永住許可要件を厳格化へ|年収・年金・配偶者特例はどう変わるのか
この記事のポイント

- 永住許可に年収、年金受給見込み額などの基準を追加する方針が報じられた
- 「厚生年金に30年間加入済みでなければならない」という意味ではない
- 具体的な年収額、年金の計算方法、配偶者への適用範囲はまだ正式公表されていない
永住許可の入口そのものを狭くする見直し

2026年7月25日の読売新聞は、政府が外国人の永住許可要件を厳格化し、年収や将来の年金受給見込み額を新たな評価基準に加える方針を固めたと報じました。
報道された内容を現行制度と比べると、次のようになります。
| 論点 | 現行の公表基準 | 報道された新方針 | 報道上の適用時期 |
|---|---|---|---|
| 年収 | 一律の金額基準は公表されていない | 日本人世帯の平均収入を継続して上回る | 2026年10月 |
| 年金 | 保険料の期限内納付を審査 | 厚生年金30年加入相当の受給見込み額を求める | 2027年4月 |
| 資産 | 独立生計要件の中で総合評価 | 年金不足を補える金融資産も評価 | 2027年4月 |
| 配偶者特例 | 婚姻3年以上、日本在留1年以上 | 婚姻5年以上、日本在留3年以上 | 2027年4月 |
| 社会生活 | 公的義務の履行などを評価 | 制度・生活習慣の理解、不就学を消極評価 | 2027年4月 |
現在公開されている正式な資料は、出入国在留管理庁の2026年2月24日改訂版「永住許可に関するガイドライン」です。
026年7月25日時点では、今回報じられた具体的な基準を盛り込んだ新ガイドラインは確認できません。
政府の方針と、実際の申請に使用される審査基準は、いったん分けて考える必要があります。
「厚生年金30年水準」は30年間の納付実績ではない

この報道で最も誤解されやすいのが、「厚生年金30年」という表現です。
報道内容をそのまま読む限り、永住申請前に日本で30年間厚生年金へ加入していなければならない、という要件ではありません。
想定されているのは、その年収水準で厚生年金に30年間加入した場合に受給できる年金額を基準とし、申請者の将来の年金受給見込み額がその水準に達しているかを確認する仕組みです。
不足する場合には、預貯金などの金融資産で補えるかも評価するとされています。
もっとも、どの年齢時点の見込み額を使うのか、若年者をどう評価するのか、国民年金期間や海外の年金加入期間をどう扱うのかは、現時点ではわかりません。
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」の見込み額をそのまま使うのかも未確認です。ここは正式な計算方法を待たなければ、具体的な許可可能性を判断できません。
先ほども述べた通り、まだ不透明なところが多いので今後の情報を待つしかありません。
「日本人世帯の平均超え」はかなり高い基準になる可能性

現行ガイドラインは、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」と定めていますが、全申請者に共通する一律の年収額は公表していません。
これに対して、新たな指針では「日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達している」ことを明記すると報じられています。
参考として、厚生労働省の2025年国民生活基礎調査では、全世帯の1世帯当たり平均所得金額は575万2,000円、中央値は451万円でした。平均所得以下の世帯は61.5%です。
ただし、今回の報道がこの統計を使うという意味ではありません。
「日本人世帯」の範囲、申請者個人の年収か世帯収入か、額面収入か課税所得か、扶養家族数や地域差を考慮するかも明らかではないからです。
推測ですが、単年度に一度だけ基準を超えればよいのではなく、複数年の課税証明書などを通じて収入の継続性まで確認する運用になる可能性があります。
「継続して」という言葉は、実務上かなり重いものです。
日本人・永住者の配偶者への適用は慎重に確認したい

現行ガイドラインでは、日本人、永住者、特別永住者の配偶者について、実体を伴う婚姻生活が3年以上続き、かつ日本に1年以上在留していれば、原則10年在留の特例を利用できます。
新方針では、これを「婚姻5年以上、日本在留3年以上」に延長すると報じられました。
海外で婚姻生活を送り、その後日本へ移住した国際結婚世帯には、特に大きな影響が出ます。
ここで注意したいのは、入管法第22条上、日本人、永住者、特別永住者の配偶者や子については、素行善良要件と独立生計要件への適合を要しないとされている点です。
新しい年収・年金基準が配偶者にも同じように適用されるのか、国益適合要件の中で別途評価されるのかは、今回の報道だけでは判断できません。
「配偶者なら年収基準は関係ない」とも、「すべての配偶者に一律適用される」とも、まだ断定しない方がよいでしょう。
子どもの不就学をどう評価するのか

新たな指針では、義務教育年齢の子どもを就学させていない場合、永住審査で消極的に評価する方針も報じられています。
一方、文部科学省は、外国人の子どもの保護者には学校教育法上の就学義務は課されていないと説明しています。
希望する場合には、公立学校へ日本人と同様に無償で受け入れる仕組みです。
文部科学省の就学手続Q&A
つまり、法律上の就学義務とは別に、永住者として日本社会で安定して生活できるかという審査上の評価が加わることになります。
外国人学校への通学、病気や障害、いじめ、入学待ち、家庭学習など、就学していないことに合理的な事情がある場合もあります。
「不就学なら直ちに不許可」という単純な運用にならないよう、例外や説明方法の明確化が必要です。
今からできる準備

永住申請を検討している方は、報道だけを見て慌てて申請するのではなく、まず自分がどの申請ルートに該当するかを確認する必要があります。
収入については、課税証明書や納税証明書を並べ、年ごとの変動、扶養人数、転職や休職の理由を確認します。
年金については、加入記録、納付状況、将来の受給見込み額を早めに把握しておいた方がよいでしょう。
子どもが外国人学校などに通っている場合は、在学証明書や教育内容がわかる資料を残します。
就学していない事情がある場合は、その経緯と現在の学習状況を説明できるようにしておくことも重要です。
なお、「婚姻5年・日本在留3年」という報道上の特例と、現在持っている在留期間が「3年」か「5年」かという問題は別の話です。
数字が似ているため、混同しないよう注意してください。
永住許可は、単に長く日本に住んだ人へ与えられる資格から、収入、老後の生活基盤、家族の教育、社会制度への理解まで確認する制度へ変わろうとしています。
審査の入口が、かなり多面的になる印象です。
ただし、具体的な金額や適用対象が確定していない段階で、申請を諦める必要はありません。
正式なガイドラインと経過措置を確認し、個別事情に合わせて準備することが大切です。
在留歴、家族構成、収入、年金加入状況によって判断は大きく変わります。
永住申請の時期に迷う場合は、申請前に資料を整理したうえで専門家へ相談することをおすすめします。
4. 記事末尾の整理
【結論】
永住許可は、年収だけでなく、将来の年金、金融資産、家族の就学状況、社会制度への理解まで審査する方向へ厳格化が進んでいます。ただし、具体的な金額や配偶者への適用範囲はまだ正式公表されていません。
【根拠】
- 現行の永住許可要件は入管法第22条及び永住許可ガイドラインに基づく
- 日本人・永住者等の配偶者は、現在は婚姻3年以上、日本在留1年以上が在留年数特例
- 2026年7月25日付の読売新聞が、年収・年金・就学状況等の新基準を報道
- 2025年国民生活基礎調査では、全世帯の平均所得金額は575万2,000円
【注意点・例外】
- 厚生年金へ実際に30年間加入済みであることを求めるとの報道ではない
- 使用される所得統計や具体的な基準額は未公表
- 日本人・永住者等の配偶者や子への年収基準の適用方法は不明
- 外国人学校への通学や合理的理由のある不就学がどう評価されるかも未確認
- 申請済み案件や施行日前後の案件に関する経過措置を確認する必要がある
【出典】
一次情報
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
- 厚生労働省「2025年国民生活基礎調査の概況」
- 文部科学省「外国人の子等の就学に関する手続」
- 内閣官房「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議(第3回)」
参考情報
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