配偶者ビザは「書類がそろえば取れる」ものではない――偽装結婚事件から考える
偽装結婚の申請に関与した疑いで、当時行政書士の男が逮捕

2026年10月1日配信の朝日新聞の記事によれば、偽装結婚をした外国人女性に在留資格を得させるため、虚偽の書類を入管へ提出したとして、申請当時に行政書士として活動していた男が逮捕されました。
報道では、結婚に至る経緯などを偽った書類をオンラインで提出し、女性は「日本人の配偶者等」として入国したとされています。
男は、違法と認識しながら報酬を得るために依頼を受けた旨を供述しているとのことです。
同じ行政書士として、この報道は重く受け止めています。
在留資格の申請は、その方の生活や家族の将来に関わる手続です。
その手続を支える立場の者が虚偽に加担したとすれば、専門家に対する信頼を損なう問題でもあります。
ただし、逮捕は有罪判決の確定を意味しません。
本記事では、ご提示いただいた報道本文に基づいて事件の概要を整理しています。
警察の発表資料やその後の処分・裁判の状況は確認できておらず、適用条文の詳細もわかりません。
婚姻届が受理されれば、在留資格も認められるのか

日本人と結婚し、婚姻の事実が戸籍に記載されている。それだけで、配偶者としての在留資格が当然に認められるわけではありません。
出入国在留管理庁は、日本人の配偶者として申請する場合の提出資料に、戸籍謄本や質問書に加え、夫婦間の交流を確認できる写真、SNS記録などを挙げています。
婚姻の届出だけでなく、二人の関係について説明する資料も求められているのです。
出入国在留管理庁
実務で大切になるのは、出会いから結婚までの経緯や、現在の交流、これからの生活について、事実に沿って説明できるかという点です。
もっとも、夫婦の歩みはそれぞれ異なります。交際期間が短い方もいれば、仕事や入国手続の都合で離れて暮らしている方もいます。
写真を撮る習慣がなく、手元の記録が少ない場合もあるでしょう。
こうした事情があるからといって、直ちに偽装結婚と決めつけることはできません。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。事情を丁寧に確認することと、疑いだけで人を見ることは、分けて考える必要があります。
「説明を整える」ことと「事実を作る」ことの境界

申請書類の作成では、記憶が曖昧な部分を整理したり、外国語の説明を日本語にしたりする作業が生じます。
例えば、出会った時期について、本人の記憶とメッセージの履歴にずれがあれば、記録を確認して正確な内容に直す。長い説明を、審査する側が理解しやすい順番に並べる。こうした作業は、事実を伝えるための支援です。
一方、実際には会っていないのに会ったことにする、存在しない交際の経緯を書く、暮らしていない住所で同居していると説明する。これは文章を整える範囲を超えています。
資料が少ないときに必要なのは、足りない事実を作ることではありません。
残っている記録を探し、確認できる範囲と確認できない範囲を分けて説明することです。
行政書士として、申請者の事情を十分に伝えたいという思いはあります。
しかし、その思いが強くても、事実を変えてよい理由にはなりません。
説明しにくい事情ほど、書き換えるのではなく、正面から向き合う必要があります。
行政書士に求められるのは、提出までの作業だけではない

行政書士法第10条は、行政書士に対し、品位を保持し、公正かつ誠実に業務を行うことを求めています。依頼された書類を作成する場面でも、この義務が土台になります。
e-Gov 法令検索
第三者から紹介された案件であっても、その第三者の説明だけに依存せず、申請者や配偶者に確認することが大切です。
本人が知らない内容が質問書に書かれていたり、資料同士に説明できない食い違いがあったりするなら、提出前に立ち止まる必要があります。
もちろん、紹介者がいること自体に問題があるわけではありません。問題は、誰が紹介したかよりも、事実を誰に、どのように確認したかです。
虚偽とわかっている内容について、依頼されたから、報酬を受け取ったからという理由で提出することは許されません。
確認しても疑問が解消されない場合には、受任や提出を見合わせる判断も必要だと考えています。
専門家の仕事には、進める判断だけでなく、止める判断も含まれます。
申請者も、提出する内容を確認してほしい

専門家に依頼すると、難しい書類は任せたいと思うのが自然です。
それでも、自分たちの結婚について何が記載されているかは、確認していただきたいところです。
出会った場所、交際の経緯、家族への紹介、現在の生活状況。読んでみて「これは違う」と感じる部分があれば、そのまま提出せず、修正を求めてください。
日本語が十分に理解できない場合は、理解できる言語で説明を受けることも大切です。内容を知らないまま署名したり、「許可のために必要だから」と事実と異なる記載を受け入れたりしないでください。
入管庁は、偽りその他不正の手段で上陸許可等を受けた場合などを、在留資格取消制度の対象として説明しています。一度許可を得ても、不正が問題にならなくなるわけではありません。
出入国在留管理庁
ただし、今回報道された女性にどのような処分が行われるかはわかりません。
虚偽への関与や具体的な経緯などによって判断が変わるため、報道だけで結論を決めることは避けるべきです。
本当の事情を説明できる申請を支えるために

今回の報道を受け、国際結婚や配偶者の在留資格申請に不安を感じた方もいるかもしれません。
しかし、この事件をもって、国際結婚全般を疑う見方につなげることは適切ではありません。
真実の婚姻であっても、事情を文章で伝えるのは簡単ではないものです。
二人にとって当たり前の出来事が、書類を読む人には伝わらないこともあります。
その間を埋めるのが、行政書士の役割だと考えています。
許可されそうな物語を作るのではなく、実際の歩みを確認し、必要な資料とともに伝える。
その積み重ねが、申請者の生活と制度への信頼を支えます。
Asocia行政書士法務事務所では、配偶者の在留資格申請について、実際のご事情を確認したうえで書類の整理をお手伝いしています。
交際経緯の説明や提出資料に迷う場合は、申請前にご相談ください。
4.記事末尾の整理
【結論】
配偶者の在留資格申請では、書類の形式を整えるだけでなく、真実の事情を正確に伝えることが重要です。行政書士への依頼後も、申請者自身が提出内容を確認することが大切です。
【根拠】
入管庁の提出書類案内では、質問書や夫婦間の交流資料が求められています。また、入管法第22条の4には在留資格取消制度があり、行政書士法第10条には公正かつ誠実に業務を行う義務が定められています。
【注意点・例外】
交際期間の短さ、別居、写真の少なさだけで偽装結婚と断定することはできません。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。今回の事件の有罪・無罪や具体的な処分は未確認です。
【出典】
一次情報:
参考情報:
朝日新聞「偽装結婚の女性の在留資格を虚偽申請か 当時行政書士の男を逮捕」
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ビザ新潟ちゃんねる
以上、新潟市のビザ専門行政書士事務所、Asocia行政書士法務事務所でした。
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