高度専門職の年収要件引上げへ|現行300万円基準と申請前の注意点
「高度専門職を申請したいけれど、今の給与で大丈夫だろうか」。
今回のニュースを見て、そう感じた方もいらっしゃると思います。
時事通信は10月18日、出入国在留管理庁が、在留資格「高度専門職」の最低年収要件を現行の300万円以上から引き上げる方針を固めたと報じました。
記事では、賃金上昇を背景とする有識者の意見を踏まえ、今年度内の省令改正を目指すとされています。
ただし、方針の報道と、実際に適用される新しいルールは区別する必要があります。現時点で確認できた一次資料の範囲では、引上げ後の金額、施行日、申請中・在留中の方への適用方法は確認できませんでした。
具体的にいくらになり、いつから適用されるのかは、まだ分かりません。
「70点あればよい」だけではない高度専門職

高度人材ポイント制は、学歴、職歴、年収などを点数化し、合計70点以上であることなどを求める仕組みです。年収だけで専門性を測る制度ではありません。
出入国在留管理庁
一方、ポイントとは別に、最低年収の条件があります。現行制度を整理すると、次のとおりです。
| 活動の区分 | 在留資格 | 現行の最低年収基準 |
|---|---|---|
| 高度学術研究活動 | 高度専門職1号イ | 最低年収基準なし |
| 高度専門・技術活動 | 高度専門職1号ロ | 300万円以上 |
| 高度経営・管理活動 | 高度専門職1号ハ | 300万円以上 |
例えば、1号ロを検討する方が、学歴や日本語能力などで70点以上を確保できたとしても、年収が300万円に届かなければ、この条件は満たせません。点数と最低年収は、別々に確認する項目です。出入国在留管理庁
また、学術研究に最低年収基準がないことは、収入や活動の実態を問われず許可されるという意味ではありません。
本稿はポイント制を中心に整理しており、別枠の特別高度人材制度「J-Skip」の要件とは分けて考えます。
moj.go.jp
年収は、給与明細の合計だけで判断しない

申請準備では、年収の金額と、その計算の中身を一緒に確認したいところです。
入管庁のQ&Aでは、ポイント計算の報酬は予定年収に基づいて判断され、賞与は含まれる一方、超過勤務手当は含まれないと説明されています。
出入国在留管理庁
例えば、前年は残業が多く、給与の総支給額が高かったとします。
その金額を、そのまま今後の年収としてポイント計算に使えるとは限りません。
雇用契約書や労働条件通知書を確認し、基本給、賞与の支給条件、各手当の性質を整理する。昇給予定がある場合も、実施時期と金額を説明できる資料を用意する。
この確認を先にしておくと、制度が変わった際にも、ご自身への影響を把握しやすくなります。
「会社としてはこのくらい支払うつもり」という説明と、書類で確認できる待遇との間にずれがないか。
行政書士としては、数字そのものと同じくらい、その根拠を大切にしたいと考えています。
「技人国」の外国人も、一律に対象になるのか

今回報じられているのは、高度専門職の最低年収要件の見直しです。
「技術・人文知識・国際業務」の年収基準も同時に一律引き上げられる、と受け取ることはできません。
技人国では、業務内容や学歴・実務経験などに加え、日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上の報酬を受けることが求められます。高度専門職とは、それぞれの基準に沿って判断します。
ジェトロ
高度専門職の条件に届かない場合でも、別の在留資格を検討できることはあります。
ただし、資格の名前だけを置き換えればよいわけではありません。本人の経歴と実際の仕事が、その資格の要件に合っているかを確認する必要があります。
すでに在留している方と、2号を目指す方の注意点

すでに高度専門職で在留している方にとっては、更新時に新基準が適用されるのか、経過措置が設けられるのかが気になるところでしょう。
この点は、今後の省令や公式案内を確認しなければ判断できません。
今回の報道だけを理由に「直ちに在留できなくなる」と考える必要はありませんが、「取得済みなら影響はない」とも言い切れません。
高度専門職1号の在留期間は5年です。ポイント制による通常の2号への移行では、1号で3年以上活動したことに加え、ポイントや素行などの要件を満たし、変更許可を受ける必要があります。
3年たつだけで自動的に2号になる制度ではありません。
出入国在留管理庁
2号の在留期間は無期限ですが、在留資格「永住者」とは別です。長く日本で暮らす計画を立てる際は、2号への移行と永住許可を混同せず、それぞれの条件を確認しておきたいところです。
出入国在留管理庁
給与の見直しは、人材をどう評価するかという話でもある

賃金の変化に応じて制度の基準を見直すという考え方には、理解できる面があります。
ただ、専門性を年収だけで十分に評価できるのかという点は、丁寧に考える必要があると感じます。
研究の成果、若手の成長力、地方企業で担う役割。給与の数字だけでは伝えきれない価値もあります。受入れの適正化と、必要な人材が日本で働き続けられる環境づくり。その両方を見ながら制度が整えられることを望みます。
企業側も、今回のニュースを申請書類だけの問題として捉えず、担当業務と待遇が見合っているか、昇給の仕組みを本人に説明できているかを振り返る機会にしてはいかがでしょうか。
今できる準備は、現在のポイント計算と予定年収を確認し、雇用条件の資料を整えることです。
今後は、正式な改正内容とともに、どの時点の申請から適用するのか、更新や2号への変更ではどう扱うのかを確認する必要があります。
「改正前に出せば大丈夫」と申請を急ぐ判断も、適用関係が分からない段階では勧められません。
情報を待つ部分と、今から整えられる部分を分けて進めることが大切です。
Asocia行政書士法務事務所では、在留資格の選択や申請準備について、活動内容・経歴・雇用条件を踏まえてご相談を承ります。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
4.記事末尾の整理
【結論】
最低年収要件の引上げ方針が報じられましたが、新基準の金額や適用時期は確認できていません。現行のポイントと最低年収を別々に点検し、公式発表に備えることが実務上の第一歩です。
【根拠】
現行制度は、入管庁の高度人材ポイント制の案内、Q&A、優遇措置の説明等に基づいて整理しています。引上げ方針と年度内改正の見通しは、時事通信の報道に基づく情報です。
【注意点・例外】
学術研究・専門技術・経営管理では条件が異なります。J-Skipは別枠の制度です。既存の在留者、申請中の方、更新・2号移行への新基準の適用は未確認です。「年度内改正」は施行日や適用開始日の確定を意味しません。
【出典】
一次情報・公的機関の制度案内
- 出入国在留管理庁:高度人材ポイント制とは?
- 出入国在留管理庁:高度人材ポイント制Q&A(令和8年4月時点)
- 出入国在留管理庁:どのような優遇措置が受けられる?
- 出入国在留管理庁:特別高度人材制度(J-Skip)・未来創造人材制度(J-Find)
- JETRO:2.4 就労資格の種類
参考情報
- 時事通信:「高度外国人材」年収要件上げ 入管庁、賃金上昇受け(2026年10月18日14時07分配信。ご提示の本文を参照)
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