永住外国人の生活保護受給率は1.96%
出入国在留管理庁は2026年8月4日、永住許可に関するガイドライン改定案を公表しました。
同日の産経新聞報道によれば、2025年末の永住者約94万7,000人のうち約7%を対象に調査したところ、生活保護の受給率は約1.96%だったとのことです。
厚生労働省の「被保護者調査(令和6年度確定値)」では、2024年度の全国の保護率は1.62%です。
入管庁は単純比較できないとしながらも、永住審査を経た人の受給率が国内全体と同水準にあることを問題視し、独立生計要件などの見直しにつなげています。
ただ、この数字は少し丁寧に読む必要があります。
「日本人と同じ受給率」という調査ではない

まず、比較対象の1.62%は「日本人だけの受給率」ではなく、総人口を分母とした全国全体の保護率です。
1.96%と1.62%の差は0.34ポイントで、比率にすると約1.21倍になります。
同一とも、極端に高いとも、この二つの数字だけでは言い切れません。
さらに、永住者側は約7%の抽出調査です。抽出方法、年齢構成、居住地域、永住許可からの経過年数、受給に至った理由などの詳細は、現時点で公表資料からはわかりません。
生活保護の受給率は高齢化率や単身世帯の割合、病気・障害、地域差にも影響されます。
属性をそろえない比較から「外国人は生活保護を多く受けている」と結論づけるのは適切ではありません。
反対に、問題が全くないと断定できる資料でもありません。
今回わかるのは、調査対象となった永住者のうち1.96%が受給していた、というところまでです。
受給率だけで「過去の審査が機能していない」と言えるのか

私が少し引っかかるのは、現在の生活保護受給という結果が、そのまま過去の永住審査の不十分さと結び付けられている点です。
永住許可では、申請時点の収入や資産、家族状況、それまでの在留実績から、将来も安定した生活が見込まれるかを審査します。
しかし、永住許可後に病気になることも、勤務先が倒産することも、家族との死別や離婚、介護によって働けなくなることもあります。
十数年前の許可時に十分な収入があった人が、その後に生活保護を必要とすることはあり得ます。
審査が機能していたかを検証するなら、許可時の収入、受給開始までの期間、年齢、疾病、世帯構成などを追跡して見る必要があります。
現在の受給率という一枚の写真だけで、過去の審査全体を評価するのは難しいと考えます。
ガイドライン改定案は何を変えるのか

改定案は、単なる年収基準の引上げにとどまりません。
現在から老後までの自立可能性と、日本社会への適応を広く確認する内容です。
年収と年金を世帯単位で審査
世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に、世帯年収が継続して達しているかを考慮します。
海外居住者を含む扶養親族も世帯人数に加えられ、家族滞在者が資格外活動で得た収入は原則として世帯年収に合算されません。
年金についても、年収水準で30年間厚生年金に加入した場合の受給見込額に達するかを確認し、不足する場合は金融資産で補えるかを見ます。
ただし、具体的な年収額、年金額、必要な金融資産額は、改定案には示されていません。現時点では「いくらあれば許可される」と断定できません。
日本語、制度理解、子どもの就学も考慮
日本語能力は原則として「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が考慮要素となります。日本の制度やルールへの理解、義務教育年齢の子どもの就学状況も審査対象です。
高度人材や一定の学校教育を受けた人などには例外があり、全員に一律の試験を課すと決まったわけではありません。
国益要件には、永住が単に国益に反しないだけでなく、「積極的かつ具体的に」日本に利益をもたらす必要があるとの考え方も盛り込まれました。
かなり踏み込んだ表現です。
配偶者の在留年数特例も延長
日本人、永住者、特別永住者の配偶者について、原則10年在留の特例は、実体を伴う婚姻生活3年以上・日本在留1年以上から、婚姻生活5年以上・日本在留3年以上へ延長される案です。
2026年中の申請にも影響する可能性

改定案は2026年9月4日まで意見募集が行われており、まだ最終決定ではありません。全体は2027年4月1日以降の申請から適用する予定です。
一方、収入と「公共の負担とならないこと」に関する項目は、改定日の6か月前以降に申請され、改定日に審査中の案件にも適用するとされています。
改定が報道どおり2026年10月であれば、2026年4月以降に申請した案件が対象となり得ます。
「今申請すれば旧基準で審査される」とは限らない点は、実務上とても重要です。
生活保護の受給だけで永住が取り消されるわけではない

今回の許可基準の見直しと、すでに永住許可を持つ人の在留資格取消しは別の制度です。
同日に公表された取消しガイドライン案では、「生活保護に準じた措置を受けている場合」は、故意に公租公課を支払わない場合に該当しないと想定される例として挙げられています。
したがって、生活保護の受給それ自体を理由に、直ちに永住資格が取り消されるものではありません。
永住許可は、いつまでも病気をせず、収入を落とさず、公的支援を必要としないことへの褒賞ではありません。
日本で長く暮らす人の生活基盤を安定させる在留資格でもあります。
その入口の審査を慎重にする必要性は理解できますが、使う数字の意味と、厳格化によって誰が影響を受けるのかは、冷静に検証する必要があります。
現在申請中の方や今後申請を予定する方は、本人の年収だけでなく、世帯構成、海外扶養、年金見込額、金融資産、日本語能力、子どもの就学状況まで一体として確認する必要があります。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
記事末尾の整理
【結論】
永住者の生活保護受給率1.96%は、全国全体の1.62%と比較された数字ですが、日本人のみとの比較ではなく、調査属性も十分に明らかではありません。この数字だけで現行の永住審査が機能していないとは断定できません。一方、改定案は年収、年金、日本語、制度理解、子の就学、配偶者特例まで広く見直すもので、永住申請実務への影響は非常に大きい内容です。
【根拠】
出入国管理及び難民認定法第22条、現行の永住許可に関するガイドライン、2026年8月4日公表の改定案、厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和6年度確定値)」、出入国在留管理庁の抽出調査に関する報道を根拠としています。
【注意点・例外】
改定案は意見募集段階であり、内容や適用時期が変更される可能性があります。具体的な年収額、年金水準、金融資産額、制度理解の確認方法は現時点ではわかりません。日本語B1相当にも例外があります。生活保護の受給と永住資格の取消しを混同しないことも重要です。
【出典】
一次情報
- e-Govパブリック・コメント「永住許可に関するガイドライン改定案」
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」
- e-Govパブリック・コメント「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案」
- 厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和6年度確定値)」
参考情報
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