新様式の在留カードを知らず、誤認逮捕が起きた
令和8年6月25日、警視庁渋谷署が、ネパール国籍の20代男性について、偽造在留カードを所持したとする入管難民法違反容疑で誤認逮捕したとの報道がありました。
報道によれば、男性はJR渋谷駅前で職務質問を受け、新様式の在留カードを提示しました。
しかし、署員らが令和8年6月14日から在留カードの券面様式が変わっていることを十分に把握しておらず、偽造カードと誤認したとされています。
男性は約1時間後に釈放され、警視庁は謝罪したとのことです。
これは警察実務の問題として報じられていますが、私は、外国人を雇用する企業、学校、支援機関、そして行政書士実務にとってもかなり重い出来事だと感じます。
在留カードは、外国人本人にとって単なる身分証ではありません。日本で生活し、働き、学ぶための「信用の入口」のようなものです。その確認をする側が新様式を知らなければ、本人に大きな不利益を与える可能性があります。
令和8年6月14日から何が変わったのか

出入国在留管理庁の案内では、令和8年6月14日から第二世代在留カード等の交付が開始されています。
これに対応するため、在留カード等読取アプリケーションも令和8年6月10日に新しいバージョンへ更新する必要があると案内されています。
新様式で特に実務上注意したいのは、券面から一部の情報が見えなくなっている点です。出入国在留管理庁は、新様式の在留カードでは、従来券面に記載されていた「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」「交付年月日」が記載されなくなると説明しています。
ただし、ここは誤解しやすいところです。
「在留期間」が券面から消えるというのは、たとえば「1年」「3年」「5年」といった在留期間そのものの表示の話です。
一方で、「在留期間の満了の日」まで直ちに消えるという意味ではありません。入管庁のQ&Aでも、特定在留カード等の券面には在留資格、在留期間の満了の日、就労制限の有無などが記載されると整理されています。
現場では、この違いを正確に理解していないと、「いつまで在留できるのか分からない」「従来と違うから怪しい」という短絡的な判断になりかねません。
目視だけの確認は、移行期には危ない

在留カードの確認というと、これまでは券面のデザイン、ホログラム、顔写真、在留資格、就労制限、在留期間満了日などを目視で確認する実務が中心でした。
もちろん、目視確認は今後も必要です。ただ、今回のように様式が大きく変わる時期には、「自分が見慣れている在留カードと違う」というだけで偽造を疑うのは危険です。
入管庁は、在留カード等読取アプリケーションについて、ICチップ内の情報を読み取り、券面と照合することで偽変造確認に活用できると案内しています。
正常に読み取った場合でも、券面と読み取った顔写真が違うなどの差異があれば、偽変造が疑われるため、地方出入国在留管理官署に問い合わせる流れになります。
厚生労働省も、外国人雇用状況届出に際して、在留カード等の提示を求めて届出事項を確認することが義務づけられているとしたうえで、在留カード等読取アプリケーションの活用を案内しています。
つまり、企業や学校の現場でも、「見たことがないカードだから怪しい」では足りません。確認する側が、制度変更に合わせて確認方法を更新する必要があります。
外国人本人に責任を押し付けてはいけない

今回の報道で特に考えたいのは、外国人本人は正規のカードを提示していたとされる点です。
在留カードには常時携帯義務があります。入管庁のQ&Aでも、特定在留カードは在留カードであるため、常時携帯義務が課されるとされています。
本人が携帯義務を守り、提示を求められて提示した。それにもかかわらず、確認する側が新様式を知らなかったために逮捕に至った。ここに、制度の移行期特有の怖さがあります。
行政書士実務でも似た場面はあります。
たとえば、企業の人事担当者が新様式を知らずに「この在留カードはいつもと違うので採用を止めます」と判断してしまう。
学校の窓口で「カードの表示が変だから受付できません」と言ってしまう。金融機関や不動産会社で本人確認が止まってしまう。
その一つ一つは、逮捕ほど大きな出来事ではないかもしれません。しかし、本人から見れば、生活や就労、契約に直結する深刻な不利益です。
企業・学校・支援者が今すぐ見直すべきこと

まず、社内や学校内で使っている在留カード確認マニュアルを更新すべきです。
古い在留カードの画像だけを貼った資料を使い続けている場合、新様式を見た担当者が混乱する可能性があります。
特に、外国人雇用の入口に立つ採用担当者、現場責任者、受付担当者、学校の留学生担当者には、最低限の変更点を共有しておく必要があります。
次に、在留カード等読取アプリケーションを最新バージョンに更新しておくことです。
令和8年6月14日から特定在留カード等の交付が始まっており、古いバージョンでは読み取れないと案内されています。
さらに、在留期間の確認方法にも注意が必要です。入管庁は、令和8年6月23日時点の案内として、令和8年6月14日以降に交付される新様式の特定在留カードについて、券面に在留期間の情報が記載されず、読取アプリケーションで読み取っても当面は在留期間の情報が表示されないとしています。在留期間を確認する必要がある場合は、申請人の住民票に記載された在留期間を確認するよう案内されています。
ここはオンライン申請を扱う行政書士にとっても実務上重要です。オンライン申請では在留期間が必須入力項目になるため、カードだけで完結しない場面が生じます。
実務上の結論は「確認する側のアップデート」

在留カードの偽造対策は必要です。不法就労や虚偽申請を防ぐためにも、企業や学校が在留カードをきちんと確認することは重要です。
ただし、偽造対策の名のもとに、正規のカードを持つ外国人を疑いすぎる運用になってはいけません。
今回の件は、制度が変わったときに、確認する側の知識が追いつかないと何が起きるかを示しています。外国人本人に「ちゃんと説明してください」と求める前に、確認する側が新様式を知り、公式アプリを更新し、迷った場合の照会先を整えておくべきです。
在留カードは、外国人本人だけの問題ではありません。雇用する企業、受け入れる学校、本人確認を行う事業者、支援者、行政機関のすべてに関わるインフラです。
制度変更は、官報や入管庁のページに載った時点で終わりではありません。現場に伝わり、実際の対応が変わって、はじめて意味を持ちます。今回の誤認逮捕は、その当たり前のことをかなり強く突きつけているように思います。
在留カード確認や外国人雇用管理は、形式的にカードを見るだけでは足りない場面が増えています。判断に迷う場合は、出入国在留管理庁の最新情報を確認し、必要に応じて専門家へ相談することをおすすめします。
- 記事末尾の整理
【結論】
令和8年6月14日以降、新様式の在留カードが交付されており、従来の券面と異なる点があります。確認する側が変更を知らないと、正規のカードを偽造と誤認するリスクがあります。企業、学校、支援機関、行政書士事務所は、在留カード確認マニュアルと読取アプリの更新を急ぐ必要があります。
【根拠】
出入国在留管理庁は、令和8年6月14日から第二世代在留カード等の交付が始まること、古い読取アプリでは読み取れないことを案内しています。
新様式では、従来券面に記載されていた「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」「交付年月日」が記載されなくなるとされています。
令和8年6月23日時点で、在留期間の確認が必要な場合は、住民票に記載された在留期間を確認するよう案内されています。
報道によれば、警視庁渋谷署は新様式の在留カードを偽造と誤認し、ネパール国籍の男性を誤認逮捕したとされています。
【注意点・例外】
新様式の在留カードでも、券面に在留資格や在留期間満了日は記載されると整理されています。したがって、「在留期間が券面にない」という点と、「在留期限が確認できない」という点を混同しないことが重要です。
ただし、オンライン申請等で「在留期間」そのものの入力が必要な場合、カード券面や読取アプリだけでは足りない場面があります。
偽変造が疑われる場合でも、見慣れないという理由だけで判断せず、読取アプリ、本人確認、必要に応じた入管への照会を組み合わせるべきです。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
出入国在留管理庁「特定在留カード交付申請について」
出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」
出入国在留管理庁「第二世代在留カード等仕様書の公開について」
出入国在留管理庁「新様式の在留カードに係る在留期間の確認方法について」
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「在留カード等読取アプリケーションを積極的にご活用ください」
参考情報
時事通信「ネパール人男性を誤認逮捕 在留カードの様式変更知らず―警視庁」2026年6月25日配信
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