や東京出入国在留管理局等と連携して、農家をはじめとする事業者への意識啓発や巡回訪問、指導に取り組むとしています。

この数字を見ると、茨城県が問題意識を持つこと自体は理解できます。

特に農業のように季節変動が大きく、人手不足が深刻な分野では、現場の切実さと制度の限界がぶつかりやすい。行政書士として相談を受けていても、「人が足りない」「すぐ働ける人を紹介された」「在留カードは見たが、どこまで確認すればよいかわからない」という声は珍しくありません。

ただ、ここで大事なのは、不法就労を減らすことと、外国人に対する疑いの目を社会に広げることは同じではない、という点です。

企業が本当に注意すべきは「不法就労助長罪」

外国人雇用の現場で最も注意すべきなのは、不法就労助長罪です。

厚生労働省は、不法就労外国人を雇用した事業主や、不法就労となる外国人をあっせんした者など、不法就労を助長した者は、入管法第73条の2により処罰されると説明しています。

不法就労というと、どうしても「働いた外国人本人」の問題として見られがちです。しかし実務では、雇った側、紹介した側、実態を知りながら働かせた側の責任が非常に重く見られます。

たとえば、次のようなケースは危険です。

在留資格が「留学」なのに、資格外活動許可の確認をしないまま長時間働かせる。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格なのに、実態は工場や現場での単純作業に従事させる。
在留期限が切れていることに気づかず、そのまま勤務を続けさせる。
紹介者から「大丈夫です」と言われただけで、在留カードや就労可能性を確認しない。

このような場合、会社側が「知らなかった」と言っても、それだけで安全とは限りません。外国人を雇用する企業には、在留カード、在留資格、在留期間、資格外活動許可の有無、指定書の内容などを確認する実務上の責任があります。

通報制度の難しさは「見た目では判断できない」こと

今回の制度で最も慎重に考えるべきなのは、通報制度が社会に与える空気です。

茨城県のガイドラインでは、差別や誹謗中傷を目的とした通報、虚偽の通報、悪意ある通報は受け付けないとされています。また、外国人労働者に関する通報は受け付けず、見た目や国籍など、単に労働者個人の属性のみを理由とする通報は固く断ると明記されています。

この点は重要です。県としても、外国人個人を狙い撃ちする制度ではないと線を引いています。

ただし、実務上の問題は残ります。在留資格の有無や就労可能性は、外見、言語、国籍、職場での雰囲気だけでは判断できません。

永住者、日本人の配偶者等、定住者、永住者の配偶者等であれば、原則として就労制限はありません。帰化した日本国籍者であれば、そもそも在留資格の問題はありません。

一方で、留学生、家族滞在、特定活動、技能実習、特定技能、技人国などは、それぞれ就労の可否や範囲が異なります。行政書士でも、在留カードだけでなく指定書、雇用契約、実際の業務内容まで見なければ判断できないことがあります。

通報者がそこまで正確に判断できるのか。ここに制度設計上の難しさがあります。

弁護士会・人権団体が懸念する理由

関東弁護士会連合会は、この制度について、不法就労の本質的解決にならないこと、県内事業者や県民に不利益を生じさせること、外国にルーツを持つ人々への差別や偏見を助長するおそれがあることを理由に反対する声明を出しています。

アムネスティ・インターナショナル日本も、報奨金という経済的インセンティブによって市民の通報行為を積極的に誘導する構造があり、非正規就労の判断には高度な法的専門性が必要であるため、外見、言語、国籍等の属性に依拠した通報を誘発する可能性があると懸念を表明しています。

この指摘は、入管実務を扱う立場から見ても軽く扱えません。

もちろん、不法就労を放置してよいわけではありません。

違法な雇用は、適正に外国人を雇っている企業との公平性を壊します。外国人本人が低賃金、長時間労働、暴力的な管理、賃金未払いなどの被害に遭うこともあります。

しかし、制度の運用次第では、「外国人が働いている=怪しい」という短絡的な見方を広げかねません。

これは、適法に働く外国人にとっても、外国人を適正に雇用する企業にとっても望ましくありません。

企業が今すぐ整えるべき確認体制

今回の制度をきっかけに、企業がすべきことは「通報を恐れること」ではありません。雇用管理を整えることです。

最低限、外国人を雇用する企業は、採用時と更新時に次の確認を行うべきです。

在留カードの表裏を確認し、在留資格、在留期間、就労制限の有無を記録する。
資格外活動許可が必要な人については、許可の有無と時間制限を確認する。
指定書がある在留資格では、指定書の内容を必ず確認する。
実際の業務内容が在留資格で認められる活動と合っているか確認する。
在留期限管理を行い、期限前に更新状況を確認する。
紹介会社やブローカー任せにせず、自社でも確認記録を残す。

特に農業、建設、製造、外食、宿泊など、人手不足が強い分野では、「紹介されたから大丈夫」「前の会社でも働いていたから大丈夫」という感覚が残りがちです。しかし、在留資格は本人の身分や活動内容に紐づく制度です。前職で働けたから、今の職場でも当然に働けるとは限りません。

行政書士として感じること

今回の制度は、不法就労対策として一定の狙いは理解できます。

ただ、行政書士として現場を見ていると、不法就労は単に「悪い外国人がいる」「悪い会社がある」という単純な話ではないことも感じます。

人手不足、制度理解の不足、ブローカーの介在、借金を背負って来日する構造、相談先の少なさ。いくつもの問題が絡み合っています。

本当に必要なのは、摘発だけではなく、適正に雇える仕組みを増やすことです。茨城県が農業分野で特定技能外国人の派遣等のサービスを提供可能な事業者一覧を公表している点は、適正雇用への誘導策として重要です。

通報制度だけが前面に出ると、社会の空気は硬くなります。けれど、適正な雇用ルート、相談窓口、企業向けの確認支援、外国人本人への多言語情報提供がセットで進めば、不法就労を減らしながら、外国人との共生にも近づけるはずです。

外国人雇用は、これからの地域社会にとって避けて通れないテーマです。だからこそ、違法な雇用をなくすことと、外国人を疑いの対象として扱わないこと。この両方を同時に考える必要があります。

在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の活動内容、雇用契約、勤務場所、在留資格の種類、過去の在留状況によって結論が変わります。

判断に迷う場合は、採用前の段階で専門家へ確認することをおすすめします。

  1. 記事末尾の整理

【結論】

茨城県の不法就労通報報奨金制度は、不法就労助長を行う事業者等を対象とする制度であり、不法就労対策としての問題意識自体は理解できます。
一方で、在留資格や就労可否は外見や国籍では判断できず、制度運用によっては外国人差別や誤認通報を助長する懸念があります。
企業にとって最も重要なのは、通報制度への対応ではなく、採用時・雇用継続時の在留資格確認体制を整えることです。

【根拠】

茨城県は、不法就労情報提供システム及び不法就労通報報奨金制度を導入し、対象を不法就労助長罪に違反している疑いのある事業者等に限定しています。
令和7年の入管法違反事件では、不法就労事実が認められた者が1万3,435人、茨城県が3,518人で最多とされています。
茨城県は、令和6年の県内不法就労者3,452人のうち農業分野が2,596人、75%を占めると説明しています。
不法就労助長罪については、入管法第73条の2が根拠となります。

【注意点・例外】

在留資格の就労可否は、在留カードだけでなく、指定書、資格外活動許可、雇用契約、実際の業務内容を確認しなければ判断できない場合があります。
永住者、日本人の配偶者等、定住者などは原則として就労制限がないため、「外国人が働いている」という外形だけで不法就労とは判断できません。
留学生や家族滞在は、資格外活動許可や週28時間制限などの確認が必要です。
技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能などは、在留資格ごとに認められる活動範囲が異なります。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。

【出典】

茨城県「不法就労に関する情報の通報について」
茨城県「茨城県において農業分野で特定技能外国人の派遣等のサービスを提供可能な事業者一覧について」
出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」
厚生労働省「不法就労に当たる外国人を雇い入れないようにお願いします。」
関東弁護士会連合会 理事長声明
アムネスティ・インターナショナル日本 NGO共同声明
毎日新聞記事「茨城県、通報に報奨金制度スタート 外国人の不法就労、全国最多」2026年5月11日、参考情報

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