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TOP > コラム > 技能実習計画の認定取消しはどこまで争えるのか|今治タオル会社の提訴から考える実務リスク

技能実習計画の認定取消しはどこまで争えるのか|今治タオル会社の提訴から考える実務リスク

2026.06.19
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技能実習計画の「認定取消し」は、企業にとってかなり重い処分です

外国人技能実習生を受け入れている企業にとって、「技能実習計画の認定取消し」は、単なる注意や指導とはまったく違う重い処分です。

愛媛県今治市のタオル製造会社が、外国人技能実習生を受け入れる計画の認定を取り消された処分は違法だとして、国に処分取消しを求めた裁判の第一回口頭弁論が、2026年6月10日に松山地裁で開かれました。

報道によれば、会社側は外国人技能実習機構との間に認識の食い違いがあり、必要な手続きを踏まずに認定を取り消したのは違法だと主張しています。一方、国側は、訴えそのものが不適法だとして争う姿勢を示したとされています。

この裁判の結論は、現時点ではわかりません。個別の処分が適法だったかどうかは、訴訟で提出される証拠、処分理由、手続経過、実際の作業内容、認定計画の記載内容などを見なければ判断できません。

ただ、行政書士として実務を見ていると、このニュースは「技能実習制度では、現場の感覚と制度上の計画がズレると非常に危険だ」ということを改めて示しているように感じます。

この記事のポイント

今回の報道で注目すべき点は、技能実習生にどのような作業をさせたか、そしてその作業が認定された技能実習計画に含まれていたのか、という点です。

技能実習制度では、「人手が足りないから手伝ってもらう」という発想だけでは運用できません。認定された技能実習計画に沿って、技能等の修得を目的として活動させることが大前提になります。

外国人技能実習機構の公式説明でも、実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていない場合、認定基準を満たさなくなった場合、欠格事由に該当した場合、立入検査を拒否・妨害した場合、改善命令に違反した場合、入管法令や労働関係法令に違反した場合などには、技能実習計画の認定取消しの対象になるとされています。

つまり、「実際には大きな問題ではないと思っていた」「工場内では普通の作業だった」「同じ製造工程の一部だと思っていた」という現場側の感覚だけでは足りません。

制度上は、認定された計画と実際の作業が一致しているかが問われます。

「計画外業務」は、現場では起こりやすい

今回の報道では、過去の報道として、会社が2018年から織機を使用してタオルを織る作業を行うことを条件に認定を受け、技能実習生を受け入れていたこと、外国人技能実習機構の立入検査で、単純な縫製作業など計画にはない業務をさせていたことが発覚したとして、認定取消し処分を受けたとされています。会社側は、縫製作業なども計画に含まれると主張していると報じられています。

ここが、実務上とても難しいところです。

製造現場では、一つの製品ができあがるまでに複数の工程があります。タオル製造であれば、織る、裁断する、縫う、検品する、梱包するなど、現場から見れば一連の流れに見えることもあります。

しかし、技能実習制度では、「その作業が職種・作業として認められているか」「技能実習計画にどう記載されているか」「必須業務、関連業務、周辺業務として整理されているか」という制度上の見方が入ります。

現場では自然な手伝いでも、制度上は「認定計画外の業務」と評価されることがあります。このズレが、技能実習制度の怖さです。

認定取消しは、実習生本人にも影響します

技能実習計画の認定取消しは、企業だけの問題ではありません。

実習生本人にとっても、受入れ先での実習継続が難しくなり、転籍や帰国などの問題につながる可能性があります。受入企業、監理団体、実習生、送出機関、取引先まで含めて、影響が広がりやすい処分です。

外国人技能実習機構は、実習実施者に対する指導監督について、報告徴収、帳簿書類の提出・提示命令、出頭命令、質問、立入検査などの権限があると説明しています。

また、認定計画に従っていない場合や法令違反が判明した場合には、改善命令や認定取消しの対象になるとされています。

行政処分の場面では、「悪気がなかった」という説明だけでは足りません。

もちろん、悪質性の程度や違反内容、是正状況、機構とのやり取り、処分手続の適正さなどは重要です。ただ、制度の入口としては、認定計画に反する運用があったかどうかが厳しく見られます。

企業が本当に確認すべきなのは「現場の実態」です

技能実習の書類は、申請時にはきれいに整っています。

しかし、問題はその後です。実際に現場へ配属されたあと、誰が実習生に作業指示を出しているのか。繁忙期に別工程へ回していないか。日本人従業員と同じように何でも任せていないか。現場責任者が、技能実習計画の中身を理解しているか。

ここが弱い会社は、制度上のリスクを抱えます。

行政書士として見ると、技能実習や特定技能のトラブルは、経営者が制度を知らないというより、現場に制度が届いていないことで起きることが少なくありません。

社長や総務担当者は「この作業しかさせていない」と思っていても、現場では「少しだけ」「今日だけ」「忙しいから」という判断で、別作業をさせていることがあります。

その「少しだけ」が、後から見ると大きな問題になります。

育成就労制度に移っても、計画管理の重要性は残る

技能実習制度は、今後、育成就労制度へ移行していきます。

ただし、制度名が変わっても、外国人材を受け入れる企業に対して、計画的な育成、適正な業務内容、労働関係法令の遵守、受入れ体制の整備が求められる流れは変わりません。

むしろ、今後は「外国人を受け入れている会社が、どれだけ適正に雇用管理をしているか」が、これまで以上に見られる時代になると考えています。

技能実習計画の認定取消しを巡る裁判は、単に一企業と国の争いというだけではありません。外国人材を受け入れる企業全体に対して、「書類上の計画」と「現場の実態」を一致させることの重要性を突きつけているように思います。

実務上のチェックポイント

企業側で最低限確認しておきたいのは、次のような点です。

技能実習計画に記載された作業内容と、実際の作業内容が一致しているか。現場責任者が、実習生にさせてよい作業と、させてはいけない作業を理解しているか。繁忙期や欠員時に、計画外の作業をさせる運用になっていないか。監理団体への相談記録や、作業内容の確認記録が残っているか。外国人技能実習機構の実地検査で指摘を受けた場合に、速やかに是正できる体制があるか。

特に、製造業では「一連の工程だから大丈夫」と考えがちです。

しかし、制度上は、作業名、職種、工程、技能修得との関係が問われます。

現場の常識と制度の常識は、必ずしも一致しません。

争うことと、予防することは別の問題です

今回の裁判では、会社側が処分の違法性を主張し、国側が争う姿勢を示しています。裁判所がどのように判断するかは、現時点ではわかりません。

ただ、企業実務としては、「処分を受けたあとに争えるか」よりも、「処分を受けない体制をどう作るか」が重要です。

行政処分を受けてから争う場合、時間も費用もかかります。実習生本人の生活や在留にも影響します。取引先や地域社会からの見られ方も変わります。

外国人材の受入れは、単なる人手不足対策ではなく、会社の管理体制そのものが問われる分野になっています。

制度を守るというと堅苦しく聞こえますが、実際には、実習生を守り、会社を守り、現場を守るための最低限の設計図です。

在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の業務内容、作業工程、雇用管理、監理団体との関係によって結論が変わることがあります。判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

  1. 記事末尾の整理

【結論】
技能実習計画の認定取消しは、企業にとって極めて重い行政処分です。今回の裁判の結論はまだ不明ですが、外国人材を受け入れる企業は、認定計画と実際の作業内容を一致させる管理体制を整える必要があります。

【根拠】
技能実習計画の認定取消しは、技能実習法上の制度です。外国人技能実習機構は、認定計画に従って技能実習を実施していない場合、認定基準を満たさなくなった場合、欠格事由に該当した場合、立入検査の拒否・妨害、改善命令違反、入管法令・労働関係法令違反などが認定取消しの対象になると説明しています。
今回の今治市のタオル製造会社に関する訴訟については、あいテレビ・Nスタえひめの報道を参考情報として整理しました。

【注意点・例外】
今回の個別事件について、会社側の主張と国側の主張のどちらが正しいかは、現時点では断定できません。裁判資料の全文、処分理由、認定計画の記載、実際の作業内容、機構とのやり取りを確認する必要があります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。

【出典】
一次情報:外国人技能実習機構「行政処分等」
一次情報:e-Gov法令検索「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」
参考情報:あいテレビ・Nスタえひめ「『認定取り消しは違法』今治のタオル製造会社が国を提訴 外国人技能実習生を巡る裁判 国側は争う姿勢」2026年6月10日
参考情報:あいテレビ・Nスタえひめ「今治のタオル会社『ベルム』が国を提訴 外国人技能実習生の認定取り消し処分に不服」2026年5月29日

 

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