2026年7月31日、出入国在留管理庁は、今後の出入国・在留管理行政の方向性を示す「第2次出入国在留管理基本計画」を公表しました。
永住許可については、一定水準以上の日本語能力や、日本の制度・ルールなどを学ぶプログラムの受講を、許可の条件とすることを含めて検討する方針が明記されています。
報道の見出しだけを見ると、すでに新しい条件が始まったようにも読めます。
しかし、ここは落ち着いて整理する必要があります。
今回公表されたのは、今後の制度設計に向けた基本計画です。2026年7月31日現在、日本語試験の合格や学習プログラムの受講が、直ちに永住許可の要件になったわけではありません。
この記事のポイント

- 日本語能力と学習プログラムの条件化が正式な基本計画に盛り込まれた
- 日本語の水準、試験、開始時期、経過措置などは決まっていない
- 現時点の永住申請は、現在公表されている永住許可ガイドラインに基づいて審査される
「計画案」から正式な基本計画へ
出入国在留管理基本計画は、入管法第61条の9に基づき、法務大臣が定める政策上の基本計画です。
それ自体が、申請者に直接適用される許可要件の一覧ではありません。一方で、今後のガイドライン改定や審査運用、制度改正の方向を示す重要な文書です。
当事務所でも、以前に第2次出入国在留管理基本計画案の全体像を紹介しました。
今回、計画案に記載されていた永住許可に関する方針が、正式版にも残ったことになります。
単なる報道や政府内の検討情報ではなく、入管庁が今後取り組む政策として正式に位置付けられた。その意味は小さくありません。
永住許可について何が検討されるのか

正式な基本計画では、永住許可制度について、主に次の方向が示されています。
- 一定水準以上の日本語能力を求めること
- 日本語や日本の制度・ルールを学ぶプログラムの受講を条件とすること
- 独立生計要件や国益要件を見直すこと
- 永住許可までの在留資格や在留年数を調査し、審査を厳格に運用すること
つまり、日本語だけが単独で追加される話ではありません。
収入や生活の安定性、公租公課の履行、これまでの在留状況、日本社会で長期的に生活する基盤を、全体として見直す流れの中に日本語能力が置かれています。
なお、別途報道されている年収や年金の具体的な水準について、今回の基本計画本文では金額まで定められていません。基本計画に書かれているのは、独立生計要件や国益要件を今後見直すという方針です。
日本語能力は何級必要になるのか

現時点では、わかりません。
日本語能力試験のN2やN3を求めるのか、別の試験を利用するのか、会話能力と読み書きをどのように評価するのかは公表されていません。
次のような重要事項も未確定です。
- 対象となる申請者
- 認められる日本語試験
- 高齢者や障害のある方への配慮
- 日本人や永住者の配偶者等に対する例外
- 施行日と経過措置
- 施行前に申請した案件の取扱い
「一定水準以上」という言葉だけが先に出ていますが、その水準を具体的な試験名や級に置き換えることはできません。
学習プログラムは、単なる講習参加ではなさそうです

入管庁が2026年7月に公表した法務大臣政務官PT報告書では、「日本語・生活学習プログラム(仮)」の検討内容が示されています。
入国前からICT教材で学べる仕組み、日本語学習と生活上の制度・ルールの学習、理解度の確認、受講状況を管理するシステムなどが想定されています。
永住許可申請や一定の長期在留を目的とする申請について、受講を許可要件とすることも検討対象です。
単に講習へ一度出席すれば終わるというより、学習状況や理解度まで在留審査と結び付ける構想と読めます。
ただし、この報告書も制度の完成版ではありません。具体的な教材、費用、学習時間、受講方法などは今後の検討事項です。
現在の永住申請はどうなるのか

2026年7月31日現在、公表されている「永住許可に関するガイドライン」では、主に次の要件が示されています。
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営める資産または技能があること
- 永住が日本国の利益に合すると認められること
- 納税、年金、健康保険料、入管法上の届出などの公的義務を適正に履行していること
現行ガイドラインには、日本語試験への合格や学習プログラムの受講は要件として掲げられていません。
そのため、今回の報道だけを理由に永住申請を諦めたり、根拠の不明確な民間講座へ急いで申し込んだりする段階ではありません。
一方、申請条件が整っている方は、将来の制度改正をただ待つのではなく、現行基準で申請できるかを早めに確認する意味があります。
もっとも、改定後の基準をいつの時点の申請から適用するのかは公表されていないため、申請時期の判断には注意が必要です。
日本語を求めるなら、学べる環境も必要です

長く日本で生活するうえで、日本語や社会制度への理解が大切であることに異論はありません。
税金、年金、医療、災害時の避難など、制度を知らないことで本人が不利益を受ける場面もあります。
ただ、日本語能力を許可の条件にするなら、試験の点数だけで人の定着性を判断しない配慮も必要だと考えます。
日本で長年働き、納税し、家族を支えてきた人でも、読み書きの試験が得意とは限りません。
年齢、障害、教育歴、生活環境も異なります。
国が日本語や制度理解を求めるのであれば、誰もが無理なく学べる環境、費用負担への配慮、合理的な例外や再受講の機会も一緒に整えるべきです。
共生は、外国人側だけに努力を求めて完成するものではありません。
JESTAは2028年度中の導入を予定

基本計画では、査証免除国から観光などで訪れる外国人をオンラインで事前審査する電子渡航認証制度「JESTA」について、2028年度中の導入に向けてシステム開発を進める方針も示されています。
永住許可とは別の制度ですが、入国前から情報を確認し、デジタル技術を利用して出入国・在留管理を強化するという、今回の計画全体の方向性を象徴する施策です。
永住許可をめぐる制度は、ここ数か月で大きく動いています。
報道段階の情報、基本計画に書かれた方針、すでに施行されている要件を分けて確認することが重要です。
永住申請を検討している方は、現在の在留資格、収入、扶養人数、納税、年金・健康保険料の納付状況などを確認し、現行基準で申請できる状態にあるかを早めに整理することをおすすめします。
4.記事末尾の整理
【結論】
第2次出入国在留管理基本計画には、日本語能力や日本の制度・ルールを学ぶプログラムの受講を、永住許可の条件とすることを含めて検討する方針が正式に盛り込まれました。
ただし、2026年7月31日現在、新しい日本語要件は施行されておらず、必要な日本語水準や開始時期も未定です。
【根拠】
出入国在留管理基本計画は、入管法第61条の9に基づき法務大臣が定める政策上の基本計画です。
正式計画には、日本語能力、学習プログラム、独立生計要件及び国益要件の見直しを含めて検討する方針が記載されています。
【注意点・例外】
日本語試験の種類、必要水準、対象者、免除、経過措置、施行前に申請した案件の取扱いは公表されていません。
個別の申請時期や許可可能性は、在留資格、家族関係、収入、公的義務の履行状況などにより判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
- 出入国在留管理庁「出入国在留管理基本計画」
- 出入国在留管理庁「第2次出入国在留管理基本計画・本文」
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」
- 出入国在留管理庁「日本語・生活学習プログラム(仮)の創設に向けた検討のポイント」
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
参考情報
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