外国人政策の厳格化は、どこまで進んでいるのか
時事通信は8月13日、高市政権が永住許可、帰化、在留手続の手数料、外国人の受入人数など、外国人政策全体の厳格化を進めていると報じました。
報道に添えられた図解を見ると、すべての変更が既に決定し、間もなく一斉に始まるようにも見えます。
ただし、8月13日現在、実際の状況は「既に始まった運用」「政令案」「ガイドライン改定案」「検討中の政策」が混在しています。
この違いは非常に重要です。
| 論点 | 2026年8月13日現在の状況 |
|---|---|
| 永住許可の年収・年金 | ガイドライン改定案。意見募集は9月3日まで |
| 永住許可手数料20万円 | 政令案。10月1日施行予定 |
| 帰化の原則10年在留 | 4月から審査運用が変更。ただし国籍法の「5年以上」は改正されていない |
| 外国人の量的マネジメント | 有識者会議で検討中。受入上限は未決定 |
「厳格化が決まった」という大きな括りだけで見るのではなく、何が決まり、何がまだ案なのかを冷静に確認する必要があります。
永住許可は「年収」だけの問題ではない

出入国在留管理庁が8月4日に公表した永住許可ガイドライン改定案では、独立生計要件について、申請者が属する世帯の年収が「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」に継続して達しているかを考慮するとしています。
ここで注意したいのは、全国一律の「年収○万円」という数字が示されたわけではないことです。
世帯人数、同一生計者の収入、扶養親族などによって判断が変わります。
家族滞在など、就労を本来の目的としない在留資格を持つ家族の収入は、原則として世帯年収に算入しない一方、外国に住む扶養親族も世帯人数に加算されます。
扶養親族を5人以上抱える場合には、必要となる年収水準に生活費等の増加分を加える仕組みです。
年金についても、現在の加入状況と年収から推計した将来の受給見込額が、日本人世帯の平均を上回る年収で30年間厚生年金に加入した場合の水準に達しているかを考慮します。
ただし、不足分を補える金融資産があれば、それも評価対象となります。
いずれもガイドライン上は「考慮要素」とされており、数字に届かなければ機械的に不許可になるとまでは書かれていません。とはいえ、実際の審査では非常に重い要素になると考えられます。
さらに改定案には、日本語能力B1相当、制度やルールの理解、学齢期の子どもの就学、最長の在留期間を持っていることなども盛り込まれています。
今回の見直しは、年収だけの話ではありません。
既に申請している人にも影響する可能性がある

改定案全体は、原則として2027年4月1日以降の申請から適用するとされています。
例外として、年収と「公共の負担とならないこと」に関する部分は、改定日の6か月前以降に申請され、改定日に審査中である案件にも適用する案です。
仮に改定日が2026年10月1日となれば、同年4月1日以降に申請し、10月1日時点でも審査中の案件が対象となる可能性があります。
ただし、現時点ではパブリックコメント中の改定案です。最終的な改定日や適用方法が確定したわけではありません。
日本人、永住者または特別永住者の配偶者や子については、入管法上、素行善良要件と独立生計要件への適合は求められていません。
そのため、すべての永住申請者に同じ年収基準が一律適用されるという理解も正確ではありません。
もっとも、改定案では「公共の負担となっているか」を国益要件の中で考慮するとしています。
家族の安定や人道的事情も含め、個別に総合判断される構造です。
永住許可手数料は1万円から20万円へ

現在、永住許可を受ける際の手数料は1万円です。政府が示した政令案の資料では、これを20万円に引き上げ、2026年10月1日から施行する予定とされています。
これは申請時に支払うものではなく、永住が許可された際に納付する手数料です。
それでも20倍という引き上げ幅は大きく、夫婦や家族で申請する場合には相当な負担になります。手数料を行政コストに見合う水準にするという説明は理解できますが、20万円という金額が妥当なのかは、もう少し丁寧な説明が必要ではないでしょうか。
帰化の「10年」は法律改正ではない

報道では、帰化に必要な在留期間が「5年以上から原則10年以上に延長された」と説明されています。
正確には、国籍法第5条が定める「引き続き5年以上日本に住所を有すること」という住所要件は改正されていません。
2026年4月から、「日本社会に融和していること」の審査において、原則10年以上の在留を求める運用が始まったという位置付けです。法務大臣記者会見でも、そのように説明されています。
法律上の要件と、行政内部の審査運用は区別して考えなければなりません。
厳しくするだけで「秩序ある共生」になるのか

2025年末の在留外国人数は412万5,395人となり、過去最多を更新しました。出入国在留管理庁の統計で確認できる事実です。
一方、この数字だけで、外国人による制度の不適正利用が一律に増えていると結論付けることはできません。
税金や社会保険料を故意に支払わない人、不正な申請をする人、在留資格で認められていない活動をする人に厳正に対応することは必要です。ルールを守って生活している人が不利益を受けないためにも、適正な在留管理は欠かせません。
私が気になるのは、誠実に働き、納税し、家族と生活してきた人まで、制度変更のスピードに振り回されることです。
外国人にとって永住は、単なる在留カードの種類ではありません。
住宅購入、子どもの教育、転職、老後設計など、日本での生活を長期的に組み立てる土台になります。申請後に基準が変わる可能性がある制度では、将来を預けることに不安を感じるのも無理はありません。
「厳格な国」と「外国人に選ばれる国」は、必ずしも矛盾しません。
必要なのは、基準の明確さ、変更までの十分な準備期間、個別事情を考慮する仕組み、そして国民と外国人の双方が納得できる説明です。
厳しさだけが先に立てば、「働き手としては来てほしいが、生活の基盤を築くことは歓迎しない」というメッセージとして受け取られかねません。
外国人政策は、外国人だけの問題ではありません。
外国人を雇用する企業、学校、医療・介護、地域社会、そして人口減少が続く日本全体の問題です。受入れを管理する議論と同時に、既に日本で暮らしている人との信頼をどう守るかも議論してほしいと感じています。
永住許可申請や外国人雇用への影響は、申請日、在留資格、世帯構成、扶養人数、収入、年金加入状況などによって異なります。
個別事情により判断が分かれるため、申請時期を含めて早めに専門家へ確認することをおすすめします。
記事末尾の整理
【結論】
外国人政策の厳格化は進んでいますが、永住ガイドラインや手数料には未確定部分があります。適正化の必要性と、日本が外国人材に選ばれるための予測可能性を両立させる視点が必要です。
【根拠】
入管法第22条、永住許可に関するガイドライン改定案、手数料改定に関する政令案、国籍法第5条、出入国在留管理庁の在留外国人統計を根拠としています。
【注意点・例外】
永住ガイドラインは意見募集段階であり、内容や適用時期が変わる可能性があります。日本人、永住者または特別永住者の配偶者・子には、独立生計要件等の法律上の例外があります。帰化の10年在留は国籍法の改正ではなく、審査運用上の取扱いです。
【出典】
一次情報
- e-Gov「永住許可に関するガイドライン改定案に係る意見募集」
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン改定案」
- e-Gov「在留許可手数料の額及び減額又は免除の対象者等について」
- 法務省「国籍法」
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数」
参考情報
時事通信「外国人政策の厳格化加速 高市政権『永住』厳しく―『選ばれぬ国に』懸念の声」2026年8月13日
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