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TOP > コラム > 経営管理ビザの3,000万円要件、個人事業主はどう判断されるのか

経営管理ビザの3,000万円要件、個人事業主はどう判断されるのか

2026.06.22
コラム外国人支援法改正経営管理ビザ
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経営管理ビザの改正で、個人事業主にも不安が広がっている

在留資格「経営・管理」をめぐる改正は、外国人経営者にとってかなり大きな転換点です。

特に話題になっているのが、資本金等3,000万円以上という新しい基準です。法人であれば、株式会社の資本金、合同会社などの出資総額という形で比較的イメージしやすいかもしれません。

一方で、個人事業主の場合はどうでしょうか。

個人事業には、会社のような「資本金」という概念がありません。

そのため、すでに個人事業として日本で事業を営んでいる外国人の方からは、「法人化しなければならないのか」「3,000万円を口座に置いておかないといけないのか」という不安の声が出やすいところです。

この点について、入管庁の説明では、事業主体が個人である場合、3,000万円は法定の資本金ではなく、事業所の確保、雇用する職員の1年間分の給与、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額を指すと整理されています。

ここは実務上、とても重要です。単に「預金残高が3,000万円あるか」だけを見る話ではなく、事業としてどれだけ実体ある投資がされているか、という方向で見られる可能性が高いからです。

令和10年10月16日までの経過措置は「猶予」だが「免除」ではない

すでに「経営・管理」で在留している方については、施行日から3年を経過する令和10年10月16日までの間、改正後の基準に適合していない場合でも、経営状況や新基準に適合する見込みなどを踏まえて許否判断が行われるとされています。

この説明を読むと、「では3年間は何もしなくても大丈夫」と受け止めたくなるかもしれません。

しかし、実務上はそう単純ではありません。

経過措置は、既存の外国人経営者をいきなり在留不安定な状態に置かないための調整措置と見るべきです。つまり、3年間は完全な免除期間というより、新基準に向けた準備状況を見られる期間と考えた方が安全です。

たとえば、次回更新までに資本金等3,000万円の基準に近づける計画があるのか。常勤職員の雇用体制を整える見込みがあるのか。事業計画の合理性を専門家が説明できる状態か。こうした点を、更新申請の場面で書面化しておく必要が出てくるでしょう。

行政書士の現場感覚としては、「今はまだ足りないが、いつ、どのように満たすのか」を説明できるかどうかが大きな分かれ目になると感じます。

審査で見られるのは、売上や納税だけではない

今回の更新で特に注意したいのは、経営管理ビザの審査が、単なる事業規模や資金力の確認にとどまらない点です。

入管庁の説明では、在留期間更新時に、労働保険の適用状況、雇用保険の被保険者資格取得、雇用保険料の納付、労災保険の適用手続、健康保険・厚生年金保険の資格取得、社会保険料の納付、国税・地方税の納付状況などを確認するとされています。

これは、外国人経営者に対しても、日本で事業を営む以上、経営者としてのコンプライアンスを正面から求めるというメッセージです。

たとえば、従業員を雇っているのに雇用保険の手続をしていない。法人なのに社会保険の加入が不十分。源泉所得税や消費税の納付に遅れがある。

こうした問題は、単なる税務・労務のミスでは終わらず、在留期間更新の消極要素として扱われる可能性があります。

これはかなり重い意味を持ちます。

外国人経営者の方の中には、「売上が出ていれば大丈夫」「税金を払っていれば大丈夫」と考えている方もいます。しかし、今後はそれだけでは足りません。

人を雇うなら雇用保険、法人として事業をするなら社会保険、許認可が必要な業種なら許認可。事業の足場そのものが審査対象になると考えるべきです。

個人事業主は、投資額の説明資料を早めに整理したい

個人事業主の場合、特に難しいのは「投下されている総額」をどう説明するかです。

法人の資本金のように登記事項証明書を見れば分かるものではありません。

事務所の賃貸借契約、内装費、設備購入費、車両、在庫、広告宣伝費、人件費、外注費など、事業のために実際に投下された資金を、会計資料や契約書、領収書、固定資産台帳、給与台帳などで積み上げて説明する必要があります。

ここで注意したいのは、生活費と事業費が混ざっているケースです。

個人事業では、事業用口座と生活用口座が分かれていないこともあります。しかし、在留審査で投資額を説明する場面では、「これは事業に必要な支出です」と客観的に示せなければなりません。

その意味で、今後の経営管理ビザでは、税理士、社労士、行政書士の連携がより重要になります。

入管に提出する書類だけを整えるのではなく、日頃の会計・労務管理そのものを整えておくことが、更新許可の土台になるからです。

経営管理ビザは「起業ビザ」から「経営者としての適格性を見る在留資格」へ

今回の改正を見ていると、経営管理ビザは、単に日本で会社を作るための在留資格ではなく、日本で継続的に、適法に、一定規模以上の事業を運営できるかを見る在留資格へと色合いを強めています。

もちろん、不正取得や名ばかり経営への対策は必要です。

一方で、まじめに事業を続けてきた小規模事業者にとっては、急な基準引上げが重くのしかかる面もあります。ここは制度運用の中で、どこまで個別事情が丁寧に見られるかが重要です。

ただ、事業者側としては、制度への不満だけを言っていても更新審査は進みません。

まずは、現在の事業が新基準のどこを満たしていて、どこが不足しているのかを把握すること。そして、不足している部分について、いつまでに、どのような方法で整えるのかを具体化することが必要です。

経営管理ビザの更新は、これから「決算書を出せばよい」時代ではなくなっていくと思います。経営実態、資金計画、雇用管理、社会保険、税務、許認可。これらを一つの事業ストーリーとして説明する力が求められます。

在留資格申請は、書類をそろえる作業に見えて、実は事業の健康診断に近い面があります。今回の改正は、その傾向をさらに強めたものと受け止めています。

記事末尾の整理

【結論】

経営管理ビザの3,000万円要件について、個人事業主は法人の資本金ではなく、事業のために投下された総額で判断される。既存の在留者には令和10年10月16日まで経過的取扱いがあるが、これは免除ではなく準備期間と考えるべきである。今後の更新審査では、資金や売上だけでなく、労働保険、社会保険、税務、許認可を含む事業運営全体の適法性が重要になる。

【根拠】

出入国在留管理庁は、在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について、令和7年10月16日施行の改正内容として、常勤職員1名以上、資本金等3,000万円以上、日本語能力、経営経験又は学歴、事業計画の専門家確認などを示している。

また、個人事業主の場合の資本金等については、事業所の確保、雇用する職員の1年間分の給与、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額と説明されている。

【注意点・例外】

経過措置期間中であっても、経営状況、納税状況、新基準に適合する見込み、その他の在留状況が総合的に見られる。新基準を満たしていないことだけで直ちに不許可とは限らないが、労働保険、社会保険、税務、許認可に問題がある場合は消極要素となり得る。

個人事業主の投資額認定では、どの支出が事業のための投下資本と評価されるかは、資料の内容や事業実態によって判断が分かれる可能性がある。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要である。

【出典】

一次情報

出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」

出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」

参考情報

風傳媒日本語版「入管庁が経営管理ビザのガイドラインを更新 個人事業主の投資額認定と労働法令遵守を明確化」(2026年6月15日)

 

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