外国人の平均月給29万2,400円|厚労省調査から考える給与と職場定着
「外国人の月給が約29万円になった」というニュースが報じられました。
厚生労働省が2026年8月31日に公表した「令和7年外国人雇用実態調査」では、一般労働者の平均給与が前年より6.4%増えています。
厚生労働省の公表資料
給与水準の上昇は、働く人にとって前向きな動きです。
ただ、見出しの金額だけでは、給与の中身や現場ごとの違いまではわかりません。
外国人を雇用する企業には、自社の採用条件や受入れ体制を点検する材料として読んでいただきたい調査です。
「月給29万円」に含まれるものを確認する

今回の29万2,400円は、2025年9月分の「きまって支給する現金給与額」の平均です。
基本給に各種手当や超過勤務手当を含めた、税金などを差し引く前の金額であり、手取り額ではありません。賞与などの特別給与は別に集計されています。
超過労働給与を差し引いた「所定内給与額」は25万8,400円でした。
こちらも基本給だけを示す数字ではない点に注意が必要です。労働時間は所定内158.7時間に、超過実労働時間17.6時間が加わります。
調査結果の概況・用語の定義と賃金集計
また、「一般労働者」は正社員だけを意味しません。
短時間労働者に該当しない人を指す調査上の区分です。
2026年に公表された資料ですが、給与は2025年の状況を示していることも押さえておきたいところです。
採用時に説明する基本給、残業代を含む月収例、実際の手取り。
この三つを混ぜてしまうと、会社と本人の認識にずれが生まれます。
在留資格別に見ると、上昇の幅には差がある

主な在留資格区分の給与と前年比は、次のとおりです。厚生労働省の公表資料
| 在留資格の区分 | 平均月額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 全体 | 29万2,400円 | 6.4%増 |
| 専門的・技術的分野 | 30万6,500円 | 6.0%増 |
| うち特定技能 | 25万4,100円 | 1.5%増 |
| 技能実習 | 21万3,500円 | 1.7%増 |
| 身分に基づくもの | 34万7,200円 | 13.8%増 |
いずれも一般労働者の「きまって支給する現金給与額」です。
特定技能は専門的・技術的分野の内数で、「身分に基づくもの」には永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者が含まれます。
全体の6.4%増に対し、特定技能は1.5%増、技能実習は1.7%増でした。
外国人全体の平均が上がったという一言だけでは、この違いは見えにくくなります。
もっとも、この表だけでは差が生じた原因はわかりません。職種、年齢、勤続年数、地域などの条件をそろえて検討する必要があります。
同じ人全員の給与が6.4%上がったことを示す数字でもなく、日本人との待遇差をこの表だけで判断することもできません。
人手不足への対応と、活躍への期待

外国人を雇用する理由は、人手不足への対応が68.2%で最多でした。
一方、日本人と同等以上の活躍への期待も56.2%に上ります。複数回答なので、両者は重なり得ます。厚生労働省の公表資料
私は、この二つを一緒に受け止めたいと考えています。
採用のきっかけが人手不足であっても、その後、どの仕事を任せ、どのように育てていくのか。そこまで考えることが、受入れの土台になるはずです。
在留資格の確認でも、実際に担当する仕事が出発点になります。
採用後に予定する業務に本人の在留資格で従事できるか、事前の確認が必要です。厚生労働省の雇用管理指針も、この点を事業主に求めています。
外国人労働者の雇用管理指針
「現場に入ってから仕事内容を決める」という進め方には注意が必要です。
採用担当者と配属先が、任せる業務について同じ理解を持っているかを確かめておきたいところです。
平均給与と、在留資格の報酬要件を分けて考える

給与を決める際、調査の平均額は参考になります。
ただし、それ自体が在留資格の許可基準になるわけではありません。
例えば特定技能では、日本人が従事する場合と同等以上の報酬が求められます。
「平均の25万4,100円を上回るから大丈夫」とは判断できず、同じような仕事や技能水準の日本人との比較などを通じて、報酬の妥当性を説明する必要があります。
出入国在留管理庁・特定技能制度に関するQ&A
労働基準法第3条は、国籍を理由とする賃金などの労働条件の差別的取扱いを禁止しています。
最低賃金法も外国人労働者に適用されます。
厚生労働省・外国人労働者への労働関係法令の適用
実務上は、給与総額だけでなく、基本給、手当の支給条件、残業代の計算、昇給の考え方まで確認したいところです。
申請書類に記載した条件と、実際の給与支給との整合性も大切になります。
「説明した」と「伝わった」の間を埋める

雇用上の課題では、意思疎通の難しさが46.2%、在留資格申請などの事務負担が24.8%でした。
給与を設定するだけでなく、日々の説明や管理にも課題が示されています。
厚生労働省の公表資料
例えば、採用時に「月25万円」と聞いた人が、その全額を受け取れると理解していた場面を考えてみてください。
税金や社会保険料が差し引かれることを共有していなければ、振込額との間に認識のずれが生じます。
給与明細の見本を示す。残業が少ない月の見込みを伝える。控除の理由を、本人が理解できる言葉で説明する。こうした具体的な確認を、契約時と入社後の両方で行いたいと考えます。
私がこの調査から企業に考えていただきたいのは、「自社の給与を、働く本人に納得できる形で説明できるか」という点です。
賃金への納得感と、困ったときに相談できる関係。その両方を育てることが、職場への定着に向けた大切な取組だと思います。
Asocia行政書士法務事務所では、実際の業務内容や雇用条件を踏まえた在留資格の確認・申請を支援しています。
外国人採用や配属内容の判断に迷う場合は、採用を進める段階でご相談ください。
【結論】
平均月給29万2,400円という数字は、給与の内訳や在留資格別の違いと合わせて読む必要があります。企業には、適切な報酬設定と、本人が理解できる説明の両方が求められます。
【根拠】
厚生労働省の「令和7年外国人雇用実態調査」と用語の定義、外国人雇用管理指針、労働基準法第3条、特定技能制度の報酬要件を踏まえて整理しています。
【注意点・例外】
調査は、雇用保険被保険者5人以上で外国人を雇用する事業所などを対象とした標本調査です。平均値の変化だけでは、個々の賃上げや人手不足との因果関係までは判断できません。
報酬要件や業務の適合性は、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報:厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査」(2026年8月31日公表)および「調査結果の概況」、「外国人労働者の雇用管理指針」、出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」。
参考情報:福祉新聞WEB「外国人の月給29万円 雇用理由に『労働力不足』〈厚労省調査〉」(2026年9月12日配信)。
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