外国人ドライバー雇用は人手不足の切り札か|特定技能「自動車運送業」の5つの現実
2026年7月15日、Business+IT(Seizo Trend)は、外国人トラックドライバーをめぐり、採用・教育・定着にかかる企業負担や、制度だけでは構造的な人手不足を解消できない可能性を取り上げました。
物流業界の人手不足が深刻化する中、外国人ドライバーへの期待は確実に高まっています。
政府が2029年3月末までに見込む自動車運送業分野の特定技能1号の受入人数も、2万2,100人とされています。
ただし、結論から申し上げると、外国人ドライバーは「採用すればすぐに人手不足が解消する人材」ではありません。
日本の運転免許の取得、日本語教育、安全教育、生活支援、社内の受入体制まで整えて、初めて安定した雇用につながります。
今回は、特定技能「自動車運送業」の最新制度と、運送会社が採用前に確認すべき実務上のポイントを解説します。
特定技能「自動車運送業」とは

自動車運送業分野では、特定技能1号により、次の3区分で外国人を受け入れることができます。
| 区分 | 主な業務 | 日本語能力 | 必要な日本の免許等 | 準備のための特定活動期間 |
|---|---|---|---|---|
| トラック | 運行業務、荷役業務等 | 原則A2.2相当(JLPT N4・JFT-Basic等) | 第一種運転免許 | 最長6か月・更新不可 |
| バス | 運行業務、接遇業務等 | 原則B1相当(JLPT N3等) | 第二種運転免許、新任運転者研修 | 最長1年・更新不可 |
| タクシー | 運行業務、接遇業務等 | 原則B1相当(JLPT N3等) | 第二種運転免許、新任運転者研修 | 最長1年・更新不可 |
乗合バスやタクシーについては、日本語サポーターの同乗など一定の条件を満たす場合に、A2.2相当でも認められる例外があります。
外国人本人には、日本語試験、分野別の特定技能1号評価試験、日本の運転免許が必要です。受入れ企業にも、自動車運送業分野特定技能協議会への加入、「働きやすい職場認証」またはトラック分野のGマーク認定などが求められます。
つまり、在留資格の申請だけで完結する制度ではありません。
注意点|自動車運送業は現在「育成就労」の対象外

最近の外国人雇用に関する説明では、2027年4月に始まる育成就労制度から特定技能1号、さらに特定技能2号へ進むキャリアが紹介されることがあります。
しかし、2026年7月16日現在、自動車運送業は「特定産業分野」ではあるものの、「育成就労産業分野」には設定されていません。また、自動車運送業は特定技能2号の対象分野にも含まれていません。
したがって、現時点では「育成就労で未経験者を受け入れ、そのまま特定技能2号まで育成する」という流れを当然の前提にすることはできません。
海外在住者が日本の運転免許を持っていない場合は、一般に「特定活動55号(特定自動車運送業準備)」で来日し、所定期間内に免許取得等を終えた後、特定技能1号へ変更する流れになります。
この点は、採用計画や長期的な人材育成を考える上で非常に重要です。
外国人ドライバー雇用で見落としやすい5つの現実

1.日本の運転免許を取得できるとは限らない
海外在住の候補者は、特定技能評価試験と日本語試験に合格して来日しても、日本の運転免許を取得するまではドライバーとして乗務できません。
さらに、外免切替は2025年10月から厳格化されました。知識確認は10問から50問へ増え、合格基準も7割から9割へ引き上げられ、技能確認の審査項目も追加されています。
トラックは最長6か月、バス・タクシーは最長1年の特定活動期間内に免許を取得できなければ、特定技能1号へ移行できません。
特定活動期間の延長も認められていないため、採用段階で運転歴、外国免許の有効性、必要書類、教習所や試験場の予約状況まで確認する必要があります。
2.N4やN3の合格だけでは安全運行を保証できない
ドライバーには、荷主や乗客との会話だけでなく、運行指示、道路標識、事故時の110番・119番通報、警察や保険会社への状況説明などが求められます。
国土交通省が公表した受入事例でも、N2相当の人材であっても日本語のニュアンスに課題があり、理解度を再確認する工夫が必要とされています。
N4相当の人材には、短く分かりやすい日本語で指示する、安全確認を復唱させるなどの対応が行われています。
試験合格はあくまで入口です。多言語の事故対応表、緊急連絡先、写真付き作業手順書、やさしい日本語による運行指示など、現場で安全を守る仕組みが欠かせません。
3.採用しても、すぐに乗務開始できるわけではない
特定活動55号で来日する場合、免許取得や研修の期間中から、住居、教習費用、通訳、日本語教育、生活支援に加え、雇用契約に基づく人件費も見込む必要があります。
免許取得後も、初任運転者教育、同乗指導、社内検定などを経て、一人で安全に乗務できる状態まで育成しなければなりません。
実際の受入企業では、通常より長い教育期間を設けたり、運行管理者と通訳担当者を含む複数名体制で指導したりしています。
「採用人数」ではなく、「単独乗務が可能になるまでの期間と総費用」で計画を立てることが重要です。
4.在留資格以外の受入要件も多い
特定技能外国人との雇用契約では、同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬が必要です。
また、受入れ企業には、生活オリエンテーション、住居確保、相談対応、日本語学習機会の提供などを含む支援計画の実施が求められます。
加えて、自動車運送業分野では協議会への加入や職場環境に関する認証も必要です。運転免許、在留資格、労務管理、安全管理、生活支援のいずれか一つでも準備が遅れると、採用全体のスケジュールに影響します。
5.長期雇用の出口がまだ十分ではない
自動車運送業で認められているのは、現在のところ特定技能1号のみです。
在留期間は原則として通算5年で、相当の理由が認められる場合に6年までとなり、家族帯同も基本的には認められません。
会社が時間と費用をかけて大型免許の取得や安全教育を行っても、現行制度のままでは無期限に雇用できるとは限りません。
そのため、採用時から昇給、大型免許へのステップアップ、役割の拡大、将来の在留資格の可能性などを本人と共有し、制度改正も継続的に確認する必要があります。
成功する企業は、採用前に「受入設計」をしている

外国人ドライバーの採用を検討する企業は、少なくとも次の事項を事前に整理しておく必要があります。
- 外国人を配置する車種、運行ルート、勤務時間、荷役内容
- 候補者の運転歴、外国免許、必要な証明書の取得可否
- 特定活動期間内に免許を取得するための具体的な日程
- 日本語教育、同乗教育、安全教育を担当する社内人材
- 事故や車両故障が発生した際の多言語対応
- 登録支援機関と受入企業の役割・費用分担
- 昇給や免許区分の拡大を含む中長期のキャリア計画
外国人材の採用は、日本人採用の代替ではなく、会社全体の採用・教育・定着の仕組みを見直す機会と考えるべきです。
日本人ドライバーが定着しない労働環境のまま、外国人だけが長く働き続けてくれるとは考えにくいからです。
まとめ

特定技能の外国人ドライバーは、物流や地域交通を支える重要な人材となる可能性があります。
一方で、制度を「安価な即戦力の確保」と捉えると、免許取得、日本語、安全教育、支援、定着の各段階で行き詰まる可能性があります。
大切なのは、採用を決めてから制度を調べるのではなく、候補者の選定前に受入要件と育成計画を確認することです。
Asocia行政書士法務事務所では、特定技能外国人の在留資格申請、受入要件の確認、登録支援機関としての支援体制についてご相談を承っております。
外国人ドライバーの採用を検討されている企業様は、計画段階からご相談ください。
※本記事は2026年7月16日時点の公表資料に基づいて作成しています。今後の法令改正や運用変更により、取扱いが変わる場合があります。
参考資料
- 外国人トラックドライバー雇用の課題を取り上げた報道(Seizo Trend)
- 自動車運送業分野における特定技能外国人の受入れについて(国土交通省)
- 自動車運送業分野・特定技能Q&A(国土交通省)
- 特定技能制度の基本方針・分野別運用方針(出入国在留管理庁)
- 外国人労働者に関する制度概要(出入国在留管理庁)
- 外国人ドライバーの受入事例(国土交通省)
- 令和8年度交通安全業務計画(国家公安委員会)
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以上、新潟市のビザ専門行政書士事務所、Asocia行政書士法務事務所でした。
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