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TOP > コラム > 経営・管理ビザの新規申請96%減へ 厳格化で何が変わったのか行政書士が解説

経営・管理ビザの新規申請96%減へ 厳格化で何が変わったのか行政書士が解説

2026.05.17
コラム外国人支援法改正経営管理ビザ
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経営・管理ビザの新規申請が96%減という報道

在留資格「経営・管理」をめぐって、かなり大きな数字が報じられました。

TBS NEWS DIGは、2025年10月に取得要件が厳格化された「経営・管理」について、厳格化前の5か月間は新規申請が1か月平均およそ1,700件だったのに対し、厳格化後の5か月間ではおよそ70件となり、約96%減少したと報じています。なお、この数字は「法務省関係者への取材」とされていますので、現時点では報道ベースの情報として扱う必要があります。一次情報として、入管庁が同じ集計を公式に公表していることまでは確認できていません。

それでも、実務感覚としては非常に重い数字です。

単に「申請が減った」という話ではありません。これまで小規模な起業、民泊、不動産管理、貿易、飲食、コンサルティングなどで「経営・管理」を検討していた外国人にとって、制度の入口そのものが大きく変わったことを示しています。

2025年10月改正で何が変わったのか

今回の厳格化は、単なる書類追加ではありません。

入管庁は、在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について、2025年10月16日に施行されると公表しています。主な改正内容として、1人以上の常勤職員の雇用、3,000万円以上の資本金等、日本語能力、経歴・職歴、専門家による事業計画書の確認などが示されています。

特に大きいのは、資本金等の基準です。

従来は、資本金500万円以上という基準が実務上の一つの目安でした。これが、改正後は3,000万円以上の資本金等を求める形になりました。

法人の場合、株式会社であれば払込済資本の額、合同会社などであれば出資の総額を指すとされています。

個人事業の場合は、事業所の確保、雇用する職員の1年分の給与、設備投資経費など、事業を営むために投下されている総額で見るとされています。

さらに注意が必要なのは、法人の場合、従業員給与や事務所維持費などを資本金額に合算して3,000万円を満たすという理解は認められていない点です。入管庁のQ&Aでは、法人の場合は資本金の額または出資の総額で判断すると説明されています。

つまり、「事業にそれなりのお金を使っているから大丈夫」という話ではありません。会社の資本構成そのものが見られるということです。

経営・管理ビザは「小さく始める起業」から遠くなった

行政書士としてこの改正を見ると、一番大きな変化は、「小さく始めて、育てながら更新していく」という起業の形がかなり取りにくくなったことです。

もちろん、不正なペーパーカンパニーや、実態の乏しい会社を使った在留資格取得を防ぐ必要はあります。これは制度の信頼性を守るうえで重要です。

ただ、現場では、不正目的ではなく、真面目に日本で事業を始めたい外国人もいます。たとえば、長く日本で働いてきた人が独立するケース、日本語学校や大学を卒業して日本で起業を目指すケース、地域で小規模なサービス業を始めるケースです。

そうした人たちにとって、資本金3,000万円、常勤職員1名以上、日本語能力、経営経験または一定の学歴、専門家確認付きの事業計画書という要件は、かなり高い壁になります。

制度としては「本気で事業を行う人だけを対象にする」という方向に舵を切ったといえます。一方で、起業というものは、最初から大きな資本を持って始めるものばかりではありません。むしろ、現場では小さく始めて、顧客を作り、売上を立て、徐々に雇用を生む形も多い。

今回の96%減という報道が事実に近いのであれば、制度が不正排除を超えて、正規の小規模起業まで強く抑制している可能性があります。

「上場企業の役員クラスが多い」という意味

報道では、厳格化以降に新たに申請して許可された人について、「上場企業の役員クラスの人物が多い」とされています。

この表現は、実務上かなり象徴的です。

つまり、改正後の「経営・管理」は、これまでのような個人起業家向けの在留資格というより、一定規模以上の会社、十分な資本、経営経験、組織体制がある人を中心に許可される制度へ近づいているということです。

もちろん、上場企業の役員でなければ許可されないという意味ではありません。そこは誤解してはいけません。

ただし、審査上は、事業の規模、継続性、安定性、経営者本人の経験、資金の出所、事業所の実態、雇用体制、日本語対応力などが、以前よりもかなり厳しく見られると考えるべきです。

既存の経営・管理ビザ保有者も安心はできない

今回の話で、新規申請だけに目が向きがちですが、既に「経営・管理」で在留している人も注意が必要です。

入管庁は、改正前に申請して審査が継続しているものについては改正前の基準を適用するとしています。ただし、改正前基準で許可された場合でも、施行日から3年を経過した後は改正後の許可基準を満たす必要があると説明しています。

また、既に「経営・管理」で在留している人が更新する場合、2028年10月16日までの間は、改正後の基準に適合していない場合でも、経営状況や新基準に適合する見込み等を踏まえて許否判断を行うとされています。

ここで大事なのは、「3年間は何もしなくてよい」という意味ではないことです。

むしろ、この期間は猶予期間であり、準備期間です。資本金の増資、常勤職員の雇用、社会保険・労働保険の整備、事業計画の見直し、許認可の取得状況、日本語能力の証明などを、段階的に整える必要があります。

実務上、これから相談が増えそうな論点

今後、現場で増える相談は大きく3つだと思います。

一つ目は、既存の経営・管理ビザ保有者が、次回更新までにどこまで新基準へ近づけるかという相談です。

二つ目は、これから起業したい外国人が、そもそも「経営・管理」を目指すべきか、それとも別の在留資格や制度設計を検討すべきかという相談です。

三つ目は、形式的に資本金だけを増やせばよいのかという相談です。

この点は、かなり慎重に考える必要があります。資本金を3,000万円にしたとしても、それだけで許可が保証されるわけではありません。事業計画の合理性、資金の出所、経営者としての活動実態、事業所の独立性、雇用の実態、公租公課の履行状況などが総合的に確認されます。

特に、「見せ金」のような形で一時的に資本金を積むだけでは、かえって審査上の信用を失うリスクがあります。

制度の厳格化は必要だが、現場への影響も大きい

経営・管理ビザを悪用した不正な移住や、実態のない会社設立を防ぐことは必要です。制度が信頼を失えば、真面目に事業を行う外国人経営者にも不利益が及びます。

一方で、今回の厳格化は、かなり強い薬です。

96%減という数字が示しているのは、不正申請だけが減ったというより、申請を検討する段階で多くの人が入口から外れている可能性です。

日本は今後、外国人労働者だけでなく、外国人経営者、地域で雇用を生む人材、海外との取引をつなぐ人材も必要としていくはずです。その意味では、不正排除と起業促進のバランスをどう取るかが、これからの課題になります。

経営・管理ビザは、もはや「会社を作れば取れる在留資格」ではありません。

事業の実態、資本、雇用、経営者本人の能力、日本で継続して事業を行う合理性。これらを、かなり早い段階から設計する必要があります。

在留資格申請や外国人起業の判断は、制度の条文だけでなく、実際の事業内容、資金計画、雇用体制、過去の在留状況によって結論が変わります。判断に迷う場合は、申請直前ではなく、事業設計の段階で専門家へ相談することをおすすめします。

  1. 記事末尾の整理

【結論】

経営・管理ビザは、2025年10月改正により、小規模な外国人起業家が利用しやすい在留資格から、一定規模・実態・資本・経営能力を強く求める在留資格へ大きく変わった。新規申請96%減という報道は、制度の入口が実質的に大幅に狭くなったことを示している。

【根拠】

出入国在留管理庁は、在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について、2025年10月16日施行と公表している。主な改正内容は、常勤職員1名以上の雇用、3,000万円以上の資本金等、日本語能力、経歴・職歴、専門家による事業計画書確認など。

TBS NEWS DIGは、厳格化後の新規申請件数が、厳格化前の月平均約1,700件から、厳格化後は月平均約70件となり、約96%減少したと報じている。

【注意点・例外】

96%減の数字は、現時点では報道ベースであり、入管庁の公式統計として同一内容を確認できたものではありません。

既存の経営・管理ビザ保有者については、2028年10月16日までの間、改正後基準に適合していない場合でも、経営状況や新基準に適合する見込み等を踏まえて判断されるとされています。ただし、これは無条件に更新されるという意味ではありません。

資本金3,000万円を満たしても、それだけで許可が保証されるわけではありません。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。

【出典】

出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」

出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について」

TBS NEWS DIG「【独自】在留資格『経営・管理』の許可基準厳格化 新規申請は96%減 2025年10月から今年3月で」2026年5月8日配信

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