この記事のポイント
・不法就労助長罪を各業法の欠格事由に加える方針が示されている
・現時点では対象業種や欠格期間まで確定した制度ではない
・外国人雇用の確認不足が、刑事罰だけでなく事業許可にも影響する可能性がある
不法就労対策は「罰金」から「事業継続」の問題へ

出入国在留管理庁が、不法就労助長罪を業種ごとの許認可制度における「欠格事由」として追加するよう、関係省庁に提案する方針だと報じられました。
これは突然出てきた話ではありません。2026年5月に公表された「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」にも、「不法就労助長罪を各業法の欠格事由に盛り込むことを提案する」と明記されています。資料上も、実現には法改正が必要とされています。
ここでいう欠格事由とは、一定の処分歴や犯罪歴がある人について、許可を与えない、更新を認めない、場合によっては既存の許可を取り消すための要件です。
つまり、今後の制度設計によっては、不法就労助長罪で罰金刑を受けた事業者が、一定期間、その許認可事業を継続できなくなる可能性があります。
これまで不法就労の問題は、「罰金を科される」「会社名が報道される」といった刑事事件や信用問題として語られることが多かったように思います。
今回の方向性は、そこから一段進み、事業そのものを続けられるかという問題に変わりつつあることを示しています。
既に欠格事由となっている業種もある

まったく新しい考え方ではありません。
労働者派遣事業では、不法就労助長罪により罰金刑を受け、刑の執行終了などから5年を経過していない者を欠格事由とする規定があります。
有料職業紹介事業についても、同様の仕組みが設けられています。
今回検討されているのは、この考え方を外国人の不法就労が発生しやすいとされる他の許認可業種にも広げることです。
報道では、廃棄物処理、自動車リサイクル、古物営業などが例として挙げられています。ただし、現時点で対象業種や欠格期間が正式に決定したわけではありません。
各業法の所管省庁との協議や、それぞれの法律の改正が必要になります。
「古物商許可が必ず対象になる」「罰金を受ければ直ちに廃業になる」とまでは、まだ断定できません。
不法就労助長罪とは何か

不法就労助長罪は、入管法第73条の2に規定されています。
対象となるのは、単に在留期限が切れた外国人を雇った場合だけではありません。主に次のようなケースがあります。
・在留期限を過ぎた外国人や不法入国者を働かせる
・「短期滞在」など、就労できない在留資格の外国人を働かせる
・在留資格で認められた範囲を超える仕事をさせる
・留学生等を資格外活動許可の範囲を超えて働かせる
・不法就労を業としてあっせんする
現在の法定刑は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。
2027年4月1日からは、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科に引き上げられます。
さらに注意したいのは、「不法就労だとは知らなかった」という説明だけでは免責されない点です。在留カードを確認していなかったなど、知らなかったことについて過失がある場合には、処罰を免れないとされています。
在留カードが有効でも安心とは限らない

実務でよくある誤解は、「在留カードの期限が切れていなければ働かせてよい」というものです。
在留カードは重要な確認資料ですが、それだけですべてを判断できるわけではありません。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ人に、在留資格上認められない現場作業を恒常的に担当させれば、カード自体が有効でも不法就労となる可能性があります。
「特定活動」は活動内容が一律ではないため、旅券に添付された指定書の確認が必要です。「特定技能」も、許可された分野や受入れ機関との関係を確認しなければなりません。
留学生の週28時間制限についても、自社の勤務時間だけを見るのではなく、他社でのアルバイトを含めた合計時間が問題になります。
行政書士として相談を受けていると、悪意をもって不法就労させたというより、「採用時にカードを見ただけ」「以前から働いているので大丈夫だと思った」というケースの方が、現場では怖いと感じます。
なぜ規制が強化されるのか

出入国在留管理庁の統計では、2025年に退去強制手続等を執った外国人のうち、不法就労の事実が認められた人は1万3,435人でした。職種別では農業従事者と建設作業者が全体の68.8%を占めています。
ただし、統計上多い業種だけを確認すればよいわけではありません。
外国人を雇用する飲食店、宿泊施設、工場、介護事業者、運送事業者、古物商、廃棄物処理業者など、許認可と外国人雇用の両方が関係する事業では、今後の法改正による影響が特に大きくなります。
欠格事由が追加されれば、採用担当者の確認ミスが、会社の許可や経営そのものに波及しかねません。外国人雇用管理は、人事担当者だけの仕事ではなく、経営上のコンプライアンス事項になります。
企業が今から確認しておきたいこと

必要なのは、外国人を採用しないことではありません。確認を仕組みにすることです。
採用時には在留カードの原本を確認し、在留資格、就労制限、資格外活動許可の有無を記録します。そのうえで、実際に担当させる業務が在留資格の範囲に入るかを確認します。
雇用後も、在留期限、更新申請の状況、配置転換、職務内容の変更を継続的に管理する必要があります。
派遣会社や請負会社に外国人の管理を任せている場合も、「自社の直接雇用ではないから関係ない」とは考えない方がよいでしょう。
関与の態様によっては、不法就労をさせた、支配下に置いた、あっせんしたと評価される可能性があるためです。
外国人本人からカードのコピーを受け取って終わりにするのではなく、「この人が、この会社で、この仕事をしてよいのか」という視点で確認することが重要です。
規制強化と適正な外国人雇用は分けて考えたい

不法就労を意図的に利用する事業者への対応を強化することには、一定の必要性があります。
不法就労は、適正に外国人を雇用している企業との競争条件をゆがめ、外国人本人が低賃金や危険な環境に置かれる原因にもなります。
一方で、制度が複雑なまま欠格事由だけが広がれば、真面目な中小企業が外国人雇用そのものを避ける可能性もあります。
悪質な事業者と、確認手続に不備があった事業者をどのように区別するのか。対象業種、欠格期間、法人と役員への影響、既存許可の取扱いなど、今後の制度設計を冷静に確認する必要があります。
現段階では法改正前です。しかし、外国人雇用の確認不足が「担当者のミス」で済まなくなる方向は、既に明確になっています。
4. 記事末尾の整理
【結論】
不法就労助長罪を各業法の欠格事由に追加する方針は、刑事罰だけでなく事業許可にも責任を及ぼすものです。対象業種等は未確定ですが、外国人雇用管理を経営上のリスクとして見直す必要があります。
【根拠】
出入国在留管理庁は、「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」において、不法就労助長罪を各業法の欠格事由に加える提案を示しています。
入管法第73条の2の法定刑は、2027年4月1日から5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金へ引き上げられます。
【注意点・例外】
現時点では、対象となる業種、欠格期間、既存許可の取消しや更新への影響は確定していません。
在留カードが有効でも、実際の業務が在留資格の範囲外であれば不法就労となる可能性があります。
具体的な就労可否は、在留資格、指定書、職務内容、勤務時間などの個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
・出入国在留管理庁「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」2026年5月22日
・e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」第73条の2
・e-Gov法令検索「職業安定法」
・e-Gov法令検索「労働者派遣法」
・出入国在留管理庁・厚生労働省「外国人の適正な雇用にご協力ください」
・出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」
参考情報
・読売新聞オンライン「不法就労助長罪の『欠格事由』追加、入管庁が要請へ」2026年7月11
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