技能実習生の失踪者が39.3%減少|数字の裏側にある受入れ現場の課題
2026年7月17日、出入国在留管理庁は技能実習生の失踪者数に関する最新情報を公表しました。
2025年、令和7年に失踪した技能実習生は3,950人。前年の6,510人から2,560人減り、減少率は39.3%となりました。
技能実習生数に占める割合も0.6%まで低下しています。
数字だけを見れば、大きな改善です。
ただ、行政書士としてこの数字を見ると、「減ったから問題は解決に向かっている」と簡単には言い切れません。
むしろ、これから始まる育成就労制度に向けて、何が改善され、何が残っているのかを考える材料にすべきだと思います。
この記事のポイント

- 2025年の失踪者数は3,950人で、前年から39.3%減少した
- 「失踪者」として集計された全員が現在も所在不明とは限らない
- 失踪防止には、監視ではなく待遇、説明、相談体制の見直しが必要
- 育成就労制度では本人意向による転籍が認められるが、無条件ではない
2025年の失踪者数は3,950人

入管庁の資料によると、技能実習生の失踪者数は2023年の9,753人をピークに、2024年が6,510人、2025年が3,950人と、2年連続で大きく減少しました。
また、2021年から2025年までに失踪者として集計された3万6,386人のうち、2026年5月31日時点で所在が確認できていない人は6,609人とされています。
出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数の推移」
ここで注意したいのが、「失踪者数」の意味です。
この統計は、監理団体や実習実施者から外国人技能実習機構に提出された「技能実習実施困難時届出書」のうち、行方不明を理由とするものを集計しています。
届出後に所在が確認された人や、退去強制手続などで入管庁が所在を把握した人も含まれます。そのため、3,950人全員が現在も所在不明という意味ではありません。
ニュースの見出しだけでは、この違いが抜け落ちやすいところです。
なぜ失踪者が減ったのか

今回の統計資料だけでは、失踪者が減少した原因までは示されていません。
推測ですが、失踪者を多く発生させた送出機関からの新規受入れ停止、実習実施者への実地検査、送出費用や違約金に対する確認、受入れ企業側の待遇改善などが複合的に影響した可能性はあります。
ただし、因果関係はわかりません。「対策が成功した」と断定できる段階ではないでしょう。
国土交通省が建設分野で行った実態調査では、回答企業における失踪・行方不明者のうち、技能実習1号が55.1%、2号が33.7%でした。
合計すると88.8%が来日からおおむね3年以内の技能実習生です。
失踪者が1人だけだった企業は55.8%で、残りの企業では複数人が失踪していました。個人だけの問題ではなく、同じ職場や受入れ体制に共通する事情がなかったかという視点も必要です。
国土交通省「外国人技能者の失踪等に関する実態調査」
失踪防止は「管理を厳しくすること」ではない

失踪が発生すると、受入れ企業では「外出や交友関係をもっと管理すべきだったのではないか」という話になりがちです。
しかし、本人の意思に反して旅券や在留カードを保管する行為は技能実習法で禁止され、罰則の対象となる場合があります。
失踪防止を理由に行動を過度に制限することも適切ではありません。
技能実習制度運用要領・技能実習生の保護
実務上確認したいのは、むしろ次のような点です。
- 雇用契約書に記載した賃金と実際の支給額が一致しているか
- 家賃、水道光熱費、食費などの控除内容を本人が理解しているか
- 残業時間や休日が説明どおりになっているか
- 母国語で相談できる窓口を本人が知っているか
- 監理団体の面談が形式的な確認だけになっていないか
- 本国で高額な借金や送出費用を負担していないか
日本人の従業員なら口にできる不満でも、在留資格や会社との関係を気にして言えない外国人は少なくありません。
「何も言わないから問題はない」と考えるのは危険です。何も言えないまま、ある日突然いなくなる。その前段階を受入れ側が見落としていなかったかを振り返る必要があります。
育成就労制度では本人意向による転籍が始まる

2027年4月から始まる育成就労制度では、一定の要件を満たした場合に、外国人本人の意向による転籍が認められます。
転籍制限期間は分野ごとに1年から2年の範囲で設定され、技能や日本語能力、転籍先の適正性なども確認されます。自由にいつでも転職できる制度ではありません。
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
それでも、「職場を変えるには失踪するしかない」と感じさせてしまう構造を改める点では、大きな意味があります。
一方、転籍を制度上認めるだけで、問題がすべて解決するわけではありません。賃金、送出費用、人間関係、日本語教育、生活支援が不十分であれば、制度の名前が変わっても同じ問題は残ります。
今回の3,950人という数字は改善の兆しです。
しかし、まだ年間3,950人が実習の現場から姿を消したという事実でもあります。
受入れ企業に必要なのは、外国人を逃げないように管理する発想ではなく、「ここで働き続けられる」と思える職場をつくることではないでしょうか。
技能実習や育成就労、特定技能外国人の受入れでは、在留資格の手続だけでなく、雇用条件や支援体制を含めた事前設計が重要です。
受入れ方法や制度移行に不安がある場合は、実際の雇用内容を整理したうえで早めに専門家へ相談することをおすすめします。
4.記事末尾の整理
【結論】
技能実習生の失踪者数は大幅に減少しましたが、問題が解消したとはいえません。受入れ企業には、監視の強化ではなく、待遇、説明、相談体制を継続的に確認する姿勢が求められます。
【根拠】
2025年の技能実習生の失踪者数は3,950人で、前年比2,560人、39.3%の減少です。技能実習生数に占める割合は0.6%となっています。
【注意点・例外】
「失踪者数」は届出件数を基礎とした統計であり、全員が現在も所在不明という意味ではありません。失踪原因も個別事情によって異なり、統計だけで原因や責任を断定することはできません。
【出典】
一次情報
- 出入国在留管理庁「外国人技能実習制度」
- 出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数の推移」
- 国土交通省「外国人技能者の失踪等に関する実態調査」
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
- 外国人技能実習機構「技能実習制度適正実施マニュアル」
参考情報
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