経営・管理ビザの厳格化で「街の店」が消えるのか
「街からカレー店が消えるかもしれない」
こういう言葉は、少し強すぎる見出しにも見えます。けれど、現場で相談を受けていると、あながち大げさとも言い切れません。
2025年10月16日に在留資格「経営・管理」の許可基準が改正され、資本金等の規模、常勤職員の確保、日本語能力の立証などが大きく見直されました。
出入国在留管理庁は、改正後の主な基準として、事業規模を3,000万円以上とすること、常勤職員を1名以上置くこと、申請者または常勤職員のいずれかが相当程度の日本語能力を有することを示しています。日本語能力の目安はB2相当で、JLPTならN2以上などが例示されています。
報道で見えたのは、制度論ではなく生活の話だった
今回の報道では、ネパール出身のカレー店経営者や、練馬区の香港粥専門店「3米3」の事例が取り上げられていました。
地元で愛され、実際に営業実態もある店であっても、資本金3,000万円や常勤職員要件が重くのしかかり、閉店や将来不安に直結している。
これは、単なる制度論ではなく、生活と地域の風景の話です。
店が一つなくなるというのは、数字の話ではありません。
そこに通っていた人の記憶や、日々の習慣や、街の小さな楽しみが消えるということでもあります。報道を見ながら、そこは軽く受け止めてはいけないと感じました。
なぜここまで厳格化されたのか

背景には制度悪用への対応がある
ただ、ここで大事なのは、感情だけで制度を語らないことだと思います。今回の厳格化には理由があります。
法務省・出入国在留管理庁は、「経営・管理」は実質的に事業の経営または管理に参画する活動であることが前提であり、事業所の存在、事業規模、継続性、法令遵守を審査すると整理しています。
背景には、経営実態の乏しい法人や、移住手段としての悪用が問題視されてきた事情があります。報道でも、経営・管理在留者が増加する中で、ペーパーカンパニー的な利用が指摘されてきました。
厳格化そのものを一概に否定はできない
私は、この厳格化そのものを一概に否定すべきではないと思っています。
実態のない会社や、経営者という名目だけで在留するケースまで広く許してしまえば、まじめに店を続けてきた人ほど割を食うからです。
制度が緩すぎると、最後に困るのは正直な申請人です。そこは見落とせません。
小規模飲食店には何が厳しいのか
3000万円という数字の重さ
一方で、今回の制度設計には、現場感覚としてかなり荒い部分もあります。
とくに小規模飲食店です。飲食店は、地域密着で利益を積み上げる業態です。開業してすぐ3,000万円規模の資本を積める事業ばかりではありません。
改装費や設備投資に現金を使っていても、それがそのまま「資本金」と一致するわけでもない。
記事中の経営者が語っていた違和感は、ここにあります。店は存在し、客もつき、売上もある。それでも基準の入口で苦しくなる。制度が見ている「経営の実態」と、書類上の「事業規模」が、きれいに重ならない場面があるのです。
出入国在留管理庁は、法人なら払込済資本の額や出資総額、個人事業なら事業所確保や1年分の給与、設備投資経費など事業に必要な投下総額で確認するとしています。
常勤職員要件も現実には簡単ではない
もう一つ重いのが、常勤職員の確保です。募集を出せばすぐ決まるとは限らない。採用できても長く続くかは別の話です。しかも、小規模店では人件費の負担が経営に直結します。
「要件だから雇えばいい」というほど単純ではありません。
とくに地方や小規模店舗では、この条件はかなり現実離れして見えることがあります。
既存の経営・管理ビザ保有者はすぐ不許可になるのか
経過措置はある
ここは誤解されやすい点です。
今回の改正は、既存の経営・管理ビザ保有者が即座に全員アウトになるという話ではありません。
出入国在留管理庁は、すでに「経営・管理」で在留している人について、施行日から3年を経過する日、つまり令和10年10月16日までの更新申請では、改正後の基準に適合しない場合でも、経営状況や新基準に適合する見込みなどを踏まえて許否判断を行うとしています。
その後は「総合考慮」が鍵になる

令和10年10月16日以降の更新は、原則として改正後基準への適合が必要です。ただし、なお総合考慮の余地があるとも示されています。
この「総合的に考慮する」という表現が、救いにもなり、不安材料にもなります。
実際に営業していて、納税もきちんとし、法人運営も適正で、将来の基準適合に向けた計画があれば、直ちに切られるわけではないという意味では救いがあります。
ただ、どこまでいけば「見込みあり」と評価されるのかは事案ごとで、かなり読みづらい。ここは正直、公開資料だけで断言できません。専門家に確認が必要です。
これから既存オーナーが考えるべきこと

私は、外国人オーナー飲食店の問題を「かわいそう」で終わらせるのも、「厳しくして当然」で切るのも、どちらも雑だと思っています。
本当に見るべきなのは、その店に経営実態があるか、地域に根を下ろしているか、法令を守っているか、そして将来に向けて持続可能な形を作れるかです。そこを丁寧に見ないと、悪質な案件を止めるはずの制度が、先に真面目な店を傷つけかねません。
更新前に整理しておきたい実務ポイント

既存オーナーであれば、次回更新のかなり前から次の点を整理しておく必要があります。
・資本政策の見直し
・常勤職員確保の見通し
・納税状況、社会保険加入状況の確認
・帳簿、決算書、売上資料の整備
・営業許可、賃貸借契約など事業実態資料の整理
・今後の改善計画の文書化
赤字であっても即不許可とは限りません。出入国在留管理庁は、事業継続性を単年度ではなく、貸借状況や今後の見込みも含めて総合判断すると示しています。
だからこそ、悪い数字があるなら、その理由と改善計画を先回りして説明する姿勢が重要になります。
地域に愛される店をどう残すのか

飲食店は、数字だけでは測れないものがあります。近所の人が体調の悪い日に食べに来るお粥の店。子どもがナンをちぎって食べるカレー屋。そういう店は、売上表の向こう側に地域の記憶を持っています。
私はそこを軽く見たくない。
制度の厳格化は必要だったと思います。けれど、実態ある小規模事業者まで無言で押し流していいわけではない。その間をどう埋めるか。そこがこれからの入管実務で問われるところだと思います。
街からカレー店が本当に消えるかは、まだわかりません。
そこまで一気に進むとは現時点では断言できません。ただ、何もしなければ、じわじわ減る可能性は十分ある。そんな気がしています。
まとめ
結論
経営・管理ビザの厳格化は、制度悪用対策としては一定の合理性があります。
ただし、実態ある小規模飲食店にとっては資本金3,000万円や常勤職員要件が非常に重く、既存店の継続にも現実的な影響が出ています。
既存保有者には令和10年10月16日まで経過的な配慮がありますが、その先を見据えた準備が不可欠です。
根拠
2025年10月16日施行の改正で、経営・管理の許可基準は、3,000万円以上の事業規模、常勤職員1名以上、日本語能力B2相当等へ見直されました。
常勤職員の範囲や資本金等の確認方法、日本語能力の立証方法も出入国在留管理庁がQ&Aで具体化しています。
既存保有者の更新については、令和10年10月16日までの申請であれば、改正基準に未達でも経営状況や適合見込みを踏まえた判断をすると公表されています。
注意点・例外
「3,000万円なければ必ず不許可」とまでは公開資料上いえません。
既存保有者には経過措置があり、施行後3年経過後も、経営状況が良好で納税義務を適切に履行し、次回更新までに新基準を満たす見込みがある場合などは、総合考慮の余地が示されています。
もっとも、個別事案でどの程度認められるかは公開資料だけでは読み切れず、専門家に確認が必要です。
出典
・出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
・出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』」
・出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」
・FNNプライムオンライン「『街からカレー店消えるかも』経営・管理ビザの要件厳格化で外国人オーナー苦悩」
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