インド高度外国人材の採用が本格化へ|半導体・ITエンジニアと在留資格の実務
この記事のポイント
・ジェトロがインドの大学や半導体人材と日本企業をつなぐ事業を相次いで公表
・「高度外国人材」という呼び方と、在留資格「高度専門職」は同じ意味ではない
・海外採用では、内定後ではなく職務設計の段階から在留資格を確認する必要がある
インドの理工系人材と日本企業を直接つなぐ動き

2026年7月14日、ジェトロの高度外国人材活躍推進ポータルに、インド人材に関する複数の事業が掲載されました。
一つは、インド工科大学ボンベイ校で開催される「Japan Day 2026」です。
日本企業が現地を訪れ、学生に自社や求める人材像を説明し、個別に交流する就職説明会が予定されています。
もう一つは、インド南部のチェンナイ工科大学との連携です。
同大学には6,000人を超える学生が在籍し、情報、機械、電気電子分野を中心に実践的な教育が行われています。
日本語教育にも力を入れており、日本企業への就職に関心を持つ学生も増えているとされています。
さらに、ジェトロはインドの半導体設計企業や大学を訪問するミッションも実施します。ジェトロによれば、世界の半導体デザインエンジニアの約20%がインドに在籍しており、インドは半導体の製造拠点というより、設計開発人材の層の厚さに強みを持つ国です。
単発の採用イベントというより、日本企業が「国内で応募を待つ採用」から「海外の大学や人材市場へ直接出向く採用」へ移り始めた動きと見るべきでしょう。
背景には日印間の大きな人材交流目標がある

この動きは、ジェトロだけの独立した取組ではありません。
2025年の日印首脳会談を受けて策定された「日印人材交流・協力アクションプラン」では、今後5年間で50万人以上の双方向交流を目指し、そのうちインドから日本へ5万人の熟練人材・将来性のある人材を迎える目標が示されています。
外務省の資料では、日本は2030年に高度・先端IT人材が最大79万人不足する可能性がある一方、インドでは工学系の学生が毎年約150万人卒業すると整理されています。
日本の人手不足というと、特定技能や育成就労が注目されがちです。
ただ、今回の中心は半導体設計、IT、機械、電気電子などの専門人材です。
受入れの目的も、単なる欠員補充ではありません。
技術開発、研究、海外展開、社内の国際化まで見据えた人材獲得です。
「高度外国人材」と「高度専門職」は別の言葉

実務上、最も注意したいのが言葉の使い方です。
ジェトロなどが用いる「高度外国人材」は、一般に専門的な知識や技術を持つ外国人を広く指します。これに対し、「高度専門職」は入管法上の正式な在留資格です。
インドの大学から半導体・ITエンジニアを採用したからといって、当然に「高度専門職」になるわけではありません。
企業でシステム開発、半導体設計、機械設計などに従事する場合、まず想定されるのは在留資格「技術・人文知識・国際業務」です。大学等で学んだ専攻と日本で担当する業務との関連性、専門性、雇用契約、報酬額などが審査されます。
一方、学歴、職歴、年収、年齢などによるポイントが70点以上となり、就労資格の要件も満たす場合には「高度専門職1号」の対象になり得ます。一定の学歴・職歴と高い年収要件を満たせば、ポイント計算によらないJ-Skipの可能性もあります。
つまり、会社が「高度人材として採用した」という評価と、入管法上の在留資格は分けて検討しなければなりません。
海外直接採用では職務内容を先に固める

海外にいる人材を新たに採用する場合、一般には日本側で在留資格認定証明書、いわゆるCOEの交付申請を行い、その後、本人が在外公館で査証を取得して来日します。
ここでありがちな失敗は、採用を先に決め、申請段階になってから仕事内容を考えることです。
例えば「エンジニア採用」と求人票に書かれていても、実際の配属後の業務が製造ラインでの単純作業を中心とする場合、技術・人文知識・国際業務の該当性が問題になります。
反対に、回路設計、組込みシステム開発、品質解析、研究開発など、専門知識を必要とする職務が具体的に示されていれば、大学での専攻との関連性を説明しやすくなります。
採用前には、少なくとも次の点を整理しておきたいところです。
・大学での専攻科目、学位、卒業証明書、成績証明書
・配属部署と具体的な担当業務
・日本人社員と比較した報酬の妥当性
・社内で使用する言語と日本語教育の必要性
・住居、生活立上げ、家族帯同への支援体制
インターンシップの場合も注意が必要です。報酬の有無、期間、大学の教育課程との関係、実際の活動内容によって必要な在留資格や手続が変わります。
「インターン」という名称だけで短期滞在や無許可就労が認められるわけではありません。
採用競争は「入国後の定着」まで続く

個人的には、今回のニュースで重要なのは、採用ルートが増えること以上に、日本企業が選ばれる側になる点だと感じます。
優秀な半導体・IT人材は、日本だけを見ているわけではありません。
給与、キャリア形成、英語で働ける環境、家族の生活、日本企業の意思決定の速さなどを他国と比較します。
在留資格が許可されれば採用成功、という話ではないのです。専門性に見合わない業務へ配属したり、昇進の道筋が見えなかったりすれば、短期間で転職や帰国を選ぶ可能性があります。
海外採用の入口はCOEですが、定着の入口は入社後の職務設計です。
両方を一つの計画として考える企業ほど、これからの高度外国人材採用では強くなるでしょう。
在留資格申請や外国人採用は、学歴だけでなく、実際の職務内容や雇用条件によって結論が変わります。
海外からの直接採用を検討する場合は、内定を出す前の段階から専門家へ確認することをおすすめします。
4.記事末尾の整理
【結論】
日本企業とインドの理工系・半導体人材を直接つなぐ動きが本格化しています。ただし、「高度外国人材」として採用することと、在留資格「高度専門職」が許可されることは別問題です。職務内容、学歴、報酬、ポイント要件を個別に確認する必要があります。
【根拠】
・ジェトロが2026年7月14日にインド高度人材関連事業を相次いで掲載
・日印人材交流・協力アクションプランで、5年間に50万人以上、うちインドから日本へ5万人の人材交流を目標化
・技術・人文知識・国際業務は、専門的業務、学歴・専攻との関連性、契約、報酬等を審査
・高度専門職は、原則としてポイント計算で70点以上が必要
【注意点・例外】
企業の研究内容や雇用形態によっては、「研究」など別の在留資格が検討対象になる場合があります。インターンシップも、期間、報酬、活動内容によって手続が異なります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
・ジェトロ「インド・半導体設計企業・人材交流ミッション」
・ジェトロ「インド工科大学ボンベイ校 Japan Day 2026」
・ジェトロ「チェンナイ工科大学の紹介」
・外務省「日印人材交流・協力アクションプラン」
・出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」
・出入国在留管理庁「高度人材ポイント制とは」
・出入国在留管理庁「特別高度人材制度(J-Skip)」
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