この記事のポイント

- 催告や滞納処分を受けても納付意思を示さない場合は、取消しが想定される
- 分割納付を続けている場合や納付猶予を受けている場合は、報道段階では対象外
- 具体的な金額、期間、回数の数値基準は、まだ正式に確認できない
永住者の取消し基準が、少し具体的に見えてきた

2026年7月25日、産経新聞は、税金や社会保険料の不払いを理由に在留資格「永住者」を取り消す際のガイドライン案が判明したと報じました。
2024年に成立した改正入管法では、永住者が「故意に公租公課の支払をしないこと」が新たな在留資格取消事由に加えられています。
施行日は2027年4月1日です。
出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正について」
制度全体については、以前の「税金・年金未納で永住許可は取り消される?」で解説しました。
今回の報道で注目したいのは、法律の説明ではなく、「どのような行動が納付意思なしと評価されるのか」が具体例として示された点です。
なお、2026年7月26日現在、ガイドライン案の全文は入管庁から正式に公表されたことを確認できません。
以下は、報道内容と既に公表されている法令・政府資料を照らし合わせた整理です。最終決定までに内容が変わる可能性があります。
永住許可の新規要件とは別の話

前日に報じられた年収や年金受給見込み額の厳格化は、これから永住許可を申請する人の許可要件に関するものです。
今回のガイドライン案は、すでに在留資格「永住者」を持っている人について、どのような場合にその資格を取り消すのかという話です。
したがって、既存の永住者について、年収が日本人世帯の平均を下回ったことや、年金受給見込み額が一定水準に届かないことだけで取消しになる、という内容ではありません。
この二つは混同しない方がよいでしょう。
取消しが想定されるケース

報道によれば、ガイドライン案では次のような事情が例示されています。
- 自治体などから催告を受けても、納付意思を示さない
- 財産の差押えなどの滞納処分後も、支払う姿勢が見られない
- 脱税により有罪判決を受けた
- 財産を隠すなど、徴収を妨げる不正行為をした
- 滞納額、期間、回数が社会通念上看過できない程度に達している
特に「財産隠し」は、単に支払えないケースとは性質が違います。
徴収を避けるために積極的な行動を取ったことが、悪質性を判断する強い材料になると考えられます。
一方、支払う意思を示し、合意した分割納付を続けている場合や、正式に納付猶予を受けている場合は、取消しの対象外と整理されています。
病気、災害、失業など、本人に責任があるとはいえない事情による未納も対象外とされています。
問われるのは「未納の有無」だけではない

今回の案から見えるのは、滞納残高だけでなく、その後の対応が重く見られるということです。
たとえば、失業して支払いが難しくなった人が、すぐに市区町村や年金事務所へ相談し、分割納付の約束を守っている場合。一方で、支払能力や財産があるにもかかわらず、催告を無視し、財産まで隠していた場合。
同じように未納が残っていても、評価は大きく異なるはずです。
出入国在留管理庁のQ&Aでも、病気や失業などによるやむを得ない未納は取消しを想定しておらず、不払いに至った経緯や督促への対応を個別に判断すると説明されています。
出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」
ただし、差押えによって最終的に徴収されたからといって、それまでの経緯がすべてなかったことになるわけではありません。
自ら相談して納付を続けた場合と、強制的に徴収された場合とでは、「納付意思」の評価に違いが出る可能性があります。
何円、何か月の滞納なら取消しになるのか

現時点では分かりません。
報道では、滞納額、期間、回数が「社会通念上看過しがたい」場合とされていますが、具体的な金額や月数、回数は示されていません。
一度の納付遅れだけで直ちに永住者が取り消される、と読むのは適切ではありません。
一方で、「この金額以下なら安全」という線も、まだ存在しません。
永住者という生活基盤に関わる以上、最終的なガイドラインでは、できる限り具体的で予測可能な基準を示してほしいところです。
取消しが検討される場合の手続

改正法では、出入国在留管理庁が事実関係を調査し、本人から意見を聴いた上で、法務大臣が取消しなどの要否を判断する仕組みが予定されています。
また、取消事由に該当したからといって、必ず直ちに出国となるわけではありません。
改正後の入管法第22条の6では、引き続き日本に在留することが適当でない場合を除き、法務大臣が職権で永住者以外の在留資格へ変更するとしています。
成立法律・令和6年法律第60号
国会答弁では、多くの場合に「定住者」を付与することが想定されています。
ただし、どの在留資格になるかは個別判断です。永住者から定住者へ変われば、在留期間の更新も必要になります。
決して軽い処分ではありません。
2027年4月までに確認したいこと

滞納に心当たりがある場合、まずは放置しないことです。
税務署、市区町村、年金事務所などの徴収機関へ相談し、必要に応じて分割納付、納付猶予、免除などの正式な手続を確認してください。
合意した納付計画は守り、領収書、相談記録、申請書、承認通知なども保存しておくことが大切です。
口頭で一度相談しただけで十分なのかは、現時点では分かりません。
少なくとも、継続して対応していることを後から説明できる状態にしておいた方がよいでしょう。
行政書士としては、「払えない人」と「払えるのに払わない人」を分けて判断する方向自体は重要だと感じます。
ただ、永住者の地位は、本人だけでなく家族、仕事、住宅など日本で築いた生活全体に関わります。曖昧な印象だけで判断されないよう、慎重で透明な運用が求められます。
税金や社会保険料の未納があり、永住者の在留資格への影響が心配な場合は、徴収機関への相談と並行して、早めに在留資格の専門家へ確認することをおすすめします。
4. 記事末尾の整理
【結論】
今回のガイドライン案は、単に未納があるかどうかではなく、催告後の対応、納付意思、財産隠しなどの悪質性を総合的に判断する方向を示しています。分割納付や納付猶予を受けて誠実に対応している場合は、報道段階では取消しの対象外です。
【根拠】
2024年の改正入管法は、「故意に公租公課の支払をしないこと」を永住者の在留資格取消事由に追加しました。改正法附則第25条は、従前の納付状況、現在の生活状況などへの十分な配慮を求めています。
国会の附帯決議でも、定着性や違反の悪質性などの個別事情を厳正に判断し、具体例を示したガイドラインを作成するよう求めています。
【注意点・例外】
- ガイドライン案の全文は、2026年7月26日時点で正式公表を確認できない
- 具体的な滞納額、期間、回数の基準は分からない
- 分割納付や猶予は、徴収機関との正式な手続と継続履行が重要
- 差押えなどで未納が解消されても、それ以前の対応状況が考慮される可能性がある
- 個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要
【出典】
- 出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正について」
- 出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」
- 令和6年法律第60号・成立法律
- 衆議院法務委員会附帯決議等
- 出入国在留管理政策懇談会資料
- 参考情報:産経新聞「外国人の永住資格、税金納付意思なしや財産隠しで取り消し」
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