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TOP > コラム > 特定技能外国人の訪問介護、受入れは1.2%止まり|制度解禁後も進まない理由

特定技能外国人の訪問介護、受入れは1.2%止まり|制度解禁後も進まない理由

2026.09.14
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特定技能外国人の訪問介護、受入れはなぜ1.2%にとどまるのか

この記事のポイント

特定技能外国人は、一定の要件を満たせば訪問介護に従事できます。
ただし、在留資格「特定技能」を持っているだけで、すぐに一人で利用者宅を訪問できるわけではありません。

訪問介護には、施設介護とは別の研修、同行訪問、利用者・家族への説明、緊急時の体制、ハラスメント対策などが求められます。

制度上の扉は開きましたが、その先には事業所の受入体制という、もう一つの扉があります。

「解禁」から約1年、それでも受入れはごく一部

FNNプライムオンラインは2026年9月1日、兵庫県芦屋市の訪問介護事業所で働くインドネシア人女性を紹介しました。

女性は在留資格「特定技能」で3年前に来日し、2025年11月から訪問介護に従事しています。多い日には1日10軒ほどを訪問し、介護福祉士国家試験の合格を目指して勉強していると報じられています。

一方、同記事によれば、外国人訪問介護ヘルパーを受け入れた事業所は全体の1.2%にとどまるとのことです。
ただし、この1.2%については、記事上で調査主体、調査時点、母数の詳細が示されておらず、私が確認した範囲でも対応する一次資料を特定できませんでした。

そのため、本稿では確定した公的統計ではなく、報道で示された参考値として扱います。

数字の厳密な評価には留保が必要です。
それでも、制度が始まれば一気に受入れが広がるわけではない、という現場の空気はよく表しているように感じます。

2025年4月に何が変わったのか

従来、技能実習や特定技能の外国人介護人材は、原則として施設内の介護業務を前提としており、利用者宅で一対一となる訪問系サービスへの従事は認められていませんでした。

厚生労働省は、人材不足への対応と制度運用の蓄積を踏まえ、一定の条件の下で対象を拡大しました。
技能実習については2025年4月1日、特定技能については同年4月21日に施行されています。

ここで注意したいのは、「訪問介護という新しい在留資格ができた」のではないことです。
在留資格はあくまで特定技能1号の介護分野であり、その活動範囲に訪問系サービスが条件付きで加わった、という整理です。

本人については、介護職員初任者研修課程などを修了し、介護事業所等での実務経験が原則1年以上あることが求められます。

実務経験1年未満の場合を含め、個別事情により判断や必要措置が変わるため、専門家や関係機関への確認が必要です。

在留資格だけでは訪問に出せない

受入事業所には、利用者・家族への事前説明に加え、次の5つの対応が求められます。

  1. 訪問介護の基本、生活支援技術、日本の生活様式、緊急時対応などの研修
  2. サービス提供責任者や先輩職員による一定期間の同行訪問
  3. 本人の意向を確認した上でのキャリアアップ計画の作成
  4. 利用者や家族からのハラスメントを含む相談・権利保護体制の整備
  5. 緊急連絡、情報共有、多言語対応などICTも活用した環境整備

さらに、訪問系サービスに従事させる前に、必要書類を巡回訪問等実施機関である国際厚生事業団へ提出し、適合確認書の発行を受ける必要があります。

キャリアアップ計画は作成して終わりではなく、評価期間ごとの見直しと定期報告も必要です。

「特定技能の許可が出たから、来週から一人で訪問してもらおう」という運用はできません。入管手続と介護事業所としての受入手続を、別々ではなく一つの工程として設計する必要があります。

訪問介護の難しさは、日本語試験の点数だけでは測れない

報道では、外国人ヘルパーが日本で初めて掃除機を使い、畳の目に沿った掃除方法を覚えたことや、買い物先で指定商品が見つからない場面に対応する様子が紹介されました。

これは「外国人だから家事ができない」という話ではありません。
利用者宅ごとに異なる生活習慣や暗黙の希望を読み取り、その場で判断し、必要なら事業所へ報告する力が求められるということです。

これは日本人の新人にも難しい仕事です。
外国人職員の場合は、そこに言葉と生活文化の橋渡しが加わります。

施設であれば周囲の職員へすぐ相談できますが、訪問先では基本的に一人です。
利用者の体調変化、転倒、認知症による行動、金銭や買い物の行き違い、家族からの過度な要求など、判断を急ぐ場面もあります。

受入れが進まない理由を「日本語力不足」だけに求めると、本質を見誤ります。

1.2%は失敗の数字なのか

私は、現時点の低い割合だけを見て、制度が失敗したと評価するのは早いと思います。

訪問介護は、利用者の私生活の中に入る仕事です。安全と信頼を守るため、慎重な立ち上げが必要なのは当然でしょう。

一方で、遵守事項の確認、研修、同行人員の確保、利用者への説明、書類作成と定期報告は、小規模な訪問介護事業所ほど重い負担になります。

人が足りないから外国人材を受け入れたいのに、人が足りないため育成担当者を確保できない。
ここに制度の難しさがあります。

実務では、いきなり海外採用から考えるより、既に施設で働き、利用者対応や記録、日本語での報告に慣れた特定技能外国人の中から、本人の希望と適性を確認して訪問介護へ段階的に移す方法が現実的です。

担当する利用者を限定し、同行期間を十分に設け、困ったときに即時相談できる体制を作る。遠回りに見えても、この準備が定着への近道になります。

また、特定技能1号の在留は通算5年が原則です。長く介護分野で働いてもらうには、介護福祉士国家試験の合格と在留資格「介護」への変更まで見据えた支援が重要になります。

採用時点から5年後の姿を共有できるかどうかが、本人にも事業所にも大きな意味を持ちます。

外国人材の受入れは、採用より「一人にしない仕組み」から

訪問介護は、仕事の場面では一人になりやすい職種です。だからこそ、組織として一人にしない仕組みが必要です。

在留資格の適合性だけを確認して採用を完了と考えるのではなく、誰が教えるのか、いつ単独訪問へ移すのか、緊急時に誰が駆け付けるのか、本人が嫌なことを相談できるか、国家資格の勉強時間をどう確保するのか。こうした設計までできて初めて、制度が現場の人手不足対策になります。

外国人介護人材の訪問系サービスへの配置は、本人の資格・経験、事業所の体制、従事予定サービスによって必要な手続が異なります。

判断に迷う場合は、配置を決める前に関係機関や専門家へ確認することをおすすめします。

記事末尾の整理

【結論】

特定技能外国人は条件付きで訪問介護に従事できますが、在留資格の許可だけでは足りません。研修、同行訪問、利用者説明、権利保護、緊急対応、適合確認と定期報告を含む受入体制が必要です。制度の成否は、採用人数よりも、外国人職員を現場で孤立させない仕組みを作れるかにかかっています。

【根拠】

厚生労働省は、介護職員初任者研修課程等の修了と原則1年以上の実務経験を前提に、一定の遵守事項を満たす技能実習生・特定技能外国人の訪問系サービス従事を認めています。特定技能については2025年4月21日に施行されました。

【注意点・例外】

報道の「受入れ1.2%」は、調査主体や母数を一次資料で確認できていないため参考値です。また、実務経験1年未満の取扱い、同行期間、対象サービス、同一法人内での配置変更などは個別事情により必要な対応が変わります。専門家や国際厚生事業団などへの事前確認が必要です。

【出典】

一次情報

・厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」

・厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」

・国際厚生事業団「特定技能外国人の訪問系サービスへの従事について」

参考情報

・FNNプライムオンライン「人手不足の訪問介護を支える外国人ヘルパー」2026年9月1日


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この記事の執筆者

播磨 史雄 代表 入管取次行政書士

平成23年行政書士登録、同年開業。法人設立・補助金業務のほか、2018年より新潟県委託の外国人材受け入れサポートセンター相談員として入管業務にも従事。

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