入管職員200人超を緊急増員へ|不法残留・不法就労対策で企業が確認すべきこと
この記事のポイント

- 入国警備官と入国審査官を計200人超増員するとの内容は、2026年7月20日時点では報道段階です
- 不法残留者は6万8,488人ですが、前年からは8.5%減少しています
- 摘発強化だけでなく、在留審査における実態調査の強化も想定されています
- 外国人雇用企業は、在留カードの有効性だけでなく、実際の業務内容との整合性まで確認する必要があります
入国警備官約50人、入国審査官約180人を増員との報道

2026年7月20日の読売新聞の報道によると、出入国在留管理庁は、不法残留者の摘発や不法就労の実態調査を強化するため、入国警備官と入国審査官を合わせて200人超、年度途中に緊急増員する方針とされています。
報道では、入国警備官を約50人増員し、茨城県に集中的に配置するほか、入国審査官を約180人増員するとされています。関連する政令改正について、2026年7月末にも閣議決定する見通しとのことです。読売新聞オンライン(Yahoo!ニュース掲載、2026年7月20日)
ただし、2026年7月20日現在、私が確認できた政府の公表資料には、増員人数や配置先、閣議決定日まで明記した正式発表はありません。
現段階では「増員が正式決定した」と断定するのではなく、「入管庁が増員方針を固めたと報道されている」と整理するのが正確です。
摘発と在留審査、二つの方向で体制を強化

入国警備官は、退去強制事由に該当する疑いがある外国人の違反調査、摘発、収容、送還などを担います。
一方、入国審査官は、空港などでの上陸審査だけでなく、在留資格の変更・更新、永住許可などの在留審査にも関わります。
今回の増員報道で注目したいのは、摘発担当者だけでなく、入国審査官も約180人増員するとされている点です。
報道では、書面審査だけでは把握しにくい不法就労の実態調査を強化するとされています。
推測ですが、今後は会社の登記や雇用契約書が形式上整っているかだけでなく、実際の事業活動、勤務場所、職務内容、勤務時間などを確認する場面が増える可能性があります。
もっとも、増員によって、すべての申請で追加資料が増えるのか、審査期間が短縮されるのかは現時点ではわかりません。
不法残留者は「増えている」のではなく、前年より減少している

出入国在留管理庁によると、2026年1月1日現在の不法残留者数は6万8,488人です。前年の7万4,863人から6,375人、率にして8.5%減少しています。
2020年1月1日時点の8万2,892人と比べても少なくなっています。
出入国在留管理庁「本邦における不法残留者数について」
したがって、現在の数字は少なくとも「増加している」ことを示すものではありません。
その一方、2025年中に退去強制手続または出国命令手続が行われた外国人は1万8,442人で、そのうち1万3,435人に不法就労の事実が認められています。
その就労場所を都道府県別にみると、茨城県が3,518人で最多でした。
関東地区だけで全体の76.4%を占めています。
今回、茨城県への入国警備官の重点配置が報じられた背景には、この実績があると考えられます。
出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」
数字が減っていることと、対策を緩めてよいことは同じではありません。
ただ、「外国人が増えたから不法残留も増えている」という単純な理解も、最新統計とは一致しません。
「不法滞在者ゼロプラン」はすでに摘発強化へ進んでいる

出入国在留管理庁は2026年5月、「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」を公表しています。
このパッケージでは、従来の入国管理、在留管理・難民審査、出国・送還に加え、新たに「摘発の強化」が盛り込まれました。
不法就労助長者の摘発、関係機関との合同摘発、SNS上の情報を収集・分析するサイバーパトロールなども示されています。
出入国在留管理庁「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」
今回報じられた緊急増員は、突然出てきた施策というより、このパッケージを実際に動かすための人的体制の整備と見ることができます。
外国人雇用企業が再確認したい5つのこと

企業側に求められるのは、単に在留カードのコピーを保管することではありません。
- 在留カードの原本について、表面と裏面の両方を確認する
- 在留資格で認められた活動と、実際の担当業務が一致しているか確認する
- 「特定活動」や「特定技能」では、指定書の内容も確認する
- 在留期限を社内で管理し、更新申請の状況を確認する
- 雇入れ・離職時の外国人雇用状況届出を確実に行う
在留カード等読取アプリケーションと失効情報照会を併用することも有効です。
厚生労働省と出入国在留管理庁も、偽変造やカードの有効性を確認する方法として利用を案内しています。
厚生労働省「外国人の適正な雇用にご協力ください」
また、カードに記載された在留期限が過ぎているからといって、直ちに不法残留とは限りません。
在留期限までに更新申請や変更申請を行い、期限までに処分が出ていない場合は、一定の要件の下で、処分時または在留期限から2か月を経過する時のいずれか早い時まで在留できる「特例期間」があります。
出入国在留管理庁「特例期間とは?」
オンライン申請では、在留カード裏面に「申請中」の印が押されません。
申請受付完了メールなども含めて確認する必要があります。
個別事情により就労可否の判断が分かれるため、疑問がある場合は専門家への確認が必要です。
厳格化と同時に、期限切れを生まない管理も必要

不法残留や不法就労に対して、法令に基づき適正に対応することは必要です。
不法な状態で働く外国人は、低賃金、長時間労働、搾取などの被害を受けやすくなります。
その一方で、不法残留という在留上の違反と、犯罪や治安悪化をそのまま同一視することには慎重であるべきでしょう。
今回確認した一次資料だけでは、不法残留者数と治安悪化との直接的な因果関係までは確認できません。
適正に在留し、働いている外国人まで一括りにして疑うことは、「秩序ある共生」という政策目的にも合いません。
企業が在留期限を本人任せにせず、更新時期を一緒に確認する。担当業務が在留資格の範囲から外れていないか、定期的に見直す。こうした地味な管理の積み重ねも、不法残留や不法就労を生まないための重要な対策です。
在留資格の審査が、書面中心から実態確認を重視する方向へ進むのであれば、企業側にも「書類を整える」だけでなく「実際の雇用を適正にする」姿勢が、これまで以上に求められます。
在留資格と担当業務の整合性、在留期限の管理、更新申請中の就労可否などに不安がある場合は、問題が表面化する前に専門家へ相談することをおすすめします。
4.記事末尾の整理
【結論】
入管職員200人超の緊急増員は報道段階ですが、摘発強化と在留審査の実態調査強化という政策の方向性は、すでに公表済みです。外国人雇用企業には、在留カードの確認だけでなく、実際の業務内容や在留期限まで含めた管理が求められます。
【根拠】
- 2026年1月1日現在の不法残留者数は6万8,488人
- 前年から6,375人、8.5%減少
- 2025年中に不法就労事実が認められた者は1万3,435人
- 「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」に摘発強化が追加済み
- 不法就労助長者への摘発や実態調査の強化が政策として示されている
【注意点・例外】
- 200人超の増員人数、配置先、実施時期は正式発表前です
- 在留期限を過ぎていても、適法な特例期間中である場合があります
- 特例期間中の就労可否は、従前の在留資格や許可内容によって確認が必要です
- 増員による審査期間や追加資料への具体的影響は、現時点ではわかりません
- 個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です
【出典】
一次情報
- 出入国在留管理庁「本邦における不法残留者数について(令和8年1月1日現在)」
- 出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」
- 出入国在留管理庁「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」
- 厚生労働省「外国人の適正な雇用にご協力ください」
- 出入国在留管理庁「特例期間とは?」
参考情報
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