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TOP > コラム > 「出勤不要で技人国」は通用する?悪質ブローカーと虚偽申請の重大リスク

「出勤不要で技人国」は通用する?悪質ブローカーと虚偽申請の重大リスク

2026.09.24
コラム不法就労外国人支援外国人雇用就労ビザ技術・人文知識・国際業務ビザ法改正
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「出勤不要で技人国」という広告は、制度の抜け道なのか

2026年8月20日、週プレNEWSが、在留資格「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる技人国をめぐる悪質な仲介ビジネスについて報じました。

中国系SNSには、「日本語不要」「出勤不要」「正社員の身分を取得できる」といった広告があり、実際に働かない外国人を名義貸し企業に所属させる仕組みが持ちかけられているといいます。

もし報道どおり、存在しない業務を記載したり、働く実態がないのに雇用契約や給与支払いを装ったりしているのであれば、それは「抜け道」ではありません。

在留資格の不正取得、いわゆる偽装滞在が疑われる行為です。

一方で、この問題を技人国で働く外国人全体の問題として捉えるのも正確ではありません。

2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、技人国は47万5,790人、技能実習は45万6,618人でした。外国人労働者は2025年10月末時点で257万1,037人です。

いずれも増加していることは事実ですが、名義貸しによって在留している人数を示す公的統計は確認できません。
出入国在留管理庁の在留外国人統計、厚生労働省の外国人雇用状況

技人国は「会社員という身分」を買う制度ではない

技人国は、単に日本企業と雇用契約を結べば取得できる在留資格ではありません。

日本の企業などとの契約に基づき、自然科学・人文科学の専門的な技術や知識を必要とする業務、または外国文化に基盤を持つ思考・感受性を必要とする業務に、実際に従事することが前提です。

大学卒業も、それだけで許可される万能の条件ではありません。

学歴や実務経験、専攻内容と業務との関連性、業務の専門性、企業側の事業実態、十分な業務量、日本人と同等以上の報酬などが総合的に審査されます。

書類上の職種を「システムエンジニア」としていても、実際には業務を行っていない、または工場のライン作業に従事しているのであれば、技人国の活動を行っているとはいえません。

在留資格は名札ではなく、「日本で何をしているか」に付与されるものです。

ここを見失うと、形式を整えただけの雇用は簡単に崩れます。

2026年3月の派遣に関する変更

2026年3月9日以降、派遣形態による技人国の申請では、派遣元と派遣先それぞれの誓約書、労働条件通知書、労働者派遣個別契約書などの提出が求められるようになりました。

更新申請では、派遣元管理台帳、派遣先管理台帳、就業状況報告書も確認されます。
派遣元と派遣先は、入管による事情聴取や実地調査等に応じることも誓約します。
出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」

ただし、「派遣先が申請時に決まっていなければ、例外なく申請できない」とまで言い切るのは正確ではありません。

入管庁が2026年7月に公表したQ&Aでは、新規採用者に研修を受けさせた後に派遣先を決定するため、申請時に確定できない場合について、限定的な取扱いが示されています。

したがって、派遣先未定の案件は個別事情により判断が分かれるため、事前に専門家への確認が必要です。
入管庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項」

今回の変更は派遣そのものを禁止したのではなく、「誰が、どこで、どの業務を、どの期間行うのか」を見えるようにしたものと捉えるのが適切です。

2026年4月から技人国全体にN2が必須になったわけではない

報道では「中小企業が通訳や接客名目で雇う場合にN2以上が必須化された」と説明されていますが、もう少し正確に整理する必要があります。

2026年4月15日以降の申請で、所属機関がカテゴリー3または4に該当し、主に言語能力を使った対人業務等に従事する場合、業務で使用する言語についてCEFR・B2相当の能力を証明する資料が追加されました。

使用言語が日本語の場合、JLPT・N2以上やBJT400点以上などが証明方法として示されています。しかし、すべての技人国申請者にN2を求める制度ではありません。

カテゴリー3・4は企業規模だけで決まるものでもなく、ITエンジニアなど言語業務を主としない職種に一律適用される要件でもありません。

また、カテゴリー1・2は一部の提出資料が原則省略されますが、実体的な許可要件まで免除されるわけではありません。

「カテゴリー1・2企業だから通りやすい」という営業文句には注意が必要です。

名義貸しは外国人だけでなく企業側にも重大なリスクがある

虚偽の職務内容や雇用実態を使って在留資格を取得した場合、外国人本人には在留資格取消しや刑事罰の可能性があります。

入管法第22条の4は、不正な手段による許可取得のほか、技人国に対応する活動を行わず、他の活動を行い、または行おうとして在留している場合などを取消事由としています。

営利目的で不正取得を手助けしたブローカーや、事情を知りながら名義を貸した企業についても、在留資格等不正取得を助長した責任や、不法就労助長などが問題となる可能性があります。

具体的な犯罪の成否は、関与の程度や認識など個別事情によって判断されます。
e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」

給与をいったん会社に送金し、会社から給与として戻してもらう。社会保険にも加入する。こうした資金の往復だけで、本当の雇用が生まれるわけではありません。

業務指示、勤怠、成果物、取引先とのやり取り、給与の原資、税務・社会保険関係の記録まで確認されれば、書類と実態のずれは表面化します。

求職者に「面接料」を請求するエージェントにも注意

職業紹介を事業として行うには、原則として厚生労働大臣の許可が必要です。
国外にわたる職業紹介についても、国内の職業紹介事業者と国外取次機関との関係などが確認されます。

求職者本人からの手数料徴収は原則禁止です。
ただし、芸能家、モデル、一定年収を超える経営管理者や科学技術者など、限定的な例外があります。

したがって、一般的な求人について「一次面接を受けるために10万円」「内定を出すために紹介料が必要」と請求された場合は、支払う前に事業者の許可、手数料表、契約内容を確認すべきです。

領収書の発行を拒む、在留資格の許可を保証する、業務内容を説明しないといった対応も危険な兆候です。
石川労働局「職業紹介事業とは」

厳格化と適正な受入れは、対立する話ではない

在留資格を適正に運用することと、外国人を受け入れないことは同じではありません。

企業が最初に考えるべきなのは、「どの在留資格なら採用できるか」ではなく、「実際にどのような仕事を任せるのか」です。

その業務が技人国に当てはまるのか、特定技能など別の在留資格が適切なのかを後から判断します。

制度に合わせて架空の職務を作るのではなく、実際の仕事から在留資格を選ぶ。この順番を守るだけでも、多くの問題は防げます。

今回の報道は、悪質な勧誘の存在に警鐘を鳴らす意味があります。
ただし、「技人国が約27万人まで減る」「取得者の目的は社会保障である」といった見方は、専門家の予測や分析であり、2026年8月20日現在、入管庁による公式な見通しや統計としては確認できません。

真面目に働く外国人と、適正に雇用している企業まで疑いの目で見るのではなく、不正な仲介と実体のある雇用を丁寧に分けて考える必要があります。

在留資格申請や外国人雇用の判断は、雇用契約書の名称だけでなく、実際の業務内容や指揮命令関係、学歴・職歴との関連性によって結論が変わります。採用や申請を進める前に、実態に即した確認を行うことが重要です。

4.記事末尾の整理

【結論】

「出勤不要」「名義だけで正社員」といった技人国の取得方法は、制度上認められた抜け道ではありません。企業と外国人の双方が、契約書と実際の業務を一致させることが最も重要です。

【根拠】

2026年3月9日以降の派遣関連資料の追加、同年4月15日以降のカテゴリー3・4における言語能力資料の追加、入管法第22条の4、第70条、第74条の6、職業安定法上の職業紹介手数料規制に基づき整理しています。

【注意点・例外】

技人国全体にJLPT・N2が必須となったわけではありません。派遣先未確定の申請にも限定的な取扱いがあります。求職者手数料にも一部の職業・年収について例外があるため、個別事情による確認が必要です。

報道された名義貸しの利用人数、社会保障利用を主目的とする人数、技人国在留者が将来27万人程度まで減少するとの予測について、公的な裏付けは確認できません。

【出典】

一次情報

  • 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」
  • 出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項」
  • 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数」
  • 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ」
  • e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
  • 厚生労働省「職業紹介事業について」
  • 出入国在留管理庁「経営・管理に係る上陸基準省令等の改正」

参考情報

  • 週プレNEWS「外国人就労ビザ厳格化で悪徳移民ブローカーが暗躍中!」

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播磨 史雄

この記事の執筆者

播磨 史雄 代表 入管取次行政書士

平成23年行政書士登録、同年開業。法人設立・補助金業務のほか、2018年より新潟県委託の外国人材受け入れサポートセンター相談員として入管業務にも従事。

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