育成就労の計画審査基準を公表|自動車整備・ビルクリーニングの準備で確認したいこと
「外国人に任せる仕事は決まっているので、あとは申請書に書けばよい」
育成就労の受入準備では、その先まで考える必要があります。どの作業を経験し、何を身に付け、次の段階へ進むのか。日々の仕事を、育成の流れとして組み立てることが求められます。
外国人技能実習機構は2026年9月30日、自動車整備分野とビルクリーニング分野の運用要領の改正を案内しました。
otit.go.jp
両分野の育成就労計画審査基準が別紙として掲載され、技能実習経験者の取扱いに関する説明も修正されています。
受入企業や監理支援機関にとって、現場の作業と計画を照らし合わせるための資料が具体化された形です。
今回の改正で、何が具体化されたのか

新旧対照表では、主たる技能や必須業務の参照先が、今後示す予定の審査基準から、公表された別紙へ変更されています。別紙の新規制定も明記されました。
審査基準には、技能の定義、必須業務、安全衛生業務、その他従事する業務の例、使用する器具や材料などが示されています。
1年目と2・3年目で、求められる作業の内容も分かれています。
各分野の審査基準・新旧対照表
今回の中心は、計画に盛り込む内容を具体的に確認できるようになったことです。
運用要領の改正日と、制度による就労開始の時期は分けて確認する必要があります。
自動車整備は、業務区分と育成の段階を確認する

自動車整備分野の審査基準は、「自動車整備」と「車体整備」の二つの業務区分について掲載されています。同じ整備工場でも、本人にどの技能を身に付けてもらうのかによって、見るべき項目が異なります。
補助作業から、点検・整備の技能へ
自動車整備業務区分では、1年目に各装置の点検項目の良否判定や整備に関する補助作業を行い、2・3年目には点検・整備作業に加えて、分解整備や測定機器を用いた判定などを行う構成です。
車体整備業務区分では、板金・塗装に加え、段階に応じて車体やフレームの修正などが示されています。損傷診断と一定の特定整備作業には、3年目のみとする記載もあります。
実務上は、「整備の仕事を教える」という説明を、いつ、どの作業を、どの設備で経験させるかまで具体化したいところです。
自動車整備業務区分の洗車や車内清掃などは、付随的に従事できる関連業務の例です。
洗車を担当させる予定だけで、必須業務の育成まで満たせると考えるのは慎重であるべきでしょう。
ビルクリーニングは、清掃の場所と道具まで見る

ビルクリーニングの主たる技能は、不特定多数の利用者が利用する建築物の内部について、場所や建材、汚れに応じて方法・洗剤・用具を選び、清掃する技能として整理されています。
対象の定義からは、戸建て住宅や共同住宅の専有部分などが除かれています。
ビルクリーニングの審査基準
「清掃業だから利用できる」と業種名だけで判断するのではなく、どの建物の、どの部分を清掃するのかまで確かめる必要があります。
1年目は、器具や資材の準備・片付け、備品等の移動・原状復帰、用具の使い方を覚えるための清掃補助などが示されています。
2・3年目には、日常清掃や定期清掃が位置付けられています。
審査基準には、1年目に経験すべき部位や使用すべき器具・資材等の指定もあります。
毎日同じ場所を同じ道具で清掃する配置で、必要な内容を経験できるか。受入前に現場責任者と確認しておきたい点です。
植栽管理や現場間の資機材運搬は、付随的に従事できる関連業務の例です。
必須業務と、付随的な作業の役割を区別して計画を組み立てます。
安全衛生も、育成の中に組み込む

両分野の審査基準には、雇入れ時等の安全衛生教育、作業前の安全確認、保護具の確認、事故・疾病の予防、異常時の対応などが示されています。
現場では、安全の説明を一度しただけで、理解できたかが曖昧になることも考えられます。
実務上は、本人に動作を示してもらう、理解できる言葉や教材を使うなど、確認の方法まで準備しておきたいところです。
仕事の手順と安全の指導を一緒に考えることが、無理のない育成につながると私は考えます。
「2年を超えて」は、移行の最低期間ではない

もう一つの修正は、技能実習経験者に関する説明です。ここは、数字だけを切り取らずに読む必要があります。
両分野の運用要領では、技能実習を2年を超えて行っている場合、対応表で示された業務区分以外の育成就労を行わせることができないと説明されています。
この期間の表現が「2年以上」から「2年を超えて」へ修正されました。
両分野の新旧対照表
つまり、対応する業務区分以外での育成就労を制限する説明です。「2年を超えて実習すれば育成就労へ移行できる」という最低期間の要件ではありません。
ちょうど2年の場合は、この期間要件による制限の対象には含まれません。ただし、それだけで移行できるとは判断できません。通算期間など、ほかの認定基準の確認も必要です。
同じ説明には、技能実習を3年以上行っている場合は育成就労計画の認定を受けられないことも示されています。
本人の実習期間、職種・作業、目標となる試験と、育成就労の業務区分を合わせて確認することが大切です。
計画書を作る前に、現場で経験できるかを確かめる

行政書士としておすすめしたいのは、審査基準を人事担当者だけで読まず、現場責任者とも共有することです。
実務上の点検では、必須業務を経験できる仕事量があるか、必要な設備や器具を使えるか、指導する人を配置できるか、年次に応じて作業の段階を上げられるかを確認します。
分野別の事業場・営業所の要件なども、仕事内容とは別に点検が必要です。
書類上は幅広い作業を記載できても、現場で実際に経験できなければ、育成の予定は進みません。忙しい時期にも指導できるかという視点が、計画を作る段階で役立ちます。
今回の改正に伴う申請済み案件への一律の追加資料要求や補正の取扱いは、確認した資料からはわかりません。準備中・申請中の案件では、最新資料と個別の案内を確認してください。
受入れの可否や技能実習経験者の取扱いは、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
Asocia行政書士法務事務所では、育成就労の受入準備や、現場の業務と計画の整理についてご相談を承っております。
4.記事末尾の整理
【結論】
今回の改正では、両分野の計画審査基準が別紙として具体化されました。仕事の名称だけでなく、必須業務、安全衛生、年次ごとの育成内容を現場で実施できるか確認することが大切です。
【根拠】
2026年9月30日の改正案内、両分野の運用要領・新旧対照表、別紙の育成就労計画審査基準に基づきます。指導方法や社内での点検方法は、資料を踏まえた実務上の提案です。
【注意点・例外】
「2年を超えて」への修正は、対応する業務区分以外での育成就労に関する制限の説明です。移行を認める最低期間の要件ではありません。ほかの認定基準も含めて個別確認が必要です。申請済み案件への今回の改正に伴う一律の補正等の取扱いは未確認です。
【出典】
一次情報(確認日:2026年10月1日)
- 外国人技能実習機構「分野別運用要領(自動車整備分野及びビルクリーニング分野)を改正しました」
- 外国人技能実習機構「分野別運用方針・告示・運用要領等」(各分野の本文・別紙・2026年9月30日改正の新旧対照表)
- 厚生労働省「制度の概要(ビルクリーニング分野特定技能・育成就労)」
- 厚生労働省「育成就労計画審査基準・ビルクリーニング」
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