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TOP > コラム > ハンガーストライキで仮放免されるのか|入管収容と健康管理を実務目線で考える

ハンガーストライキで仮放免されるのか|入管収容と健康管理を実務目線で考える

2026.06.28
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この記事のポイント

入管施設に収容された外国人がハンガーストライキをすれば仮放免されるのか。

この問いは、単に「厳しくすべきか」「人道的に扱うべきか」という二択では整理できません。

仮放免は、収容そのものを取り消す制度ではなく、健康上・人道上などの理由により一時的に収容を解除する制度です。出入国在留管理庁も、仮放免は「ハンガーストライキをしたから許可する」のではなく、医師の所見を踏まえて判断する立場を示したと報じられています。

 

ハンガーストライキと仮放免が政治論点になった背景

報道によれば、2026年6月18日の参議院法務委員会で、日本保守党の北村晴男参院議員が、入管施設に収容された外国人について、食事拒否によって体調不良になれば仮放免される運用になっているのではないかと質問しました。

これに対し、入管庁は、医師の所見に基づいて仮放免を判断しており、ハンガーストライキをすれば仮放免を許可する運用はしていないと説明したとされています。

この議論の背景には、2021年3月に名古屋出入国在留管理局の収容施設でスリランカ人女性が死亡した事案があります。

衆議院の質問主意書でも、この死亡事案を受けて、入管庁が同年8月に調査報告書を公表し、さらに医療体制強化のための有識者会議が設置された経緯が整理されています。

入管収容は、行政上の退去強制手続の一部である一方、実際には人の身体を拘束する強い措置です。そのため、法執行の確実性と、被収容者の生命・健康の保護をどう両立させるかが、常に難しい問題として残ります。

仮放免は「在留を認める制度」ではない

まず押さえておきたいのは、仮放免は在留資格を与える制度ではないという点です。

入管庁の説明では、仮放免は、収容令書または退去強制令書により収容されている被収容者について、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により、収容を一時的に解除することが相当と認められる場合の制度です。

仮放免が許可された場合も、住居や行動範囲の制限、出頭義務などの条件が付されます。

つまり、仮放免は「自由に日本で暮らしてよい」という許可ではありません。収容を一時的に解く制度であって、退去強制手続や在留資格の問題が消えるわけではない。この点は、一般の報道やSNSでかなり混同されやすいところです。

実務上も、仮放免中の方については、就労の可否、住居、出頭義務、身元保証人、医療費、生活支援など、非常に現実的な問題が発生します。

企業側から見れば、「仮放免中だから働ける」という理解は危険です。不法就労助長の問題に直結する可能性があります。

「不法滞在は犯罪」という表現の注意点

北村氏は報道の中で、不法滞在は入管法違反であり、刑罰対象となる犯罪行為だと述べています。入管法上、不法残留など一定の違反行為については、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となる規定があります。

ただし、実務上はここを少し丁寧に分ける必要があります。

不法残留や不法入国が入管法上の罰則対象であることは確かです。一方で、個々の外国人について「犯罪者」と断定的に呼ぶ場合には、刑事手続で有罪が確定しているのか、退去強制手続中なのか、難民申請中なのか、在留特別許可を求めているのか、といった事情を分けて見る必要があります。

行政書士として現場を見ると、悪質な不法就労や虚偽申請がある一方で、家族関係、DV、疾病、送還困難国、難民性の主張など、単純に「帰ればよい」とは言い切れないケースもあります。

だからこそ、制度は冷静でなければなりません。甘くするという意味ではなく、事実認定を雑にしないという意味です。

体調不良者への仮放免は、名古屋事案後に見直された

名古屋入管の死亡事案後、入管庁は改善策として、医療体制の強化、通訳等の活用、救急対応マニュアルの整備、体調不良者の仮放免判断に関する新たな運用指針の策定などを進めました。

2021年12月時点の入管庁資料では、「体調不良者に対する柔軟な仮放免」を指示し、医療従事者等の意見を踏まえた具体的な判断指針を作成中とされています。

この流れだけを見ると、北村氏の問題意識、つまり「健康状態を理由に仮放免されやすくなったのではないか」という疑問自体は、制度運用上の論点としては理解できます。

ただし、ここから直ちに「ハンガーストライキをすれば仮放免される」という結論に飛ぶのは危険です。政府答弁では、2021年12月に策定された「体調不良者等に係る仮放免運用方針」に基づく仮放免件数などについて、統計的に把握していないため答弁困難とされています。

つまり、少なくとも公表資料だけでは、ハンガーストライキと仮放免許可との因果関係を断定できません。

拒食への対応は「放置」でも「機械的放免」でもいけない

拒食、いわゆるハンガーストライキへの対応は、非常に難しい問題です。

本人の意思による食事拒否であっても、収容施設内で生命の危険が生じれば、国には安全配慮の責任があります。一方で、食事拒否をすれば事実上収容を解かれるという運用が固定化すれば、収容制度の実効性が揺らぎます。

令和5年改正入管法の運用資料では、収容施設における適正な処遇の一環として、強制治療に関する規定、いわゆる拒食対策や、3か月ごとの健康診断などが整理されています。

ここで重要なのは、拒食しているから許す、拒食しているから見捨てる、という両極端を避けることです。

医師の所見、本人の意思確認、通訳を介した説明、外部医療機関との連携、記録化、そして収容継続の必要性。このすべてを、後から検証可能な形で残していく必要があります。

北村氏が録画などによる記録化を提案した点は、表現の強さは別として、実務的には一定の意味があります。

入管側にとっても、支援者側にとっても、記録が残ることは、後日の「言った・言わない」を減らす効果があるからです。

ただし、録画はプライバシーや医療情報の問題も伴うため、運用には慎重な設計が必要です。

企業・支援者が誤解してはいけないこと

この問題は、収容施設の中だけの話に見えるかもしれません。しかし、外国人雇用や在留資格申請の現場にも関係します。

たとえば、仮放免中の外国人から「働きたい」と相談された場合、企業は安易に雇用してはいけません。

就労できる在留資格があるのか、資格外活動許可があるのか、仮放免の条件はどうなっているのかを確認しなければなりません。

不法就労者を雇用した事業主は、不法就労助長罪の対象となる可能性があります。警視庁も、在留カード確認を怠るなど過失がある場合でも処罰対象になり得ると注意喚起しています。

また、支援者や身元保証人の立場でも、「かわいそうだから」という気持ちだけで関与すると、本人の出頭義務や住居条件、生活管理の問題を支えきれなくなることがあります。

仮放免は、制度上の条件を守りながら生活する必要がある状態です。支援には責任が伴います。

実務家として感じること

入管行政は、いま非常に強い政治的視線の中にあります。不法滞在、不法就労、難民申請の濫用、送還忌避。これらに厳格に対応すべきだという声は、現場感覚としても理解できます。

実際、虚偽申請や制度の悪用は、まじめに在留資格を取得して働いている外国人や、適正に雇用している企業にとっても迷惑です。

一方で、収容施設の中で人が亡くなることは、あってはならないことです。法を守らせる行政であるからこそ、生命・健康への配慮もまた、制度の信頼性を支える要素になります。

大切なのは、「厳格な入管行政」と「人道的配慮」を対立概念にしないことだと思います。

厳格であるためには、記録があり、基準があり、医療判断があり、例外処理の理由が説明できる必要があります。人道的であるためにも、場当たり的な判断ではなく、制度としての透明性が必要です。

ハンガーストライキと仮放免の問題は、感情的に語られやすいテーマです。しかし、実務の視点から見ると、問われているのは「誰を出すか」だけではありません。

「どのような基準で、どのような記録を残し、どのように説明できる行政にするか」です。

4. 記事末尾の整理

【結論】

ハンガーストライキをすれば当然に仮放免される、とは確認できません。

仮放免は健康上・人道上の理由などに基づき、医師の所見や収容継続の相当性を踏まえて判断される制度です。

ただし、拒食による体調悪化と仮放免判断の関係は、制度の実効性と人命保護の両面から、今後も透明性のある検証が必要です。

【根拠】

仮放免は、収容を一時的に解除する制度であり、在留資格を与える制度ではありません。入管庁は、仮放免時に住居・行動範囲・出頭義務などの条件が付されると説明しています。

名古屋入管死亡事案後、入管庁は医療体制強化、通訳活用、救急対応、体調不良者の仮放免判断に関する運用整備を進めています。

政府答弁では、体調不良者等に係る仮放免運用方針に基づく仮放免件数について、統計的に把握していないとされています。

【注意点・例外】

不法残留などが入管法上の罰則対象となることは確かですが、個々の外国人を一律に「犯罪者」と扱う表現には注意が必要です。刑事責任、退去強制手続、難民申請、在留特別許可の主張は、それぞれ手続の性質が異なります。

仮放免中であっても、当然に就労できるわけではありません。企業が雇用する場合は、在留資格、就労可否、仮放免条件を慎重に確認する必要があります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。

【出典】

出入国在留管理庁「仮放免制度について」
出入国在留管理庁「改善策の取組状況」令和3年12月21日
衆議院「我が国の入管収容施設における医療環境等の整備等に関する質問主意書」および政府答弁書
e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
産経新聞記事要約情報「収容の外国人『ハンガーストライキすれば仮放免か』保守党・北村晴男氏が質問 入管庁否定」

 

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