入管の不法就労捜査に電子鑑識――企業が確認したい採用経路と実際の働き方
「在留カードは確認しています」
「紹介会社から、働ける人だと聞いています」
外国人を採用する企業にとって、大切な確認です。ただ、それだけで、自社で任せる仕事まで問題ないと判断できるでしょうか。
2026年10月24日、読売新聞オンラインは、出入国在留管理庁が2027年度から、不法就労の捜査にデジタル・フォレンジック、いわゆる電子鑑識を導入すると報じました。
外国人本人だけでなく、雇用主や仲介者の関与を明らかにする狙いがあるとしています。
ライブドアニュース
電子鑑識とは何か――今回報じられた内容

報道によれば、押収したスマートフォンやパソコンの電子データを復元・解析し、雇用の実態や仲介者の特定につなげる計画です。
関連経費5,000万円を、2027年度予算の概算要求に計上したとされています。
ライブドアニュース
電子鑑識は、電子データを調べて事実関係を明らかにするための手法です。
今回の記事が扱うのは、捜査で押収した端末の解析です。
導入時期と金額は、読売新聞の報道に基づく情報です。今回確認した範囲では、これらを直接裏付ける入管庁の一次資料は確認できていません。
予算が成立した、機器の導入が完了した、と説明できる段階ではありません。
企業側が注目したいのは、誰が仕事を紹介し、どのような条件を伝え、実際に何をさせていたのかという点です。
書面上の職種名だけでなく、働き方の中身を説明できる状態にしておくことが大切だと考えます。
在留カードの確認と、仕事内容の確認を一組にする

不法就労への対応では、在留資格や在留期間に加え、予定する仕事が認められた活動の範囲に入るかを確認する必要があります。
厚生労働省の外国人雇用管理指針も、採用後に従事する業務について、在留資格上、従事することが認められるかをあらかじめ確認するよう定めています。
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なお、選考時は口頭・書面で在留資格等を確認し、カードの提示は採用内定後に求める、という配慮も必要です。
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例えば、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ方を採用するとします。
カードを見て「就労できる資格だから大丈夫」と判断しても、自社で予定する仕事との適合性を確認したことにはなりません。
担当業務を「総合職」「外国人対応」とだけ書くのではなく、誰に対して何を行うのか、通常の一日の業務はどうなっているのかまで整理したいところです。
留学や家族滞在の方が資格外活動許可を受けて働く場合には、許可の有無だけでなく、認められた活動内容や期限等の確認も必要です。
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なお、永住者など活動内容に制限のない在留資格もあります。外国人雇用をすべて同じ条件で扱わず、本人の資格に応じて確認することが前提になります。
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紹介会社の説明を、自社の確認につなげる

「紹介された人なので、詳しいことは紹介会社に聞いてください」
採用後にこうした状態になると、本人と企業の認識がずれていても、原因をたどりにくくなります。
厚生労働省の指針では、外国人のあっせんを受ける際には、適法な職業紹介事業者等を利用し、違法な紹介や派遣を行う者から受けないことを求めています。
また、紹介事業者等に対しても、業務内容や労働時間、賃金などの条件を明示するよう示しています。
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実務上は、契約相手の正式名称、担当者、紹介や派遣の仕組み、必要な許可等を確認し、誰とどのような契約を結んでいるかを整理する方法が考えられます。
知人からの紹介やSNSを通じた応募というだけで、直ちに違法と判断するものではありません。ただ、「連絡先しかわからない」「誰が条件を説明したかわからない」という状態は、解消しておきたいところです。
入管庁の案内でも、不法就労であることを知らなかった場合であっても、在留資格を確認していないなどの過失があれば処罰を免れないと説明されています。
紹介者の説明を聞くことと、自社が必要な確認を行うことは、両方が必要です。
出入国在留管理庁
採用時の説明が、現場まで届いているか

私が特に気になるのは、人事担当者が把握している仕事と、現場で日々指示される仕事の違いです。
例えば、採用時には通訳を担当すると説明していたものの、配属先では別の作業が中心になっていたとします。これは想定例ですが、雇用契約書に「通訳」と記載されていても、その記載だけで実際の活動が認められるわけではありません。
担当業務の適否は、活動全体や個別事情を踏まえて判断する必要があります。「少し違う仕事をしたら必ず違反」と単純化するのも適切ではありません。
だからこそ、異動や配置変更の際には、変更後の仕事を人事担当者と現場責任者で共有することをおすすめします。
すべての異動に在留資格変更が必要という意味ではなく、資格の範囲を外れる働かせ方になっていないかを点検するためです。
本人にも、理解できる言語や平易な日本語で仕事内容を説明したいところです。
「会社は説明したつもりだった」という行き違いを減らすことは、本人を守ることにもつながります。
記録を整える目的は、働き方を正確に把握すること

今回の報道によって、企業に新たなSNSの保存義務が生じたと説明することはできません。
一方、労働条件の明示、労働者名簿や賃金台帳等の調製、適切な労働時間の把握は、従来から確認すべき事項です。
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私としては、書類を増やすことより、契約内容と実際の勤務に違いがないかを確認し、違いがあれば理由と必要な対応を整理することが重要だと考えています。
社内では、例えば次のように確認項目をまとめる方法があります。
| 確認する場面 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 採用内定後・就労開始前 | 在留資格、在留期間、就労制限や必要な許可、担当業務 |
| 紹介・派遣等の利用時 | 契約相手、紹介経路、事業の適法性、提示した労働条件 |
| 配属・異動時 | 実際の業務と採用時の説明との整合性 |
| 雇用継続中 | 更新状況、必要な手続、勤務内容や時間の変化 |
これは今回の報道で新設された義務の一覧ではなく、筆者が提案する実務上の点検項目です。
外国人の方が安心して働き、企業も雇用の状況を説明できる。そのための確認を、採用担当者だけに任せず、現場と共有していきたいと思います。
外国人採用や在留資格に応じた業務内容の整理については、Asocia行政書士法務事務所へご相談ください。採用予定の仕事や現在の勤務状況を確認し、必要な準備をお手伝いいたします。
4.記事末尾の整理
【結論】
電子鑑識の導入は、現時点では報道に基づく計画として整理する必要があります。企業には、在留資格と担当業務の適合性、紹介・仲介経路、労働条件と現場での指示内容を確認することが求められます。
【根拠】
導入計画・概算要求額は読売新聞オンラインの報道によります。雇用管理に関する説明は、厚生労働省の外国人雇用管理指針・リーフレットと入管庁のQ&Aに基づきます。社内の点検方法は筆者の実務上の提案です。
【注意点・例外】
2027年度の導入と5,000万円の要求額を直接裏付ける一次資料は、今回確認できていません。具体的な解析範囲や運用体制も未確認です。
在留資格により就労上の制限は異なります。不法就労や不法就労助長への該当性は、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。刑事責任に関する具体的な問題は、弁護士への相談が必要になります。
【出典】
一次情報
[2]厚生労働省
外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針
PDF3~6頁の募集・採用、労働条件の明示、労働時間・帳簿等に関する記載を参照。
[3]厚生労働省
外国人雇用はルールを守って適正に
令和8年6月版。
[4]出入国在留管理庁
Answer(Q80~Q149)
不法就労助長に関する説明を検索収録本文で確認。ページ本体は今回未取得。
参考情報・報道
[1]読売新聞オンライン
不法就労の外国人から押収したスマホやPC、「電子鑑識」で解析へ…雇用主らの摘発強化で入管庁
2026年10月24日15時配信。ライブドアニュース掲載本文を確認。
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