労働安全衛生法違反は外国人雇用にどう影響する?新潟のクレーン無資格運転事件から考える
この記事のポイント
労働安全衛生法違反は、単なる現場の安全管理上の問題ではありません。処分内容や違反の対象者によっては、特定技能外国人や技能実習生の受入れ継続、新規申請にも影響します。
もっとも、書類送検された時点で有罪が確定したわけではありません。報道段階、刑事処分の確定後、外国人制度上の行政判断を分けて考える必要があります。
新潟市の工場で報じられたクレーンの無資格運転

にいがた経済新聞の報道によれば、新潟労働基準監督署は2026年7月10日、大川スティール株式会社と代表取締役を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しました。
報道されている容疑は、つり上げ荷重5トン以上の床上操作式クレーンを、必要な資格を持たない労働者に運転させたというものです。
運転中には、休業4日以上を要する労働災害が発生したとされています。
同社には2025年にも同じ内容について行政指導が行われていたものの、再び無資格運転が行われた疑いがあることから、今回の書類送検に至ったと報じられています。
現時点ではあくまで被疑事実であり、有罪や罰金刑が確定したものではありません。
なお、報道では運転していた労働者の国籍は明らかにされていません。この事件を「外国人労働者による事故」と受け取ることはできません。
本記事では、この事例を入口として、労働安全衛生法違反が外国人を雇用する企業に及ぼす一般的な影響を考えます。
「操作できる」と「資格がある」は別の話

労働安全衛生法第61条は、クレーンの運転など一定の危険業務について、免許を受けた者や技能講習を修了した者など、法令上の資格を持つ者でなければ就業させてはならないと定めています。
つり上げ荷重5トン以上のクレーンでは、クレーン・デリック運転士免許、床上操作式クレーン運転技能講習の修了など、クレーンの方式に応じた資格が必要です。
普段から機械に触れており、操作方法を知っているというだけでは足りません。
違反した場合は、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。法人の業務として違反が行われた場合には、行為者だけでなく法人にも罰金刑を科す両罰規定があります。
現場では「少し動かすだけ」「資格者が近くにいる」「これまで事故がなかった」という判断が入り込みがちです。
しかし、危険業務の資格は経験を評価する制度ではなく、事故を防ぐための入口です。
ここを曖昧にすると、会社と労働者の双方が大きな代償を負います。
特定技能の受入れ企業には直接的な影響がある

労働安全衛生法違反が特に重く響くのが、特定技能外国人を雇用している企業です。
特定技能所属機関には、労働関係法令を遵守し、適正な雇用契約を履行できる体制が求められます。出入国または労働に関する法律に違反して罰金刑に処せられた場合、刑の執行を終えた日などから5年を経過していなければ、欠格事由に該当する可能性があります。
ここで大切なのは、書類送検だけで直ちに5年間受入れができなくなるわけではないという点です。起訴されるか、刑事処分が確定するか、法人と代表者のどちらが処罰されるかなどを確認する必要があります。
一方、刑事罰の確定とは別に、外国人の就労に関して労働安全衛生法違反があった場合は、「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為」に当たるかが問題になります。
特定技能運用要領では、外国人に必要な安全措置を講じていない場合などが例示されています。
そのため、外国人本人が違反の対象となっていたケースでは、刑事事件の結論を待たず、受入れ機関としての適格性や雇用契約の適正な履行について説明を求められることがあります。
技能実習では認定取消しや改善命令の問題になる

技能実習制度でも、実習実施者には労働安全衛生法を含む労働関係法令の遵守が求められます。
技能講習の修了が必要な作業を、未修了の技能実習生に行わせれば、技能実習計画の問題にとどまらず、労働安全衛生法違反となります。外国人技能実習機構の運用資料でも、この点が明確に注意喚起されています。
違反の内容、反復性、悪質性、改善状況によっては、実習実施者への改善命令、技能実習計画の認定取消し、新規計画の認定への影響が生じます。特に、行政指導後も同種の違反を繰り返していた場合は、単発の確認漏れとは異なる評価を受ける可能性があります。
2027年4月1日から受入れが始まる育成就労制度でも、受入れ機関の法令遵守と安全な育成環境は制度の前提になります。
技能実習から制度名が変われば、安全管理の問題が軽くなるわけではありません。
技人国などの一般就労資格への影響

「技術・人文知識・国際業務」などの一般的な就労資格では、労働安全衛生法違反によって会社が直ちに一律の欠格状態になる仕組みが、特定技能と同じ形で設けられているわけではありません。
ただし、在留資格申請では雇用契約の安定性、活動内容の適法性、所属機関の実態などが審査されます。
推測ですが、重大な労働災害、繰り返される法令違反、行政指導を無視した経緯がある場合、企業の雇用管理体制について追加説明を求められる可能性はあります。
個別事情により判断が分かれるため、刑事処分や行政処分が発生した企業が外国人の在留資格申請を行う場合は、専門家への確認が必要です。
外国人への安全教育は「伝えた」ではなく「理解できたか」

外国人労働者を雇用する企業では、資格確認と同時に、安全教育の伝わり方も見直す必要があります。
労働安全衛生法第59条は、雇入れ時や作業内容を変更した場合の安全衛生教育を事業者に求めています。厚生労働省は外国人に対する教育について、母国語、視聴覚教材、図解などを利用し、本人が内容を確実に理解できる方法で行うよう求めています。
ただし、多言語で説明すれば無資格作業が許されるわけではありません。
資格が必要な作業は、まず免許や技能講習の修了を確認する。そのうえで、機械固有の危険性、作業手順、合図、立入禁止区域、緊急停止方法を、理解できる言語で教育する。
この順番が必要です。
外国人雇用企業が確認したい5つの事項

企業としては、少なくとも次の事項を定期的に確認する必要があります。
1.機械ごとに必要な免許、技能講習、特別教育を整理しているか
2.資格証の原本確認と有効な資格の記録を行っているか
3.無資格者が代替要員として操作できない仕組みになっているか
4.外国人が理解できる言語や図解で安全教育を実施しているか
5.労働災害や行政指導後の再発防止策が現場で実行されているか
資格証のコピーをファイルに入れて終わりではありません。
誰が、どの機械を、どの範囲で操作できるのかを、現場責任者まで共有する必要があります。
特に外国人材の受入れでは、安全管理、労務管理、在留資格管理は別々の業務ではありません。
一つの違反が、労働基準監督署、外国人技能実習機構、出入国在留管理局という複数の行政機関に波及することがあります。
- 記事末尾の整理
【結論】
労働安全衛生法違反は、現場の事故対応だけで終わる問題ではありません。罰金刑や重大な法令違反が確定すれば、特定技能や技能実習の受入れ資格に影響する可能性があります。
書類送検と有罪確定は区別しなければなりませんが、行政指導後の再発や外国人本人に対する安全措置違反は、外国人雇用制度上も厳しく評価され得ます。
【根拠】
労働安全衛生法第59条、第61条、第119条、第122条
特定技能外国人受入れに関する運用要領
技能実習制度運用要領
外国人労働者に対する安全衛生教育の推進に関する厚生労働省資料
育成就労制度運用要領
【注意点・例外】
書類送検は有罪判決や罰金刑の確定を意味しません。
今回報道された労働者が外国人であったかどうかは確認できません。
外国人受入れへの具体的影響は、違反条文、処分内容、対象となった労働者、法人・役員の処罰状況、再発防止措置などによって異なります。
一般就労資格と特定技能・技能実習では、受入れ機関に対する制度上の基準が異なります。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
厚生労働省「外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等について」
厚生労働省「外国人労働者の安全衛生管理」
出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」
外国人技能実習機構「行政処分等」「技能実習制度運用資料」
出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」
参考情報
にいがた経済新聞「【無資格の疑い】大川スティール(新潟市北区)などを労働安全衛生法違反の疑いで書類送検」2026年7月11日
—————————————————————————————————————————————-
特定技能ビザをはじめとする各種ビザ・在留資格のご相談や代行申請はホームページのお問い合わせフォームをはじめ、お電話・LINE・Facebook・Instagramからもお問い合わせが可能です。
また、当事務所のYouTubeチャンネル「ビザ新潟ちゃんねる」も更新中です。興味のある方はYouTubeもぜひのぞいてみてください。
ビザ新潟ちゃんねる
以上、新潟市のビザ専門行政書士事務所、Asocia行政書士法務事務所でした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新潟のビザ・入管業務のことならお任せ下さい。
ビザの相談・申請代行専門
Asocia行政書士法務事務所
新潟県初の登録支援機関(19登-000085)
代表行政書士 播磨 史雄
住所:新潟市西区平島2丁目13-11 2F
℡:025-201-7514
mail:info@fumio-h-office.com
総合ホームページ:https://fumio-h-office.com/
新潟ビザ相談センター:https://visa-asocia.com/
新潟県お酒の販売許可申請代行センター:https://www.sakemenkyo.com/
一般社団法人設立専門ページ:https://niigata-syadan.com
新潟成年後見相談センター:http://www.niigata-seinenkouken.com/
LINEからの相談は『24時間365日』受け付けています。
【※ご注意】ご依頼に関する相談料は初回無料ですが、ブログ記事に内容に関するご質問やご依頼に関係ないご相談は有償となります。
対応エリア
全国対応
新潟県全域対応可能(新潟市、長岡市、三条市、柏崎市、新発田市、小千谷市、加茂市、十日町市、見附市、村上市、燕市、糸魚川市、妙高市、五泉市、上越市、阿賀野市、佐渡市、魚沼市、南魚沼市、胎内市、聖籠町、弥彦村、田上町、阿賀町、出雲崎町、湯沢町、刈羽村、関川村、粟島浦村、津南町)ビザ新潟
福島県全域対応可能(福島市、会津若松市、郡山市、いわき市、白河市、須賀川市、喜多方市、相馬市、二本松市、田村市、南相馬市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村、鏡石町、天栄村、下郷町、檜枝岐村、只見町、南会津町、北塩原村、西会津町、磐梯町、猪苗代町、会津坂下町、湯川村、柳津町、三島町、金山町、昭和村、会津美里町、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町、新地町、飯舘村、大玉村、天栄村、檜枝岐村、只見町、南会津町、北塩原村、西会津町、磐梯町、猪苗代町、湯川村、柳津町、三島町、金山町、昭和村、飯舘村)ビザ福島
山形県全域対応可能(山形市、米沢市、鶴岡市、酒田市、新庄市、寒河江市、上山市、村山市、長井市、天童市、東根市、尾花沢市、南陽市、山辺町、中山町、河北町、西川町、朝日町、大江町、大石田町、金山町、最上町、舟形町、真室川町、大蔵村、鮭川村、戸沢村、高畠町、川西町、小国町、白鷹町、飯豊町、大蔵村、鮭川村、戸沢村)ビザ山形
上記エリア以外でも当事務所はオンライン申請に対応しております。
面談もZoomでの対応可能です。
LINEからの相談は『24時間365日』受け付けています。
友達追加してお気軽にご相談ください。
【※ご注意】ご依頼に関する相談料は初回無料ですが、ブログ記事に内容に関するご質問やご依頼に関係ないご相談は有償となります。
