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TOP > コラム > 在留資格目的の偽装結婚はなぜ問題になるのか|日本人の配偶者等と入管審査の実務

在留資格目的の偽装結婚はなぜ問題になるのか|日本人の配偶者等と入管審査の実務

2026.06.17
コラム外国人支援日本人の配偶者等ビザ
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偽装結婚の逮捕報道から考える「配偶者ビザ」の重さ

2026年6月9日、RCC中国放送は、広島市に住む仲介役とみられる人物、日本人男性、フィリピン国籍の女性の3人が、うその婚姻届を提出した疑いで逮捕されたと報じました。

報道によれば、容疑は電磁的公正証書原本不実記録などで、警察は「在留資格を得るため」「報酬を得るため」といった供述があったとしています。

現時点では逮捕段階であり、刑事責任の有無は今後の手続で判断されるべきものです。

この種のニュースを見ると、「配偶者ビザは厳しくなっているのか」「国際結婚そのものが疑われるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。

行政書士として実務を見ていると、ここは丁寧に分けて考える必要があります。

問題なのは国際結婚ではありません。問題なのは、結婚の実体がないにもかかわらず、在留資格を得る目的で婚姻という制度を使うことです。

在留資格「日本人の配偶者等」は、名前の印象以上に重い在留資格です。就労制限が原則としてなく、日本での生活基盤にも大きく関わります。

そのため、入管審査では、単に戸籍上婚姻しているかだけでなく、夫婦としての実体があるかが重要になります。

「婚姻届が受理された」だけでは十分ではない

日本人と外国人が結婚し、市区町村で婚姻届が受理されれば、民事上の婚姻関係は成立します。しかし、それだけで自動的に在留資格「日本人の配偶者等」が認められるわけではありません。

出入国在留管理庁の案内でも、「日本人の配偶者等」の申請では、日本人配偶者の戸籍謄本、外国側の結婚証明書、住民税関係資料、身元保証書、質問書、夫婦間の交流が確認できる資料などが求められています。

つまり、入管は「法律上結婚しているか」だけでなく、「その結婚が実生活を伴うものか」を確認しようとしているわけです。

実務上も、ここでよく誤解が生じます。

たとえば、交際期間が短い、同居していない、言語が十分に通じていない、出会いの経緯が不自然、生活費の負担関係が説明できない、親族や友人が結婚を知らない。このような事情があるからといって、直ちに不許可になるわけではありません。

ただし、説明が薄いまま申請すると、「本当に夫婦として生活する意思があるのか」という疑問を持たれやすくなります。

国際結婚では、国境、言語、宗教、仕事、家族関係などの事情により、一般的な日本人同士の結婚とは異なる生活形態になることがあります。

だからこそ、申請では「普通と違うから疑われる」のではなく、「普通と違う部分を、合理的に説明できるか」が大事になります。

偽装結婚が発覚した場合、刑事事件だけでは終わらない

今回の報道では、容疑として電磁的公正証書原本不実記録などが挙げられています。

刑法上、公務員に対して虚偽の申立てをして、公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた場合には、刑事責任が問題となります。

しかし、在留資格実務の視点では、もう一つ大きな問題があります。

それは、仮に虚偽の婚姻を前提として在留資格を得ていた場合、在留資格そのものが不安定になるという点です。

入管法には、偽りその他不正の手段により上陸許可や在留資格変更許可などを受けた場合などに、在留資格取消しの対象となる規定があります。

また、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格を持つ人が、配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合も、正当な理由がない限り、取消しの対象となり得ます。

ここでいう「配偶者としての活動」とは、単に戸籍上の配偶者であることではなく、夫婦として共同生活を営む実態を指すと考えられます。

別居している場合でも、単身赴任、介護、出産、子の教育、仕事上の事情など、合理的な理由があれば説明の余地はあります。

反対に、婚姻届を出しただけで、生活実態がまったくない場合は、在留資格該当性そのものが問題になります。

仲介者がいるケースは、入管実務でも慎重に見られやすい

今回の報道では、仲介役とみられる人物が逮捕されています。ここは実務上も重要です。

国際結婚そのものに紹介者がいることは珍しくありません。友人、親族、職場関係者、結婚相談所などを通じて出会うこともあります。それ自体が問題なのではありません。

問題になるのは、紹介者が報酬を得る目的で、在留資格取得のために形式的な婚姻を組み立てるようなケースです。

こうなると、単なる夫婦の問題ではなく、組織的・反復的な不正取得の疑いとして見られやすくなります。

出入国在留管理庁も、不法滞在や偽装滞在に関する情報提供を受け付けており、偽装滞在対策を行っていることを公表しています。

ただし、同庁は外国人への誹謗中傷を明確に断っています。制度の適正化と、外国人への偏見はまったく別の問題です。

この点は、行政書士としても強調したいところです。

偽装結婚事件が報道されると、まじめに結婚生活を送っている国際夫婦まで疑いの目で見られることがあります。

しかし、現場で向き合う国際夫婦の多くは、言葉や文化の違いを抱えながら、生活を作ろうとしています。制度を悪用する一部の事案と、正当な国際結婚を混同してはいけません。

正当な国際結婚で大切なのは「説明できる資料」を残すこと

配偶者ビザの申請では、きれいなストーリーを作る必要はありません。むしろ、実態とかけ離れた説明は危険です。

大切なのは、二人がどのように出会い、どのように交際し、どのような理由で結婚に至り、今後どこで、どのように生活していくのかを、事実に沿って説明することです。

たとえば、交際中の写真、メッセージ履歴、渡航記録、送金記録、結婚式や家族との交流資料、同居予定の住居資料、生活費の負担関係などは、夫婦関係の実体を補強する資料になります。

ただし、資料を大量に出せばよいというものでもありません。

入管が知りたいのは「本当に夫婦として生活する意思と実態があるのか」です。資料は、その問いに答えるために整理する必要があります。

実務では、本人たちは自然な結婚だと思っていても、第三者から見ると説明不足に見えることがあります。

たとえば、出会ってすぐ結婚した理由、別居が続いている理由、収入が少ない中でどう生活するのか、過去の在留状況に問題がある場合にどう整理するのか。このあたりは、申請前にかなり丁寧に確認した方がよい部分です。

「在留資格のための結婚」は、本人にも日本人側にも大きなリスクがある

偽装結婚は、外国人本人だけの問題ではありません。日本人側も、仲介者も、場合によっては刑事責任や社会的信用の喪失につながります。

特に、日本人側が「名前だけ貸せばよい」「婚姻届を出すだけで生活は別でよい」「謝礼がもらえる」と軽く考えてしまうケースは危険です。

戸籍に婚姻歴が残ること、将来の相続・扶養・離婚手続にも影響し得ることを考えれば、単なるアルバイト感覚で関与できる話ではありません。

外国人本人にとっても、在留資格が得られたとして一時的に見えるかもしれませんが、不正が発覚すれば在留資格取消し、退去強制、再入国への影響など、生活全体に大きな不利益が及び得ます。

在留資格は、書類を整えるだけの手続ではありません。その人が日本でどのような活動をするのか、その活動が在留資格に合っているのかを確認する制度です。

配偶者ビザであれば、中心にあるのは「夫婦としての生活」です。そこをごまかす申請は、制度の土台を崩してしまいます。

まとめ:配偶者ビザは、婚姻の「形式」ではなく「実態」を見る

今回の広島の逮捕報道は、まだ捜査段階の情報であり、個々の事実関係について断定することはできません。

ただ、在留資格実務の観点からは、偽装結婚が単なる戸籍上の問題ではなく、刑事事件、在留資格取消し、退去強制、仲介者責任にまで広がり得る重大な問題であることを改めて示しています。

一方で、正当な国際結婚を必要以上に恐れる必要はありません。
大切なのは、結婚の経緯と生活実態を、事実に基づいて説明できる状態にしておくことです。

国際結婚や配偶者ビザの申請では、事情が少し複雑なだけで、不許可リスクが高く見えることがあります。

交際期間が短い、別居期間がある、収入面に不安がある、過去の在留状況に説明が必要。このような場合は、申請前に論点を整理することが重要です。

在留資格申請は、制度の条文だけでなく、実際の生活状況や過去の経緯によって判断が変わります。判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

  1. 記事末尾の整理

【結論】

偽装結婚は、単なる「うその婚姻届」の問題にとどまらず、在留資格の不正取得、在留資格取消し、刑事責任、仲介者責任に発展し得る重大な問題です。一方で、正当な国際結婚まで過度に萎縮する必要はなく、婚姻の経緯と夫婦生活の実態を事実に沿って説明することが重要です。

【根拠】

在留資格「日本人の配偶者等」の申請では、戸籍謄本、外国側の結婚証明書、質問書、夫婦間の交流資料などが求められ、婚姻の形式だけでなく実態を確認する運用がされています。
入管法第22条の4では、偽りその他不正の手段により許可を受けた場合や、配偶者としての活動を一定期間行っていない場合などに、在留資格取消しの対象となり得ます。
刑法上も、虚偽の婚姻届により公的記録に不実の記録をさせた場合、電磁的公正証書原本不実記録等の罪が問題となり得ます。

【注意点・例外】

別居、交際期間の短さ、年齢差、言語の問題、収入の不安などがあるからといって、直ちに偽装結婚と判断されるわけではありません。
ただし、その事情を合理的に説明できない場合、審査上の疑問点になります。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
報道段階の事件については、逮捕事実と有罪認定を混同しない注意が必要です。

【出典】

一次情報
出入国在留管理庁「在留資格『日本人の配偶者等』」
出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」
出入国在留管理庁「情報受付」
e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」

参考情報
RCC中国放送「在留資格と報酬目的で『偽装結婚』か うその婚姻届提出の疑いで広島の仲介役ら3人逮捕」2026年6月9日配信

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