警備業の特定技能追加を検討へ|外国人採用で企業が確認したいこと
工事現場の交通誘導、商業施設の巡回、イベント会場の安全確保。
警備の仕事は、私たちの暮らしや地域の事業活動を支えています。その担い手を今後どう確保するかという課題に、外国人材の受入れという選択肢が浮上しました。
2026年9月10日の日本経済新聞は、警察庁が有識者検討会を設け、警備業を在留資格「特定技能」の対象に加える妥当性や、受け入れた場合の業務範囲を議論すると報じています。
報告書は2027年1月をめどにまとめるとされています。
参考:日本経済新聞
採用に苦労している企業にとって、関心の高いニュースでしょう。
ただ、採用計画を立てるには、検討の段階と、実際に制度を利用できる段階を区別する必要があります。
警備業への特定技能導入は、まだ決定していません

2026年9月11日現在、出入国在留管理庁が案内する特定技能の対象分野に、警備業は含まれていません。
今回の報道を根拠に、警備業務に従事するための特定技能の申請を進められる状況ではありません。出入国在留管理庁・特定技能の対象分野
対象となる業務、技能試験、日本語能力の基準、受入開始時期はいずれも未定です。
報道にある「2027年1月」は報告書をまとめる目安であり、その月から採用できるという意味ではありません。
警察庁の報道発表一覧も確認しましたが、初会合の日付や具体的な制度案を示す資料は確認できませんでした。
この部分は、現時点ではわからないため、正式な公表を待つ必要があります。
警察庁・報道発表資料
施設警備と交通誘導では、現場で求められる判断や連絡の仕方も異なります。
制度化された場合に、どの仕事まで対象となるのか。企業としては、分野名に加えて、実際に任せたい業務との対応を確認することになります。
警備員約59.7万人のうち、60歳以上が47.3%

警察庁「令和7年における警備業の概況」によると、2025年12月末の警備員数は59万6,985人。年齢別構成比では60~64歳が12.6%、65~69歳が13.1%、70歳以上が21.6%で、60歳以上の合計は47.3%です。
一方、警備員総数は前年より1.5%増加しています。
警察庁・警備業の概況、本文1~2頁
総数が増えていても、必要な地域や時間帯に人を配置できているかは別の問題です。
この統計だけで、個々の会社の人手不足の程度まではわかりません。
また、年齢だけで現場の対応力を判断することもできません。
経験を積んだ警備員の知識をどう受け継ぎ、次の担い手を育てていくか。
外国人材の受入れを考える際にも、採用人数とあわせて、技術や判断力を引き継ぐ仕組みに目を向けたいところです。
現在の外国人採用では、在留資格と警備業法の両方を確認

特定技能の対象外であることをもって、外国人を警備員として一切雇用できないと理解するのも適切ではありません。
在留カードを持っているだけでは、就労の可否は判断できません
在留カードの就労制限欄に「就労制限なし」と記載されている人は、在留資格上、就労内容の制限がありません。
警備業法上の条件も満たすことを前提に、採用を検討できます。
就労に制限がある人については、その在留資格や許可された活動の範囲を確認する必要があります。出入国在留管理庁の雇用啓発資料・農林水産省掲載
今回の検討は、こうした現在の採用方法に加えて、警備業務のための新たな受入れ経路を設けるかどうかという話です。
警備員としての適格性確認と教育も必要です
警察庁の解釈運用基準では、警備業法第14条に関し、採用時に欠格事由への該当の有無を確認するため、誓約書だけでなく、履歴書や診断書、面接などによる必要な調査を行うよう示しています。
また、同法第21条に基づく警備員の教育、指導・監督も、警備業者の責任です。
警察庁・警備業法等の解釈運用基準、第13・第20
在留資格の手続が整っていても、それだけで配置までの準備が完了するわけではありません。
採用担当者と現場の教育担当者が、同じ計画を共有しておくことが大切です。
日本語力は、現場で何を伝え合うかまで考える

警備業に特定技能が導入される場合の日本語要件は、まだわかりません。
既存分野の試験水準を、そのまま警備業にも当てはめることはできません。
一方、企業が必要とする意思疎通は、今から具体化できます。
例えば交通誘導では、無線で場所と状況を短く伝える場面があります。
施設警備なら、来訪者への説明や、異常を見つけた際の報告が考えられます。
実務上は、「日本語で日常会話ができる」という評価に加え、どの場面の指示を理解し、どこまで報告できるかを見る必要があると考えます。
聞き取れないときに確認し直せること、判断に迷ったときに責任者を呼べることも、安全な仕事の進め方の一部です。
これは外国人本人の努力だけに任せる話ではありません。
短く具体的な指示、写真を使った手順書、緊急連絡先の共有など、教える側の準備も問われます。
今からできるのは、自社の仕事と受入れ体制の整理

制度の詳細が公表される前でも、自社が募集したい仕事の内容は整理できます。
勤務地、勤務時間、巡回や誘導の内容、一人で判断する場面、必要な資格、教育を担当する人。これらを書き出せば、制度案が示された際に、自社で利用できるかを検討しやすくなります。
新潟での受入れを考えるなら、夜勤時の通勤手段や冬季の移動、住居の確保も確認しておきたい点です。本人に示す給与から、住居費などを差し引いた後の生活も想像できるようにする。
こうした説明の積み重ねが、入社後の認識違いを減らします。
海外募集や契約の具体化に当たっては、制度の開始時期や採用可能性を確定事項として約束しないことが大切です。採用を急ぐ事情があっても、見通しが変わったときの負担を、応募者だけに負わせる進め方は避けたいものです。
行政書士としては、今回の検討を、自社の教育と雇用管理を見直す機会として受け止めています。どの仕事を任せ、誰が教え、困ったときに誰へ相談できるのか。
その答えを準備することには、制度の結論を待つ間にも意味があります。
外国人採用の可否は、本人の在留資格と実際の業務内容によって変わります。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
採用計画や在留資格の確認については、Asocia行政書士法務事務所へご相談ください。
4.記事末尾の整理
【結論】
警備業の特定技能追加は検討段階です。企業は正式な対象業務や要件を確認しながら、職務内容、教育、生活面を含む受入れ体制を整理することが大切です。
【根拠】
検討方針と報告書の取りまとめ目安は日本経済新聞の報道によります。警備員数と年齢構成は警察庁統計、現行の対象分野は入管庁の案内、採用時の適格性確認と教育は警備業法に関する警察庁通達を根拠としています。
【注意点・例外】
対象業務、技能試験、日本語要件、受入開始時期は未定です。初会合の日付や具体的な制度案も未確認です。特定技能の対象外でも、本人の在留資格と警備業法上の条件によって、現在の制度で採用を検討できる場合があります。実務上の準備に関する記述は筆者の見解であり、今後導入される制度要件を予測するものではありません。
【出典】
一次情報:
- 警察庁「令和7年における警備業の概況」(2025年12月末の警備員数・年齢構成)
- 出入国在留管理庁「在留資格『特定技能』とは」(対象分野の確認)
- 警察庁「警備業法等の解釈運用基準について」(2024年6月27日付。第13・第20を参照)
- 出入国在留管理庁の雇用啓発資料・農林水産省掲載資料(在留カードの就労制限欄の確認)
- 警察庁「報道発表資料」(2026年9月11日時点の公表状況の確認)
参考情報:
- 日本経済新聞「警備業の外国人就労、特定技能受け入れ巡り警察庁検討会 人手不足で」(2026年9月10日。共有された保存記事の公開部分を確認。会員限定部分の全文は未確認)
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