この記事のポイント

1.今後も日本で働きたい外国人は95.8%と高水準です。
2.一方、「5年以上働きたい」は61.6%に低下し、2~5年の就労を希望する層が増えました。
3.企業には、在留資格の手続きだけでなく、賃金、キャリア、生活、家族まで含めた定着支援が求められています。
「日本で働きたい」は増えたのに、長期希望は減った

マイナビグローバルが日本に在留する外国人1,732人を対象に行った調査では、「現在の在留資格が切れた後も日本で働きたい」と回答した人は95.8%でした。
前年より3.5ポイント増えており、日本で働くこと自体への意欲は依然として高いといえます。
ところが、日本で働きたい期間を尋ねると、「5年以上」は61.6%となり、前年の76.3%から14.7ポイント減少しました。
その一方で、「2~5年」は21.5%から34.2%へ増えています。
この二つの数字は矛盾していません。
「当面は日本で働きたい。しかし、ずっと日本に残るかどうかはまだ決めていない」という人が増えている、と読むことができます。
行政書士として外国人の方と話していても、以前より日本での永住だけを前提にせず、日本、母国、第三国を比較しながら将来を考える方が増えた印象があります。
日本で働くことは、人生の最終目的ではなく、キャリアの一つの段階になりつつあるのかもしれません。
ベトナムとインドネシアで大きく減少

出身国別では、「5年以上働きたい」と回答した割合が、ベトナムで63.3%となり、前年から18.4ポイント減少しました。インドネシアも68.5%で、10.9ポイント減っています。
一方、ミャンマーは82.5%で6.4ポイント増、ネパールは88.7%で4.7ポイント増、中国は76.2%で1.2ポイント増でした。
この結果からも、外国人材を「外国人」という一つの集団で捉えることには無理があります。
母国の賃金水準、政治・経済状況、家族との関係、海外就労の選択肢は国によって異なります。
同じ在留資格で働いていても、将来設計はまったく同じではありません。
調査実施者は、ベトナム人材の長期就労希望が減った背景として、円安による送金額の目減りや母国の賃金上昇を挙げています。
ただし、この調査だけで円安と長期就労希望の因果関係まで断定することはできません。
日本は「唯一の就労先」ではなくなっている

今回の調査で特に重要なのは、日本と出身国以外の国で働くことに関心がある人が83.7%に達した点です。
内訳は、「働いてみたい」が56.2%、「興味はあるが、働いてみたいかは分からない」が27.5%でした。関心のある国は韓国が16.5%で最も多く、オーストラリア13.6%、中国10.7%、米国10.0%と続いています。
日本で働きたい気持ちと、別の国でも働いてみたい気持ちは両立します。
企業側が「日本に来たのだから、長く働いてくれるだろう」と考えてしまうと、認識のずれが生じます。
外国人材の側は、日本企業だけでなく、母国企業や韓国、オーストラリア、欧米の企業も含めて比較するようになっています。
人材を受け入れる立場から見れば、外国人材の獲得競争は国内企業同士だけの話ではなくなった、ということです。
採用できることと、定着することは別問題

調査では、就職先を選ぶ際に重視する項目として、「給料」が65.7%で最も多く、次いで「仕事内容・職種」48.7%、「勤務地」48.2%、「成長できる環境」40.0%となっています。
ここから見えてくるのは、単に求人を出し、在留資格を取得し、住居を用意すれば終わりではないという現実です。
企業が確認したいのは「何年働いてくれるか」かもしれません。
しかし、外国人本人が知りたいのは、「数年後にどのような仕事を任せてもらえるのか」「給与は上がるのか」「家族と暮らせるのか」「転職せずに成長できるのか」といった具体的な将来像です。
給与額だけで大企業と競争することが難しい中小企業でも、仕事の習得計画、昇給基準、資格取得支援、役職への登用、日本語教育、家族生活への配慮を明確に示すことはできます。
採用時にきれいな説明をすることよりも、入社後に説明どおりの環境を実現することの方が、はるかに重要です。
在留資格を長期化すれば定着するとは限らない

在留資格の更新や変更が可能であっても、本人が日本で働き続けるとは限りません。
反対に、本人が長く働きたいと考えていても、担当業務と在留資格の不一致、社会保険や税の未手続、雇用条件の変更などにより、在留手続き上の問題が生じる場合があります。
外国人雇用では、「会社が雇いたい」「本人が働きたい」「在留資格上も働ける」という三つの条件がそろって、初めて安定した雇用になります。
採用時だけ在留カードを確認し、その後の業務内容や在留期限を管理していない企業も少なくありません。
長期定着を考えるのであれば、本人との面談だけでなく、在留資格、雇用契約、担当業務、更新時期を継続的に確認する仕組みが必要です。
「外国人の日本離れ」と断定するのは早い

厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人で、前年より26万8,450人増加し、過去最多となっています。外国人を雇用する事業所数も37万1,215事業所まで増えています。
したがって、今回の調査だけを見て「外国人が一斉に日本を離れ始めた」と結論づけるのは適切ではありません。
ただし、「日本に来る人が増えていること」と「一人ひとりが長く定着すること」は別の問題です。
外国人労働者数が増え続けていても、採用と離職を繰り返しているだけでは、現場の人手不足は解消しません。企業が見るべき数字は、採用人数だけでなく、1年後、3年後、5年後の定着率です。
選ばれる国から、選ばれる企業へ

今回の調査結果は、日本で働きたい外国人が減ったというより、「条件を比較しながら働く国や企業を選ぶ外国人が増えた」と受け止めるべきでしょう。
これからの外国人雇用では、「日本だから来てくれる」「在留資格があるから辞めない」という前提は通用しにくくなります。
外国人材に選ばれ続ける企業は、特別な福利厚生を用意している企業とは限りません。給与、仕事内容、評価基準、将来のキャリアを丁寧に説明し、約束した内容を守る企業です。
在留資格の手続きは入口にすぎません。その先にある働き方や暮らしまで考えられるかどうかが、外国人材の定着を左右します。
在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の担当業務、雇用条件、本人の経歴によって結論が変わります。採用前や配置変更の段階で判断に迷う場合は、早めに専門家へ確認することをおすすめします。
4.記事末尾の整理
【結論】
外国人の日本での就労意欲は依然として高いものの、5年以上の長期就労を希望する割合は低下しています。企業は、採用手続きだけでなく、賃金、仕事内容、キャリア、生活支援、在留資格管理を一体として考える必要があります。
【根拠】
マイナビグローバルの調査では、日本で働きたい人は95.8%、5年以上働きたい人は61.6%、他国での就労に関心がある人は83.7%でした。
厚生労働省の外国人雇用状況では、2025年10月末の外国人労働者数は257万1,037人で過去最多となっています。
【注意点・例外】
今回の調査は、マイナビグローバルの支援対象者、登録者、提携校の留学生、SNS上のコミュニティーなどを通じたインターネット調査です。
回答者には留学生と特定技能外国人が多く、在留資格別の構成についてはウエイトバック集計が行われています。一方、出身国別の一部集計はウエイトバックされていません。調査結果をすべての在留外国人にそのまま当てはめることはできません。
長期就労希望が減った理由についても、円安だけが原因であると断定することはできません。
【出典】
一次・原資料
株式会社マイナビグローバル「在留外国人の日本での就労意欲調査結果」2026年7月7日
株式会社マイナビグローバル「在留外国人の日本での就労意欲調査」調査結果資料
厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」
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