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TOP > コラム > 外国人留学生インターンは人手不足対策になるのか。観光現場から考える受入れの基本

外国人留学生インターンは人手不足対策になるのか。観光現場から考える受入れの基本

2026.06.29
コラム外国人支援留学ビザ資格外活動
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留学生インターンは「人手不足の穴埋め」ではなく、地域と学生をつなぐ入口

青森県弘前市の観光施設で、弘前大学の外国人留学生をインターンシップとして受け入れているという報道がありました。

記事によれば、同施設では15年以上にわたり留学生を受け入れ、受付、食堂での配膳、メニューの翻訳、売店ポップの作成、ねぷた囃子の説明に関する翻訳や発音指導などに活かしているとのことです。

この話を読んで、私はとても良い事例だと感じました。

観光施設にとって、外国語ができる人材はたしかに助かります。ただ、それ以上に大きいのは、「現地の人に伝わる言葉」を留学生が持っていることです。

日本人スタッフが一生懸命翻訳しても、どこか説明文のようになってしまうことがあります。一方で、留学生が関わると、表現が少し柔らかくなったり、観光客の目線に近づいたりする。これは単なる語学力ではなく、文化の橋渡しです。

ただし、企業や施設がこのような事例を参考にする場合、ひとつ注意が必要です。

留学生インターンは、良い取組である一方、在留資格上も労務管理上も「学生だから自由に受け入れてよい」というものではありません。

まず確認すべきは「報酬の有無」

今回の報道では、インターンシップに報酬が支払われているかどうかまでは確認できませんでした。ここは実務上、かなり重要です。

在留資格「留学」は、本来、日本の教育機関で教育を受ける活動のための在留資格です。留学生が、現在の在留資格に属さない収入を伴う活動や報酬を受ける活動を行う場合には、原則として資格外活動許可が問題になります。

たとえば、有償のインターンシップとして日当、時給、謝金などを支払う場合には、まず資格外活動許可の有無を確認する必要があります。

一般的な包括許可であれば、原則として1週28時間以内という枠が意識されます。インターンシップの予定時間がこれを超えるような場合には、個別許可が必要になることがあります。

一方、無報酬で、大学の教育課程やキャリア教育の一環として短期間実施される場合には、直ちに資格外活動許可が必要とは限りません。

ただし、無報酬であっても、実態として従業員と同じようにシフトへ組み込み、通常業務を任せ、施設側が労働力として利用しているような形になれば、別の問題が出てきます。

つまり、名札に「インターン」と書いてあるかどうかではなく、実際に何をしているかが大事です。

「1日6時間、4日間」なら安心とは言い切れない

報道では、今年度前期は7人の学生が、5月中旬から1日6時間、4日間のインターンシップを行うとされています。

時間数だけを見ると、合計24時間ですので、一般的なアルバイトの上限との関係では大きな問題になりにくいようにも見えます。

しかし、実務では時間数だけで判断しません。

確認すべきなのは、少なくとも次のような点です。

報酬はあるのか。交通費や食事代の扱いはどうか。大学の授業、単位、キャリア支援プログラムとの関係はあるのか。受入先との契約書や覚書はあるのか。学生に任せる業務は教育目的に合っているのか。事故やけがが起きた場合の保険はどうなっているのか。

特に観光施設や飲食・物販を伴う施設では、現場が忙しくなると、インターンの学生が自然と「戦力」として扱われやすくなります。

最初は見学や体験の予定だったのに、気づけば通常スタッフと同じように接客や配膳を任せている。これは現場ではよく起こります。

もちろん、実務を体験すること自体が悪いわけではありません。インターンシップは、机上の説明ではなく、職場での就業体験に意味があります。

ただ、その体験が教育目的なのか、単なる労働力の提供なのか。その境界線を、受入れ前に整理しておく必要があります。

留学生の視点は、インバウンド対応の質を変える

今回の報道で印象的だったのは、施設側が留学生に対して、単なる翻訳作業だけでなく「刺さる表現」を期待している点です。

これは、地域の観光施設にとって非常に重要です。

外国人観光客への対応というと、多言語表記、翻訳アプリ、案内看板の整備がまず思い浮かびます。もちろん、それらは必要です。しかし、観光の現場では、正しい翻訳だけでは足りないことがあります。

たとえば、郷土玩具、祭り、囃子、伝統工芸の説明は、日本語でも簡単ではありません。背景にある地域の歴史や感覚を、外国の人にどう伝えるか。ここでは、母語や出身国の文化を知っている留学生の視点が活きます。

行政書士として外国人雇用や在留資格の相談を受けていると、企業側はどうしても「この人は何語が話せるか」「何時間働けるか」という見方をしがちです。けれども、留学生の価値はそこだけではありません。

日本を外から見た経験。母国の人がどこで戸惑うかを知っていること。日本語の説明のどこが難しいかを肌で感じていること。これらは、インバウンド対応において大きな財産です。

企業・施設が受け入れる前に整えるべきこと

留学生インターンを受け入れる場合、企業や施設は、まず大学や学校との連携を明確にすることをおすすめします。

学生個人と口頭で約束するだけではなく、可能であれば大学の担当部署を通じて、実施期間、活動内容、報酬の有無、指導担当者、事故時の対応、個人情報の取扱いを確認しておくべきです。

また、受入先では、学生にさせる活動を事前に整理しておく必要があります。

たとえば、受付での見学と補助、メニュー翻訳案の作成、外国語表記の改善提案、観光客目線でのフィードバック、文化体験プログラムの説明補助などであれば、教育的な意味を説明しやすいでしょう。

一方で、繁忙時間帯の配膳、レジ、清掃、販売業務を長時間任せる場合には、通常の労働との区別が曖昧になります。

有償であれば資格外活動許可の確認、労働条件の明示、賃金支払い、労災などの検討が必要になります。無償であっても、実態によっては問題が残ります。

「留学生だから安く手伝ってもらえる」という発想は危険です。むしろ、学生の学びと施設側の受入れ目的をきちんと重ねることが、長く続くインターンシップには欠かせません。

海外の大学生を呼ぶ場合は、さらに別の在留資格が問題になる

ここでもう一つ、混同しやすい点があります。

今回のように、日本国内の大学に在籍する外国人留学生を受け入れる場合と、海外の大学に在籍している外国人学生を日本へ呼び寄せてインターンシップを行う場合では、在留資格の考え方が変わります。

海外の大学生を日本の企業が受け入れる場合には、在留資格「特定活動」のインターンシップ、サマージョブ、国際文化交流などが問題になることがあります。これは、日本にいる留学生の資格外活動許可とは別の整理です。

実務では、ここを混同している相談が少なくありません。

「外国人学生のインターン」と一口に言っても、日本の大学に在籍しているのか、海外の大学から来日するのか。報酬はあるのか。期間はどれくらいか。大学との契約はあるのか。これらで必要な手続は変わります。

地域の小さな受入れが、将来の外国人材定着につながる

留学生数は近年増加しており、日本で学ぶ外国人学生は40万人を超えています。地域企業や観光施設にとって、留学生との接点をどう作るかは、今後さらに重要になります。

ただ、最初から採用に直結させようとすると、学生にとっても企業にとっても少し重くなります。短期のインターンシップや職場体験は、その手前にある、やわらかい入口です。

学生は地域を知る。施設は外国人の目線を知る。スタッフは異文化対応に慣れる。うまく設計すれば、双方にとって無理のない関係が生まれます。

今回の弘前の事例は、まさにその形に近いと感じます。15年以上続いているということは、単発のイベントではなく、受入先と大学、学生の間に一定の信頼関係があるのでしょう。こうした積み重ねは、地域の国際化にとって目立たないけれど、とても大切です。

一方で、制度を軽く見てはいけません。

留学生インターンは、在留資格、資格外活動許可、労務管理、教育目的、保険、ハラスメント対応など、確認すべき点がいくつもあります。

きちんと整えれば、地域にとっても学生にとっても価値のある制度になります。逆に、準備が不十分なまま始めると、善意の取組がトラブルに変わることもあります。

留学生の力を借りるのではなく、留学生と一緒に地域の魅力を伝える。そんな感覚で設計できると、インターンシップは単なる人材確保策を超えた取組になるはずです。

在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の活動内容、報酬の有無、学校との関係、受入先での指揮命令の実態によって結論が変わることがあります。留学生インターンの受入れを検討している場合は、事前に活動内容を整理し、必要に応じて専門家へ確認することをおすすめします。

  1. 記事末尾の整理

【結論】

留学生インターンは、インバウンド対応や地域の国際化に大きな可能性があります。ただし、報酬の有無、資格外活動許可、労働者性、大学との連携を整理しないまま受け入れると、在留資格上・労務管理上の問題が生じる可能性があります。

【根拠】

出入国在留管理庁は、在留資格に応じた活動以外に収入を伴う事業や報酬を受ける活動を行う場合、あらかじめ資格外活動許可を受ける必要があるとしています。留学生の有償インターンシップでは、包括許可や個別許可の確認が重要です。

文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省合意では、学生のキャリア形成支援に係る取組を類型化し、インターンシップは就業体験を伴う教育的取組として位置付けられています。

JASSOの調査では、2025年5月1日現在の外国人留学生数は408,069人で、過去最多とされています。地域企業や観光施設にとって、留学生との接点づくりは今後さらに重要になります。

【注意点・例外】

報酬がある場合は、資格外活動許可の確認が必要です。

無報酬でも、実態として通常業務に従事させている場合は、労務管理上の問題が生じる可能性があります。

日本国内の大学に在籍する留学生を受け入れる場合と、海外の大学生を日本へ呼び寄せる場合では、必要な在留資格や手続が異なります。

個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。

【出典】

陸奥新報「インバウンド増で双方に利点/青森県弘前の観光施設」2026年6月21日

出入国在留管理庁「資格外活動の許可(入管法第19条)」

出入国在留管理庁「資格外活動許可申請」

出入国在留管理庁「インターンシップをご希望のみなさまへ」

出入国在留管理庁「在留資格『特定活動』(インターンシップ・サマージョブ・国際文化交流)」

文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」

独立行政法人日本学生支援機構「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査」

 

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