日本からの海外送金が初の1兆円を突破
2026年7月14日の報道によると、2025年度に日本から海外へ送られた個人送金は約1兆39億円となり、過去最大を更新しました。
2015年度は約4,700億円だったため、10年間で2倍以上に増えたことになります。送金先ではベトナムが2,887億円で最も多く、インドネシアが898億円で続いています。
テレビ朝日報道
この順位は、日本で働く外国人の構成とも重なります。
厚生労働省の最新集計では、2025年10月末時点の外国人労働者は257万1,037人で、過去最多を更新しました。国籍別ではベトナムが60万5,906人で全体の23.6%を占め、最も多くなっています。
厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ
外国人労働者数と海外送金額が同時に増えている以上、両者に一定の関係があると見ることは自然です。
ただし、ここには大切な注意点があります。
「1兆円=外国人労働者の送金」ではない

今回の報道で使われているのは、財務省と日本銀行が作成する国際収支統計の「個人間移転」に関する数字です。
日本銀行は個人間移転について、外国で働き、その国の居住者となった人が、出身国などにいる家族や親族へ送る労働者送金などを計上すると説明しています。
銀行や資金移動業者から提出される資料が統計の基礎になります。
日本銀行「国際収支関連統計 項目別の計上方法」
ここで基準になるのは国籍ではなく、「居住者と非居住者の間の取引」です。
そのため、日本に住む外国人労働者から母国の家族への送金が中心と考えられるものの、日本人を含む居住者から海外の親族等への送金も対象になり得ます。
1兆円のうち、外国人労働者による送金が具体的にいくらなのかは、公表された数字だけではわかりません。
外国人労働者の増加は重要な背景ですが、送金額の増加要因をそれだけに限定して断定することはできないということです。
母国送金は外国人が日本で働く目的の一つ

外国人本人と話をしていると、「家族に生活費を送りたい」「きょうだいの学費を負担している」「母国の住宅ローンを返したい」という話を聞くことがあります。
日本で働く理由は本人によって異なりますが、自分一人の生活だけを背負って来日しているとは限りません。
日本で受け取る給与の向こう側に、母国で暮らす家族がいることも珍しくないのです。
そのため、外国人材にとっては給与の額面だけでなく、家賃や物価を差し引いた後にいくら残り、そのお金を母国通貨に換算するといくらになるかが重要です。
円安が進めば、同じ金額を送っても母国で受け取れる価値が下がることがあります。
近年、日本で長期間働きたい外国人が減っている背景について、円安や母国の賃金上昇が指摘されるのも、このためでしょう。
企業から見ると、これは単なる個人のお金の使い方ではありません。外国人材の採用と定着に関わる問題です。
受入れ企業が確認しておきたい3つのこと

給与だけでなく「残るお金」を考える
日本人と同じ給与を設定していれば、それだけで外国人が定着するとは限りません。
住居費、光熱費、社会保険料、送金手数料などを差し引いた後に、本人がどのような生活を送れるのか。採用時に説明した手取り額と実際の手取り額に大きな差がないか。こうした点が信頼関係を左右します。
もちろん、母国への送金額まで会社が管理する必要はありません。
ただ、日本での生活費や控除項目を、本人が理解できる形で説明することは大切です。
正規の送金方法を案内する
海外送金には、銀行や金融庁に登録された資金移動業者を利用する必要があります。
知人に現金を渡して母国で家族に支払ってもらう方法や、SNSで見つけた無登録業者を利用する方法は、いわゆる「地下銀行」に該当する可能性があります。
金融庁も、登録を受けずに海外送金サービスを行う業者は違法であり、利用しないよう注意を呼びかけています。
金融庁「外国人の方の預貯金口座・送金利用について」
受入れ企業や登録支援機関が特定の送金業者を強制する必要はありませんが、正規業者の利用と、送金明細を保管する重要性は伝えてよいでしょう。
海外送金だけで在留上の問題とはならない
適法に得た給与を正規の方法で家族へ送ること自体は、在留資格上の問題ではありません。
一方、収入に比べて不自然に多額の送金がある場合や、他人の資金を集めて反復継続して送金する場合は、金融機関から送金目的や資金の原資を確認される可能性があります。
在留審査でも重要なのは、送金の有無そのものではなく、適法な就労による収入か、税金や社会保険を適切に負担しているか、在留資格に応じた活動を行っているかという点です。
個別事情により判断が分かれるため、不自然な資金移動や第三者の送金代行がある場合は、金融機関や専門家への確認が必要です。
1兆円という数字が問いかけるもの

海外送金の増加を「日本からお金が出ていく話」としてだけ捉えると、大切な部分を見落とします。
外国人労働者は、日本で働いて賃金を受け取り、税金や社会保険料、家賃、生活費を負担しています。その残りを家族へ送る行為は、日本人が離れて暮らす家族を支えることと本質的には変わりません。
1兆円という数字は、外国人雇用が一時的な人手不足対策ではなく、日本と海外の家族の生活をつなぐ社会基盤になったことを示しています。
受け入れる人数だけを増やしても、生活説明、金融サービスへのアクセス、適正な雇用管理が追いつかなければ、長く働いてもらうことは難しいでしょう。
外国人材を「労働力」としてだけでなく、家族を背負って生活する一人の人として見ること。その視点が、これからの外国人雇用には一層求められると感じます。
在留資格申請や外国人雇用は、制度上の要件だけでなく、給与、生活支援、送金方法を含めた雇用環境全体を考える必要があります。
受入れ方法や雇用管理に不安がある場合は、採用前の段階から専門家へ相談することをおすすめします。
4.記事末尾の整理
【結論】
2025年度の海外個人送金が初めて1兆円を超えた背景には、外国人労働者の増加があると考えられます。ただし、統計は送金者の国籍だけで集計したものではなく、全額を外国人労働者による送金と断定することはできません。
海外送金の拡大は、外国人材が日本の産業だけでなく、母国の家族の生活も支えていることを示しています。
【根拠】
2025年度の海外個人送金は約1兆39億円で、送金先はベトナムが最多と報じられています。
厚生労働省の集計では、外国人労働者は257万1,037人、ベトナム人労働者は60万5,906人で、いずれも過去最多です。
日本銀行は、個人間移転に労働者から海外の家族や親族への送金などを計上しています。
【注意点・例外】
海外送金をしていることだけで、違法行為や在留上の問題があるとは判断できません。
無登録業者を通じた送金や、他人から資金を集めて送金を代行する行為は、銀行法や資金決済法等に抵触する可能性があります。
送金の原資や方法に疑義がある場合は、個別事情により判断が分かれるため、金融機関や専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
参考報道
テレビ朝日「日本からの海外送金が1兆円超で過去最大」2026年7月14日
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